遺言いごん
自分の死後に財産を誰にどう引き継がせるかなどを定めておく意思表示で、民法が定める方式に従ってしなければならず、遺言者の死亡の時から効力を生じます(民法960条・985条1項)。つまり、法定相続分とは違う分け方を、生前に自分で決めておく手段です。
長年連れ添った妻に自宅を残したい、世話になったおいにも土地を一筆渡したい。何もしなければ、財産は法定相続分に従って相続人のものになり、相続人でないおいには何も渡りません。こういうとき、生前に自分の意思を書き残しておくのが遺言です。遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じます(民法985条1項)。本人が亡くなった後では真意を確かめられないので、民法が定める方式に従わなければ、遺言をすることができません(960条)。

遺言は、民法が定める方式に従わなければできません
普通の方式の遺言は、自筆証書、公正証書、秘密証書の三つです(967条)。自筆証書遺言は、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作ります(968条1項)。相続法の改正で方式が緩和され、自筆証書に添付する財産の目録は自書しなくてもよくなりましたが、目録の毎葉に署名し、印を押さなければなりません(同条2項)。公正証書遺言は、証人二人以上の立会いのもとで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授して作ります(969条)。遺言は15歳に達していればすることができ、二人以上の者が同一の証書ですることはできません(961条・975条)。

遺言者は、いつでも遺言を撤回できます
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます(1022条)。前の遺言が後の遺言と抵触するときは、抵触する部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(1023条1項)。自宅を長男に与えると書いた後で、同じ自宅を長女に与えると書けば、長女に与える遺言が生きます。遺言をした後に、遺言者がその財産を生前に売ってしまった場合も同じ扱いです(同条2項)。遺言は遺言者の最後の意思を実現するためのものなので、亡くなるまでは何度でも書き直せるようになっています。
遺言で財産を与えることを遺贈といい、相続人以外にもできます
遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができます(964条)。これを遺贈といい、受け取る人(受遺者)は相続人でなくてもかまいません。遺言では、遺贈のほか、相続分の指定、遺産の分割の方法の指定、相続開始の時から5年を超えない期間の遺産の分割の禁止などを定められます(902条・908条1項)。遺言の内容を実現する役目の人を遺言執行者といい、遺言で指定することができます(1006条1項)。遺言執行者は、正当な事由があるときに、家庭裁判所の許可を得て辞任できます(1019条2項)。

民法 960条・985条1項(960条)遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。 (985条1項)遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
試験ではこう問われる
- 被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて遺産の分割を禁ずることができる(908条1項)。「遺言で禁止することはできない」とする記述は誤り
- 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任できる(1019条2項)。相続人の許可ではない
- 相続に関する被相続人の遺言書を偽造した者や、強迫によって遺言をすることを妨げた者は相続人となることができず(891条)、その者の子が代襲して相続人となる
- 相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記は登記権利者が単独で申請できるが、相続人でない者に対する遺贈は単独で申請できない(不動産登記法63条3項)
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