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相続の承認・放棄そうぞくのしょうにん・ほうき

権利関係 民法(相続) 過去問で8肢

相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、被相続人の権利義務を引き継ぐか(単純承認・限定承認)、一切引き継がないか(放棄)を選ぶ制度です(民法915条1項)。つまり、借金も含めて相続するかどうかを、相続人が自分で決められます。

亡くなった父には、自宅のほかに、家族の知らない多額の借金がありました。相続人は権利だけでなく義務も引き継ぐので、何もしなければ借金も背負うことになります。そこで民法は、相続人に三つの道を用意しています。全部を引き継ぐ単純承認、相続で得た財産の範囲でだけ借金を返す限定承認、初めから相続人でなかったことにする放棄です。どれを選ぶかを考える期間は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月です(915条1項)。

単純承認、限定承認、放棄の三つから、3箇月以内に選ぶ。
単純承認、限定承認、放棄の三つから、3箇月以内に選ぶ。

3箇月は、自分が相続人になったと知った時から数えます

915条1項は、期間の起算点を「自己のために相続の開始があったことを知った時」としています。被相続人が死亡した日からではないので、死亡を知らなかった相続人については、3箇月はまだ進んでいません。この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所が伸長することができます。いったんした承認や放棄は、この期間内であっても撤回することができません(919条1項)。

財産を処分したり3箇月を過ぎたりすると、単純承認になります

921条は、相続人が単純承認をしたものとみなされる場合を定めています。よく問題になるのは二つで、相続財産の全部又は一部を処分したとき(1号)と、3箇月の期間内に限定承認も放棄もしなかったとき(2号)です。相続財産である未払賃料を取り立てて受け取ることも、判例は処分に当たるとしています。一方、保存行為(財産の現状を守る行為)は処分に含まれず、不法占拠者に建物の明渡しを求めても単純承認にはなりません。単純承認をすると、相続人は無限に被相続人の権利義務を承継します(920条)。

賃料を取り立てて受け取ると処分に当たり、単純承認をしたことになる。
賃料を取り立てて受け取ると処分に当たり、単純承認をしたことになる。

限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみできます

限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済することを留保して、相続を承認することです(922条)。3箇月の期間内に、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、申述します(924条)。相続人が数人あるときは、共同相続人の全員が共同してのみすることができます(923条)。一人でも単純承認をした者がいれば、他の相続人は限定承認を選べません。条文に理由は書いていませんが、相続人ごとに扱いが分かれると、相続財産の清算ができなくなるためと考えられます。

放棄は家庭裁判所に申述し、相続の開始前にはできません

相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければなりません(938条)。他の相続人に「放棄する」と伝えただけでは放棄になりません。申述の期間は相続の開始があったことを知った時から始まるので、被相続人が生きているうちに放棄をしておくことはできません。放棄は一人ひとりが単独ででき、放棄をした者は初めから相続人とならなかったものとみなされます(939条)。

放棄は家庭裁判所に申述する。亡くなる前にはできない。
放棄は家庭裁判所に申述する。亡くなる前にはできない。
民法 915条1項

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

試験ではこう問われる

  1. 自己のために相続の開始があったことを知らない相続人は、相続の開始から3箇月が経過しても単純承認をしたものとみなされない(915条1項・921条2号)
  2. 相続財産である未払賃料の支払を求め、収受領得したときは、単純承認をしたものとみなされる(921条1号)
  3. 不法占拠者に対して明渡しを求めるのは保存行為で、単純承認をしたものとはみなされない(921条1号ただし書)
  4. 限定承認は共同相続人の全員が共同してのみできる。一人が単純承認をしたときは、他の相続人は限定承認ができない(923条)
  5. 一人が限定承認の申述をしても、他の相続人が申述したものとみなされることはない
  6. 家庭裁判所への相続放棄の申述は、被相続人の生前にはできない。遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受ければ生前にできる(1049条1項)
  7. 相続の放棄は相手方のない単独行為だが、成年後見人が成年被後見人に代わってする相続の放棄が利益相反行為になることはある。「なることはない」とは言えない
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