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宅建の副業|免許が必要になる線を条文で引く

キャリア・試験情報 読了 約25分

宅建資格を活かした副業を、宅建業法2条2号が引く線に沿って整理。資格と免許が別物であること、免許なしにできること・できないこと、無免許営業の罰則、専任宅建士の常勤性の制約までを条文根拠つきで解説します。

目次

    この記事は、宅建の資格を副業に使おうとするときに、その活動が宅地建物取引業の免許を要する領域に入るかどうかを判断するためのものです。免許の要否そのものの判定枠組みは宅建業の「業」に当たるケースに体系的にまとめてあるので、この記事はその枠組みを副業という具体的な場面に当てはめる側を担当します。資格取得後のキャリア全体の選択肢は宅建士のキャリアパスを参照してください。

    先に結論を述べます。副業を考えるときに最初に決めるべきなのは、何が稼げるかではなく、その活動が宅建業に当たるかどうかです。

    理由は二つあります。ひとつは、宅建士の資格と宅建業の免許はまったく別の制度だということ。資格を持っていても、免許を受けずに宅建業を営めば無免許営業になります。宅建業法12条1項が禁じ、79条2号が3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科を定める行為です。副業の案内でこの二つが混同されていることが非常に多く、そのまま実行すれば犯罪になります。

    もうひとつは、この線がはっきりしているということです。線を引いているのは宅建業法2条2号で、宅地建物の売買・交換を自ら業として行うこと、および売買・交換・貸借の代理または媒介を業として行うことが宅建業です。自ら貸借を行うことは宅建業に当たりません。この定義に当てはまらない活動であれば、免許は不要です。

    したがって、副業の検討は「やりたいことが2条2号に当たるか」から始まります。当たらなければ免許の問題は消え、あとは勤務先の就業規則と税の手続の話になります。当たるなら、免許を取るか、免許を持つ事業者に雇われるか、その活動を諦めるかの三択です。以下、順に整理します。

    なお、この記事では副業の収入額を示しません。宅建士の年収を示す統計が存在せず、副業の収入となればなおさら出典を示せないためです。資格が賃金に反映される経路の構造は宅建士の年収にまとめてあります。

    宅建士の資格と宅建業の免許は別の制度である

    副業を扱ううえで最初に潰しておくべき誤解がこれです。

    資格は人に、免許は事業者に与えられる

    宅地建物取引士の資格は、試験に合格し、都道府県知事の登録を受け(宅建業法18条1項)、宅地建物取引士証の交付を受けた個人に与えられるものです(22条の2)。効果は、重要事項の説明と35条書面・37条書面への記名という独占業務を行えるようになることです。

    これに対し、宅地建物取引業の免許は、宅建業を営もうとする者、つまり法人または個人事業主に対して、国土交通大臣または都道府県知事が与えるものです(3条1項)。有効期間は5年で(3条2項)、更新が必要です。免許を受けるには事務所を設け、業務に従事する者5人につき1人以上の専任の宅建士を置き(31条の3第1項)、営業保証金を供託するか保証協会に加入しなければなりません。

    与えられる相手が違い、効果が違い、要件が違います。片方を持っていることが、もう片方を持っていることにはなりません。

    資格があっても免許なしに宅建業は営めない

    したがって、宅建士の資格を持っている個人が、免許を受けずに不動産の売買や賃貸の媒介を業として行えば、無免許営業です。資格があることは免除事由にも情状酌量の理由にもなりません。

    むしろ逆に働く可能性があります。宅建士は宅建業法を学んで合格した者であり、免許が必要であることを知らなかったという説明が通りにくい立場だからです。

    「宅建士の資格があるから、個人で仲介の副業ができる」という理解は、制度を根本から取り違えています。副業の案内でこの誤解が広く流通しているので、まずここを確定させてください。

    免許を持つ会社に雇われれば独占業務はできる

    一方で、資格が副業で使えないという意味ではありません。免許を持つ宅建業者に雇用されて、その会社の業務として独占業務を行うのであれば、何の問題もありません。

    このとき宅建業を営んでいるのは会社であって、あなたではありません。あなたは会社の従業者として、宅建士でなければできない業務を担当しているにすぎない。免許は会社が持っており、あなたに求められるのは資格の側です。

    この構造が、後で述べる非常勤やスポットでの勤務という選択肢を成り立たせています。独占業務の中身は宅建士の独占業務、業務の全体像は宅建士の仕事内容で扱っています。

    免許は「副業として片手間に取る」ものではない

    では自分で免許を取ればよいか、という発想が出てきますが、要件を見ると副業向きではありません。

    免許を受けるには、継続的に業務を行うことができる施設としての事務所が必要です。自宅の一室を事務所とする場合、他の生活空間と物理的に区分され独立性が保たれていることが求められます。さらに専任の宅建士を置く必要があり、この専任には後述する常勤性と専従性が要求されます。本業を持ちながら自分が専任の宅建士を兼ねることは、この要件と正面から衝突します。

    加えて営業保証金の供託が必要です。主たる事務所につき1,000万円、従たる事務所につき1事務所あたり500万円(25条、施行令2条の4)。保証協会に加入する場合の弁済業務保証金分担金は主たる事務所60万円、従たる事務所1事務所あたり30万円です(64条の9、施行令7条)。

    つまり、免許の取得は副業ではなく開業です。事務所の要件は事務所の設置要件、保証金の仕組みは営業保証金と保証協会、開業の全体像は宅建士の独立開業にまとめてあります。

    線を引いているのは宅建業法2条2号

    免許が要るかどうかの判定基準を確認します。詳細な判定枠組みは宅建業の「業」に当たるケースにあるので、ここでは副業の判断に必要な部分だけを取り出します。

    条文が列挙している行為の型

    宅建業法2条2号は、宅地建物取引業を次のように定義しています。

    宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。(宅建業法2条2号)

    前半が「自ら当事者となる」類型で、売買と交換だけが入っています。後半が「他人の取引に関与する」類型で、こちらには売買・交換・貸借のすべてについて代理と媒介が入っています。

    判定は二段階です。第一に、その行為がこの列挙に当てはまるか。第二に、それを業として行っているか。両方を満たしてはじめて宅建業になります。

    自ら貸借は宅建業に当たらない

    前半に貸借が入っていないことから、自分が貸主となって宅地建物を貸す行為は宅建業に当たりません。戸数や棟数、反復継続性を問わず、免許は不要です。

    いわゆる大家業に免許が要らないのはこのためです。転貸、つまりサブリースも、転貸人自身が貸主の地位に立つ以上は自ら貸借なので同じ扱いになります。

    ただし注意が要ります。同じ人が入居者募集の媒介まで行えば、それは貸借の媒介であり、業として行えば免許が必要です。自分の物件を自分で貸すのと、他人の物件の貸借を取り持つのとでは、結論が正反対になります。

    また、サブリースについては宅建業法とは別に、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律が特定転貸事業者への規制(誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、契約締結前の重要事項説明)を置いています。免許が不要であることと、何の規制もないことは違います。この線引きは賃貸管理と宅建業の線引きで扱っています。

    「業として」は総合考慮で決まる

    第二段階の「業として」には定義規定がありません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が、取引の対象者、取引の目的、取引対象物件の取得経緯、取引の態様、取引の反復継続性という五つの要素を総合的に勘案するとしています。

    副業の判断で効いてくるのは、次の三点です。

    回数の明文基準はありません。「何回までなら業に当たらない」という線は法令上存在しません。1回の取引であっても、その後も反復継続する意思があれば業に当たり得ます。

    一団の宅地建物を分割して行う場合には反復継続性が認められます。もともと1筆の土地でも、区画割りして複数人に売れば契約は複数本になり、反復継続と評価されます。「1回だけの売却だから大丈夫」という判断が最も危ういのはここです。

    営利性は必須要件ではありません。無報酬・非営利であっても、不特定多数を相手に反復継続して媒介を行えば業に当たり得ると解されています。「お礼程度しかもらっていない」「知人の手伝いだから」という説明は、それだけでは免許不要の根拠になりません。

    五要素は単独では結論を決めない

    副業を検討する人が陥りやすいのが、五要素のうち自分に有利な一つだけを取り出して安心することです。

    「相手は知人だけだから」「本業ではないから」「宅建業者に頼んで売ってもらうから」。いずれも事業性を下げる方向に働く要素ではありますが、それ単独で免許不要が確定するわけではありません。他の要素が強く事業性を示せば、全体として業に当たると判断されます。

    判定に迷う場合は、免許を持つ事業者に依頼するか、行政庁の窓口に照会するのが安全です。「たぶん大丈夫」で始めてよい領域ではありません。

    免許なしにできること

    以上の線引きを前提に、免許を要しない活動を整理します。共通するのは、宅地建物の売買・交換の当事者にもならず、他人の取引の代理・媒介にもならない、という点です。

    自分の不動産を自分で貸す

    自ら貸借なので免許は不要です。前述のとおり、規模を問いません。

    宅建で学ぶ知識は、この場面で実際に働きます。借地借家法が定める存続期間と更新のルール、定期建物賃貸借の要件、敷金の返還と原状回復の範囲、賃料増減請求。いずれも試験範囲と重なり、自分が貸主として契約条件を決めるときの判断材料になります。契約条項の読み方は賃貸借契約の注意点にまとめてあります。

    ただし、入居者募集を自分で媒介する形にしないこと、そして管理を受託する形に踏み込む場合は賃貸住宅管理業法の登録要否を確認することの二点は押さえてください。

    自分の資産として不動産投資を行う

    自己の資産運用として収益物件を取得し保有する行為は、業としての取引ではありません。物件選び、収支の計算、契約条件の判断に宅建の知識が直接効きます。

    注意すべきなのは出口です。保有物件を反復継続して売却するようになれば、自ら売買を業として行っていると評価され得ます。買っては売るという回転を繰り返す形は、取得経緯と反復継続性の両方が事業性を示す方向に働きます。保有と運用にとどまるのか、売買を繰り返すのかで結論が変わるという点を意識してください。不動産投資の基礎は不動産投資の基礎知識で扱っています。

    執筆と情報発信

    不動産や宅建試験に関する記事を書く行為は、宅地建物の取引ではありません。免許は不要です。

    宅建で学ぶ内容は、条文と制度という検証可能な土台を持っています。出典を示して書けるという点が、この分野の執筆では効きます。逆に言えば、根拠のない相場や体験談で埋める書き方をするなら、資格の意味はありません。

    受験指導

    宅建試験の受験者に対する指導も、取引ではないので免許は不要です。合格したという経験と、条文に基づいて説明できる知識が土台になります。

    セミナー・講師

    不動産や試験対策をテーマにした講演も取引ではありません。ただし、セミナーの中で特定の物件の購入を勧誘し、成約に向けて働きかける形になれば、媒介と評価される余地が出てきます。情報提供と勧誘の境目には注意が必要です。

    相談・コンサルティング

    一般的な助言にとどまる限り、取引ではありません。住宅購入の進め方、契約書の読み方、税制の枠組みといった内容を説明する行為は、免許を要しません。

    ファイナンシャルプランナーの資格を併せ持てば、資金計画や保険を含めた相談ができる範囲が広がります。宅建との組み合わせは宅建とFPのダブルライセンス、同時に学ぶ場合の設計は宅建とFPの同時学習、資格の組み合わせ全般は宅建と組み合わせる資格を参照してください。

    ただし、この領域は次章で述べるとおり媒介との境界が最も曖昧です。「コンサルティング」という名前を付ければ免許が不要になるわけではありません。

    免許を持つ事業者での非常勤・スポット勤務

    宅建業者に雇用されて、重要事項説明や書面への記名といった独占業務を担当する働き方です。宅建業を営んでいるのは会社なので、あなたに免許は要りません。

    賃貸の繁忙期や、専任の宅建士が一時的に欠けた場面では、資格保有者への需要が生じます。宅建業者は事務所ごとに業務に従事する者5人につき1人以上の専任の宅建士を置く義務を負い(31条の3第1項、施行規則15条の5の3)、要件を満たさなくなったときは2週間以内に必要な措置を執らなければならないためです(同条3項)。

    ただし、自分が専任として届け出られる場合には、次章で述べる常勤性・専従性の制約がかかります。非常勤で働くことと、専任の宅建士として登録されることは両立しません。

    異業種での知識の活用

    宅建の知識は不動産業の外でも使われます。金融機関での担保評価、建設会社での用地取得、事業会社での自社不動産の管理といった場面です。副業というより本業の中で効く形になりますが、活用の視点は宅建が異業種で活きる理由にまとめてあります。

    免許なしにできないこと

    線の反対側を確認します。ここに踏み込めば無免許営業です。

    売買・交換の媒介と代理

    他人の不動産売買を取り持ち、報酬を得る行為です。業として行えば免許が必要です。個人が副業として仲介手数料を得る、という形は成立しません。

    貸借の媒介と代理

    自ら貸借は免許不要ですが、他人の物件の貸借を媒介・代理すれば免許が必要です。知人の空き部屋の借り手を探して手数料を受け取る、といった形も、反復継続すれば宅建業に当たり得ます。賃貸仲介という業務がどういう規制の下にあるかは賃貸仲介の実務で扱っています。

    自ら売主となる反復継続的な売買

    自分の土地を区画割りして複数人に分譲する行為は、自ら売買であり、反復継続性も認められるため免許が必要です。相続で取得した土地であっても、販売を宅建業者に任せていても、結論は変わりません。

    「紹介料」という名目

    副業の文脈で最も危ういのがこれです。物件や顧客を紹介して謝礼を受け取る、という形は、名目にかかわらず媒介と評価される可能性があります。

    宅建業法46条は、宅建業者が受け取れる報酬を国土交通大臣の定める額に制限し、告示第十一が「第二から第十までの規定によるほか、報酬を受けることができない」と締めています。無免許の個人が媒介の対価を受け取ることは、そもそもこの枠組みの外にあります。報酬規制の全体像は報酬額の制限を参照してください。

    名義貸し

    宅建業法13条1項は、宅建業者が自己の名義をもって他人に宅建業を営ませることを禁じています。同条2項は、自己の名義で他人に宅建業を営む旨の表示をさせたり、広告をさせたりすることも禁じています。

    つまり、免許を持つ知人の名義を借りて自分が実質的に営業する、という形は違法です。名義を貸した側も、借りた側も責任を問われます。無免許営業と並んで、宅建業法上もっとも重い罰則が科される類型です。

    免許申請中の広告

    12条2項は、免許を受けていない者が宅建業を営む旨の表示や広告をすることを禁じています。免許を申請している段階で「不動産の売買仲介を始めます」と告知することも、この規定に触れます。開業準備として先に集客しておこう、という発想が違反になる場面です。

    コンサルティングと媒介の境界が実務上の急所

    免許なしにできることの中で、唯一境界が曖昧なのがこの領域です。副業として最も選ばれやすく、最も踏み外しやすい部分でもあるので、独立して扱います。

    名前では区別されない

    「アドバイス」「コンサルティング」「サポート」といった呼び方をしても、実質が媒介であれば媒介です。契約書の表題や請求書の名目が判定を左右することはありません。

    媒介とは、契約締結そのものは当事者が行い、事業者はその成立に向けて尽力する関与形態を指します。したがって、特定の取引の成立に向けて働きかけているかどうかが判断の軸になります。

    具体的に何が境界を越えるか

    一般的な知識の提供、たとえば不動産購入の手順を説明する、契約書の一般的な読み方を教える、税制の枠組みを解説するという行為は、特定の取引の成立に向けた働きかけではありません。

    これに対し、特定の物件を紹介する、売主と買主を引き合わせる、価格や条件の交渉を取り持つ、契約日程を調整するといった行為は、取引の成立に向けた尽力そのものです。この段階に入れば、名目が何であれ媒介と評価される可能性が高くなります。

    報酬の受け取り方が材料になる

    もう一つの判断材料が報酬の設計です。相談の時間や回数に応じて受け取る形は、助言の対価という説明が立ちます。これに対し、取引が成立したときにだけ、成約額に連動して受け取る形は、媒介の成功報酬と同じ構造です。

    営利性は必須要件ではないので、無償だから安全というわけでもありません。しかし、成功報酬型の設計は事業性を強く示す方向に働きます。

    安全側に設計する

    境界が曖昧な領域では、事後に判断されるリスクを自分で負うことになります。実務的には、次の三点を守るのが安全です。

    特定の物件の取引に立ち入らないこと。当事者間の交渉や調整に関与しないこと。報酬を取引の成立や成約額に連動させないこと。

    この三点を外れそうになったら、免許を持つ事業者に引き継ぐ。判断に迷う案件を自分で抱え込まない設計にしておくのが、副業として続けるための条件です。

    無免許で営業した場合の効果

    線を越えたときに何が起きるかを確認しておきます。

    12条1項の禁止と罰則

    宅建業法12条1項は、3条1項の免許を受けない者が宅建業を営むことを禁じています。これに違反した者は、79条2号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科に処せられます。

    なお「拘禁刑」という表記は、懲役と禁錮を一本化した刑法改正が2025年6月1日に施行されたことによります。それ以前の教材には「3年以下の懲役」と書かれていますが、現在の条文は拘禁刑です。

    法人については両罰規定があり、84条1号により1億円以下の罰金が科され得ます。行為者個人が罰せられることに加えて、法人にも罰金が科される構造です。罰則の全体像は宅建業法の罰則にまとめてあります。

    名義貸しも同じ重さで扱われる

    13条の名義貸しの禁止に違反した場合も、無免許営業と同じ水準の罰則が定められています。免許制度そのものを空洞化させる行為だからです。

    免許を受けられなくなる

    さらに実務的に重いのが、その後の影響です。宅建業法5条1項は免許の欠格事由を定めており、一定の刑に処せられた者は、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年間、免許を受けられません。

    つまり、無免許営業で処罰されれば、その後5年間は正規に開業する道も閉ざされます。将来の独立を視野に入れているなら、この点は決定的です。欠格事由の一覧は免許の欠格事由、免許制度の全体像は宅建業免許の制度で確認できます。

    勤務先との関係で効いてくる制約

    免許の問題をクリアしても、副業が自由にできるとは限りません。ここは法律ではなく、雇用関係と資格の登録状況の問題です。

    就業規則は法律とは別の問題

    副業の可否は、勤務先の就業規則が定めるところによります。宅建業法が禁じていないことと、勤務先が認めていることは別です。

    確認すべきは、副業そのものが許可制か届出制か禁止か、競業避止の定めがあるか、許可を要する場合の手続はどうなっているかの三点です。とくに本業が不動産業である場合、競業避止の観点から不動産関連の副業が制限されることがあります。

    専任の宅建士は常勤性と専従性を求められる

    ここが条文根拠のある実務的な制約です。宅建業法31条の3第1項は、宅建業者に対し事務所ごとに成年者である専任の宅建士を置くことを義務づけています。

    この「専任」について、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は常勤性と専従性を求めています。常勤性とは、原則としてその事務所に通常の勤務時間中は勤務していること。専従性とは、専ら宅建業の業務に従事することです。

    ここから、副業に関わる重要な帰結が出ます。勤務先で専任の宅建士として届け出られている場合、他社での業務が専任性を損なう可能性があります。他の宅建業者の専任を兼ねることはできませんし、宅建業以外の業務に相当程度従事する形も専従性と衝突し得ます。

    逆に言えば、専任として届け出られていない宅建士であれば、この制約は直接には及びません。自分が専任なのかどうかを確認するのが最初の一歩です。専任の要件の詳細は専任の宅建士とはにまとめてあります。

    テレワークは専任性を否定しない

    なお、常勤性は硬直的に運用されているわけではありません。令和3年の解釈・運用の考え方の改正により、ITの活用等により事務所以外の場所でも適切に業務を行える体制が確保されている場合には、テレワークによる勤務も専任と認めて差し支えないことが明確化されました。

    働く場所が事務所の外であることと、専任性を欠くことは別だということです。ただしこれは勤務先の業務をどこで行うかという話であって、他社で別の業務を行うことを許容するものではありません。

    二重に専任になることはできない

    複数の宅建業者で同時に専任の宅建士として届け出ることはできません。専従性の要件から当然に導かれます。

    副業として別の不動産会社で働く場合、そちらで専任として扱われないことを確認しておく必要があります。会社側が専任の頭数として算入するつもりで採用しようとしている場合、この点は事前に整理しておかないと双方が違反状態になります。

    税と手続の確認事項

    免許と就業規則をクリアしたら、残るのは税務です。ここは宅建業法の話ではありませんが、副業を始める以上避けて通れません。

    確定申告が必要になる基準

    給与所得者について、所得税法121条1項は、その年中の給与等の金額が2,000万円以下で、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるときは確定申告を要しないと定めています。裏返せば、20万円を超えれば確定申告が必要になります。

    「収入」ではなく「所得」で判定する

    見落とされやすいのがここです。基準となるのは所得、すなわち収入から必要経費を差し引いた額です。収入が25万円あっても、必要経費が8万円あれば所得は17万円となり、この基準には達しません。

    必要経費として認められる範囲は活動の内容によります。書籍代、通信費、機材の費用などが対象になり得ますが、私的な使用と混在する費用は按分が必要です。判断に迷う場合は税務署や税理士に確認してください。

    住民税にはこの基準がない

    もう一点、20万円という基準は所得税の確定申告についてのものであり、住民税には同様の規定がありません。所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要になり得ます。「20万円以下だから何もしなくてよい」という理解は正確ではありません。

    所得の区分

    副業による所得が事業所得と雑所得のどちらに区分されるかによって、損益通算や控除の扱いが変わります。継続性、営利性、規模といった要素から判断されるもので、金額だけで機械的に決まるわけではありません。ここも個別の判断が必要な領域です。

    副業から独立へ進む場合

    副業を足がかりに開業を考える場合の道筋を確認します。

    免許を取るということは事業を始めるということ

    前述のとおり、免許の取得には事務所、専任の宅建士、営業保証金または弁済業務保証金分担金が必要です。副業の延長線上に自然に到達するものではなく、明確に事業を始める意思決定になります。

    とくに専任の宅建士の要件が効きます。自分が専任になるなら、その事務所に常勤し専ら宅建業に従事することが求められるため、本業との両立が難しくなります。他人を専任として雇うなら人件費が発生します。

    副業で積める経験と、積めない経験

    免許を要しない副業で積めるのは、知識の運用と発信、そして顧客との接点の作り方です。積めないのは、取引そのものの実務経験です。媒介の実務は免許の下でしか行えないため、独立前に経験を積みたいなら、免許を持つ事業者に雇用されて働く形を取ることになります。

    この点で、非常勤やスポットでの勤務は副業と実務経験の両方を満たす選択肢になります。開業の全体像は宅建士の独立開業、免許制度の横断整理は免許制度の横断整理を参照してください。

    試験での出題ポイント

    副業という切り口そのものは出題されませんが、ここで扱った論点は宅建業法の免許分野そのものです。問われ方には型があります。

    自ら貸借に免許を要求する

    最頻出です。「自己所有のマンション10戸を不特定多数に反復継続して賃貸する者は、免許を受けなければならない」は誤りです。戸数や反復継続性を大きく書いて規模で判断させる作りが典型で、数字に引っ張られず関与形態を見てください。

    貸借そのものを取引から外す

    自ら貸借が外れることを覚えた受験者を狙う逆方向の出題です。貸借の代理と媒介は取引に当たります。外れるのは「自ら」貸借の1マスだけです。

    資格と免許を混同させる

    「宅地建物取引士の登録を受けている者は、免許を受けることなく宅地建物取引業を営むことができる」といった記述は誤りです。18条1項の登録と3条1項の免許は別の制度です。

    一要素だけで結論を出させる

    「相続により取得した土地なので免許は不要」「宅建業者に販売の代理を依頼するので免許は不要」「1回限りの売却なので免許は不要」。いずれも五要素のひとつを取り出しただけで、結論を導く根拠になりません。区画割りして不特定多数に売れば免許が必要です。

    無報酬なら不要とする

    「報酬を得ないで媒介を行う場合は免許を要しない」は誤りです。営利性は総合考慮の一要素であって必須要件ではありません。

    罰則を「懲役」と書く

    刑法改正により2025年6月1日から拘禁刑に一本化されています。無免許営業の罰則を「3年以下の懲役」とする記述は、現行法では正確ではありません。金額や年数を入れ替える出題とあわせて、刑名にも注意してください。

    名義貸しを軽く扱う

    「免許を受けた宅建業者から名義を借りて宅建業を営む行為は、実際に業務を行っているのが有資格者であれば適法である」は誤りです。13条1項が明文で禁じており、資格の有無は関係ありません。

    覚え方・整理の仕方

    「資格は人、免許は事業者」

    この一句で二つの制度を分けられます。資格は個人に与えられ独占業務を可能にする。免許は事業者に与えられ宅建業を営むことを可能にする。片方があっても、もう片方の代わりにはならない。

    9マスの例外は「自ら貸借」だけ

    売買・交換・貸借の3類型と、自ら・代理・媒介の3形態で9マス。取引に当たらないのは自ら貸借の1マスだけです。副業を検討するときは、やろうとしている行為がこの1マスに入るかを最初に確認してください。

    判断に迷ったら「特定の取引に立ち入っているか」

    コンサルティングと媒介の境界は、この一問で切り分けられます。一般的な知識を提供しているのか、特定の取引の成立に向けて働きかけているのか。後者に入った時点で、名目にかかわらず媒介の領域です。

    報酬の設計を見る

    時間や回数に応じた報酬は助言の対価として説明が立ち、成約に連動する報酬は媒介の成功報酬と同じ構造になります。自分の報酬がどちらの形をしているかを確認するのが、簡便な自己点検になります。

    罰則は「3年・300万・1億」

    無免許営業と名義貸しの罰則は、3年以下の拘禁刑、300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金。この三つの数字で覚えます。あわせて、処罰されれば5年間は免許を受けられなくなる(5条1項)という帰結まで結びつけてください。

    副業の確認は「免許・規則・税」の順

    免許が要る行為か。要らないなら、勤務先の就業規則と専任性の制約に触れないか。触れないなら、確定申告の要否を確認する。この順序で確認すれば、後から覆る要素がなくなります。逆順に進めて、税の準備をしてから免許が必要だと気づく、という事態を避けられます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引士の登録を受けている者は、宅地建物取引業の免許を受けることなく、個人で不動産売買の媒介を業として行うことができる。(○か×か)

    答えを見る ×:宅建士の資格と宅建業の免許はまったく別の制度です。資格は個人に与えられ(18条1項の登録、22条の2の宅建士証)、重要事項の説明と35条書面・37条書面への記名という独占業務を可能にします。免許は宅建業を営もうとする者に与えられるもので(3条1項)、事務所、専任の宅建士、営業保証金等の要件があります。資格を持っていても免許を受けずに宅建業を営めば無免許営業であり、12条1項に違反し、79条2号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科の対象になります。

    Q2. 自己が所有するアパート2棟を、不特定多数の者に反復継続して賃貸する副業を行う場合、宅地建物取引業の免許が必要である。(○か×か)

    答えを見る ×:2条2号の前半は「宅地若しくは建物の**売買若しくは交換**」としか定めておらず、自ら貸借は取引に当たりません。したがって棟数や戸数、反復継続性を問わず免許は不要です。第一段階の取引該当性で落ちるため、「業として」の判定に進みません。ただし、他人の物件について入居者募集の媒介を行えば、それは貸借の媒介として取引に当たり、業として行えば免許が必要になります。また転貸(サブリース)も自ら貸借なので免許は不要ですが、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律による特定転貸事業者への規制は別途かかります。

    Q3. 免許を受けた宅地建物取引業者の名義を借りて、宅地建物取引士の資格を持つ個人が実質的に宅建業を営む場合、業務を行うのが有資格者であるため適法である。(○か×か)

    答えを見る ×:宅建業法13条1項は、宅建業者が自己の名義をもって他人に宅建業を営ませることを明文で禁じています。名義を貸した側も借りた側も責任を問われ、無免許営業と同水準の罰則が定められています。行為者が宅建士の資格を持っているかどうかは結論に影響しません。なお同条2項は、自己の名義で他人に宅建業を営む旨の表示をさせたり広告をさせたりすることも禁じています。

    Q4. 相続により取得した土地を10区画に分割し、宅地建物取引業者に販売の代理を依頼して不特定多数の者に売却する場合、自らは免許を受ける必要がない。(○か×か)

    答えを見る ×:取得経緯が相続であること、販売を宅建業者に依頼していることは、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が挙げる五要素のうち事業性を下げる方向に働く要素にすぎず、それ単独で免許不要が確定するわけではありません。一団の土地を分割して行う場合には反復継続性が認められ、相手方も不特定多数であるため、自ら売買を業として行う者として免許が必要です。なお、代理を受けた宅建業者にも当然に免許が必要です。「1回限りの売却」という説明も、区画割りしている以上は通りません。

    Q5. 宅地建物取引士が、勤務先で専任の宅地建物取引士として届け出られている場合であっても、他の宅地建物取引業者において専任の宅地建物取引士を兼ねることができる。(○か×か)

    答えを見る ×:31条の3第1項が求める「専任」について、国土交通省の解釈・運用の考え方は常勤性と専従性を求めています。常勤性は原則としてその事務所に通常の勤務時間中は勤務していること、専従性は専ら宅建業の業務に従事することを意味するため、複数の宅建業者で同時に専任として届け出ることはできません。副業として別の不動産会社で働く場合は、そちらで専任の頭数に算入されない形であることを事前に確認する必要があります。なお、ITの活用等により適切に業務を行える体制が確保されていればテレワークによる勤務も専任と認められますが、これは勤務場所の問題であって、他社での業務を許容するものではありません。

    まとめ

    宅建の資格を副業に使うとき、最初に決めるべきなのは何が稼げるかではなく、その活動が宅地建物取引業に当たるかどうかです。

    前提として、宅建士の資格と宅建業の免許はまったく別の制度です。資格は個人に与えられ独占業務を可能にするもの、免許は事業者に与えられ宅建業を営むことを可能にするもので、片方がもう片方の代わりにはなりません。資格があっても免許なしに宅建業を営めば、12条1項に違反する無免許営業です。

    線を引いているのは2条2号です。自ら当事者となる類型には売買と交換だけが入り、代理・媒介の類型には売買・交換・貸借のすべてが入ります。したがって自ら貸借は宅建業に当たらず、大家業に免許は不要です。他方、他人の物件の貸借を媒介すれば免許が必要になります。「業として」の判定は五要素の総合考慮で、回数の明文基準はなく、一団の土地を分割すれば反復継続性が認められ、無報酬でも業に当たり得ます。一要素だけを取り出して安心しないでください。

    免許なしにできるのは、自分の不動産を自ら貸すこと、自己の資産として投資すること、執筆・情報発信、受験指導、セミナー、一般的な相談、そして免許を持つ事業者に雇用されて独占業務を担当することです。できないのは、売買・交換・貸借の媒介と代理、自ら売主となる反復継続的な売買、そして名義貸し(13条)です。

    最も注意を要するのがコンサルティングと媒介の境界です。名前では区別されません。特定の取引の成立に向けて働きかけているか、報酬が成約に連動していないかの二点で自己点検してください。

    線を越えた場合、79条2号により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科、法人は84条1号により1億円以下の罰金が科され得ます。さらに5条1項の欠格事由により、その後5年間は免許を受けられなくなります。将来の独立を考えているなら、この帰結は決定的です。

    免許の問題をクリアしたあとに残るのが、勤務先の就業規則と、専任の宅建士として届け出られている場合の常勤性・専従性の制約(31条の3、解釈・運用の考え方)、そして確定申告の要否です。確定申告は給与所得等以外の所得が20万円を超えるかで判定し(所得税法121条1項)、収入ではない点と、住民税には同じ基準がない点に注意してください。

    確認の順序は「免許・規則・税」です。この順で進めれば、後から覆る要素がなくなります。

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