制限行為能力者せいげんこういのうりょくしゃ
一人で確定的に有効な法律行為をする能力(行為能力)を制限されている人のことで、未成年者、成年被後見人、被保佐人、同意を要する旨の審判を受けた被補助人をいいます(13条1項10号)。つまり、判断力が十分でない人を類型で決めておき、その人がした契約をあとから取り消せるようにして守る仕組みです。
17歳の高校生が親に黙って高額のローン契約を結んだ。認知症の進んだ母が、訪問販売で要らないリフォーム工事を次々に契約した。こうした場面で、契約の時に本当に判断できなかったことを一件ずつ証明するのは大変です。そこで民法は、判断力が十分でない人を未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人の四つの類型に分け、保護者の同意なしにした行為などを取り消すことができるものにしました。取り消すことができるとは、取り消されるまでは有効で、取り消されると初めから無効だったことになる、という意味です(121条)。

取消しは、相手方が善意無過失でも妨げられません
行為能力の制限による取消しには、相手方や第三者を守る規定がありません。相手方が、未成年者だとは知らず、知らないことに落ち度がなかった(善意無過失の)場合でも、取り消すことができます。取り消せるのは、制限行為能力者本人、その代理人、承継人、同意をすることができる者に限られます(120条1項)。本人も一人で取り消すことができ、その取消しを「同意を得ていないから」とさらに取り消すことはできません。取り消すと契約は初めから無効になり、制限行為能力者は現に利益を受けている限度で返せば足ります(121条の2第3項)。

追認すると、それ以後は取り消せなくなります
追認とは、取り消すことができる行為を「このまま有効でよい」と認めることで、追認すると以後は取り消せません(122条)。本人が追認できるのは、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後です(124条1項)。未成年者なら成年に達した後で、その時は、法定代理人だった親が契約に反対していても、本人の判断で追認できます。法定代理人、保佐人、補助人は、状況の消滅を待たずに追認できます(124条2項1号)。代金の支払や買った物の転売といった一定の事実があると追認したものとみなされますが(法定追認)、それも「追認をすることができる時以後」の事実に限られます(125条)。

詐術を用いたときは、取り消すことができません
制限行為能力者が、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができません(21条)。詐術とは、相手をだます手段を使うことです。偽った本人よりも、だまされた相手方を守るべきだからです。自分は成年だと偽る場合のほか、保佐人や補助人の同意を得ていないのに「同意を得た」と信じさせた場合も、これに当たると解されています。
民法 120条1項行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
試験ではこう問われる
- 制限行為能力を理由とする取消しは、相手方が未成年者であることにつき善意無過失であってもできる
- 制限行為能力者本人も単独で取り消せる。法定代理人は「取消しに同意していない」ことを理由に、その取消しを取り消すことはできない
- 成年に達して自ら取消権を有すると知った本人は、元の法定代理人が反対していても追認でき、追認後は取り消せない(122条、124条1項)
- 法定追認は「追認をすることができる時以後」の事実に限る。未成年のうちに法定代理人の同意なく目的物を転売しても、取消権は失われない(125条)
- 行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、取り消せない(21条)。被補助人が補助人の同意を得たと信じさせた場合も同じ
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