遺産分割いさんぶんかつ
相続人が数人あるときに、共同相続人の共有に属している相続財産を、誰がどの財産を取得するか決めて分けることです(民法906条・907条)。分割の効力は相続開始の時にさかのぼりますが、第三者の権利を害することはできません(909条)。
父が亡くなり、相続人は母と長男と長女です。父の自宅、賃貸アパート、預金は、相続が開始した時から三人の共有になっています(民法898条)。このままでは、自宅を売るにも全員の同意が要り、不便です。そこで三人で話し合い、自宅は母、アパートは長男、預金は長女というように、誰が何を取得するかを決めます。これが遺産分割で、話合いによる分割を遺産分割協議といいます。

共同相続人は、いつでも協議で遺産を分割できます
共同相続人は、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができます(907条1項)。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人が家庭裁判所に分割を請求できます(同条2項)。分割ができないのは、被相続人が遺言で分割を禁じた場合と、共同相続人が分割をしない旨の契約をした場合です。被相続人が遺言で禁じることができるのは、相続開始の時から5年を超えない期間に限られます(908条1項)。いったん成立した遺産分割協議も、共同相続人の全員の合意があれば解除して、改めて協議を成立させることができるとするのが判例です。
分割の効力は、相続開始の時にさかのぼります
遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じます(909条本文)。自宅を母が取得すると決まれば、母は父が亡くなった時から自宅を単独で所有していたことになります。ただし、第三者の権利を害することはできません(同条ただし書)。分割の前に、相続人の一人から共有持分を買って登記を備えた人の権利は、後の分割によっても失われません。

分割までの賃料は、各相続人が相続分に応じて取得します
相続開始から遺産分割までの間に、遺産であるアパートから賃料が生じます。判例は、この賃料債権を遺産とは別個の財産とし、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するとしています。後の遺産分割でアパートを長男が取得しても、それまでに母や長女が受け取った賃料を長男に渡す必要はありません。分割の後に生じる賃料は、アパートを取得した長男のものです。

預貯金は当然には分かれず、遺産分割の対象になります
判例は、共同相続された普通預金や定期貯金などの預貯金債権について、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になるとしています。相続人の一人が自分の相続分だけを単独で払い戻すことは、原則としてできません。分割前でも生活費などに充てられるよう、相続開始の時の債権額の3分の1に自分の法定相続分を乗じた額までは、各共同相続人が単独で権利を行使できます(909条の2)。この額には、一つの金融機関につき150万円という上限があります。相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割では、原則として、生前の贈与(特別受益)や寄与分を考慮した相続分の計算はされず、法定相続分などで分けます(904条の3)。この期間の定めは、令和5年4月1日に施行されました。
民法 909条遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
試験ではこう問われる
- 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼって効力を生ずる。「協議が成立した時から」ではない。ただし第三者の権利を害することはできない(909条)
- 相続開始から遺産分割までに遺産である不動産から生じた賃料債権は、各共同相続人が相続分に応じて確定的に取得する。分割で不動産を取得した相続人がさかのぼって取得するのではなく、清算も要らない
- 遺産分割の後に生じた賃料債権は、分割で不動産を取得した相続人が取得する
- 被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができる(908条1項)
- 共同相続人は、成立した遺産分割協議の全部又は一部を全員の合意で解除し、改めて協議を成立させることができる
- 遺産に属する預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になる
- 相続人が数人あるときは、相続財産はその共有に属する(898条1項)
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