管理業務主任者と宅建のダブル取得|重なりと学習順序
宅建と管理業務主任者を同じ年に取るための設計図。令和7年度の本試験50問を出題対象ごとに数え、宅建の知識がそのまま効く範囲、重なって見えて問われ方が違う論点、学習順序を条文根拠つきで整理します。
目次
本記事の役割 — この記事は、宅建と管理業務主任者を「同じ年に両方取る」と決めた人が、どの順番で何を積むかを設計するためのものです。どちらが難しいか、どちらを先に取るべきかという手前の判断は宅建と管理業務主任者の難易度比較で扱っています。宅建と組み合わせる資格を横並びで見たい場合は宅建と組み合わせる資格一覧から入ってください。
結論から書きます。この2つの試験の重なりは、よく言われるほど大きくありません。令和7年度の管理業務主任者試験の問題冊子を1問ずつ出題対象で分類すると、宅建の学習内容が直接効くのは50問中12問前後です。合格基準点は36問正解(一般社団法人マンション管理業協会「令和7年度 管理業務主任者試験 結果報告」)ですから、宅建の貯金だけでは合格点の3分の1にしか届かない計算になります。
それでも同じ年に両方を狙う判断が成り立つのは、重なりの量ではなく、重なりの質のためです。管理業務主任者試験の中核をなす区分所有法・標準管理規約・マンション管理適正化法という3つの塊は、いずれも宅建で作った土台の上に積むと、ゼロから積むより明らかに速く立ち上がります。区分所有法は宅建で条文に触れており、適正化法は宅建業法とほぼ同じ設計思想で書かれているからです。逆に、建築設備と維持修繕、管理組合の会計、標準管理委託契約書は宅建の外にあり、ここは日数を素直に払うしかありません。
つまり併願の設計とは、「重なっているから楽になる」という話ではなく、「どこが重なり、どこが重なっているように見えて実は違い、どこが完全に新規か」を切り分けて、限られた6週間から7週間をどこに配るかという配分の問題です。以下、まず制度の建て付けを確認し、次に令和7年度の50問を実際に数え、そのうえで問われ方の差と学習順序に進みます。
二つの試験が測っているものは、法令の定め方からして違う
出題範囲を定めているのは、それぞれの施行規則
宅建試験の内容は宅地建物取引業法施行規則8条が定めており、7項目が並びます。土地の形質・地積・地目・種別と建物の形質・構造・種別に関すること、土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること、土地及び建物についての法令上の制限に関すること、宅地及び建物についての税に関する法令に関すること、宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること、宅地及び建物の価格の評定に関すること、宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること(一般財団法人不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」)。並べてみると、主語がすべて「土地及び建物」であることに気づきます。宅建試験は、土地と建物という物そのものと、それを取引する法律の試験です。
管理業務主任者試験の内容は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則64条が定めています。管理事務及び管理者事務の委託契約に関すること、管理組合の会計の収入及び支出の調定並びに出納に関すること、建物及び附属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関すること、法に関すること、これらのほか管理事務の実施に関すること、の5項目です。受験申込案内書ではそれぞれに対応する具体的な科目が添えられており、1号には民法(契約および契約の特別な類型としての委託契約を締結する観点から必要なもの)とマンション標準管理委託契約書等、2号には簿記・財務諸表論等、3号には建築物の構造及び概要、建築物に使用されている主な材料の概要、建築物の部位の名称等、建築設備の概要、建築物の維持保全に関する知識及びその関係法令(建築基準法、消防法等)、建築物等の劣化、修繕工事の内容及びその実施の手続に関する事項等、4号にはマンション管理適正化法およびマンション管理適正化指針等、5号には建物の区分所有等に関する法律(管理規約、集会に関すること等管理事務の実施を行うにつき必要なもの)等が挙げられています(マンション管理業協会「令和7年度管理業務主任者試験 受験申込案内書」)。
この2つの規則を並べると、差がはっきりします。宅建の7項目の主語は物件です。管理業務主任者の5項目の主語は、すべて「管理事務」です。委託契約、会計、維持修繕、法律、実施。管理事務という一つの業務を、契約・お金・建物・法令という側面から切り分けて並べたのが、この5項目の正体です。だから管理業務主任者試験には、宅建にはない会計と設備が必ず含まれます。管理という仕事が続くものである以上、期間を締めてお金を報告し、劣化する建物を計画的に直す作業が業務の中身になるからです。
5号の「等」に区分所有法が入っている
見落とされやすいのが5号です。条文の文言は「前各号に掲げるもののほか、管理事務の実施に関すること」で、区分所有法という単語は条文本体には出てきません。区分所有法が出題対象になるのは、受験申込案内書が5号の内容として「建物の区分所有等に関する法律(管理規約、集会に関すること等管理事務の実施を行うにつき必要なもの)等」と示しているからです。
この括弧書きに、両試験の差が凝縮されています。管理業務主任者試験で問われる区分所有法は、「管理規約、集会に関すること等、管理事務の実施を行うにつき必要なもの」という限定つきの区分所有法です。管理組合をどう運営するかという観点から選ばれた条文群であって、区分所有法という法律を平等に扱うわけではありません。一方、宅建で区分所有法が問われるのは、権利関係の一領域としてであり、加えて35条書面の説明事項として区分所有建物特有の項目が出てくる文脈です。同じ法律の名前が両方の範囲表に載っていても、切り取られている部分が違います。この点は後で詳しく見ます。区分所有法そのものの全体像は区分所有法の基本ルール、決議要件の整理は区分所有法の決議要件にまとめています。
令和7年度の50問を、出題対象ごとに数える
重なりの大きさを語るとき、根拠のない割合が独り歩きしがちです。ここでは公表されている本試験の問題冊子を使い、令和7年度の50問が実際に何から出題されたかを数えます。以下の分類は、マンション管理業協会が公開している「令和7年度 管理業務主任者試験問題」の各設問の柱書(「民法の規定によれば」「標準管理委託契約書によれば」といった指定)にもとづくものです。
建築設備・維持修繕が12問で最大の塊
問13から問24までの12問が、建物と設備に関する出題でした。内訳は、エレベーター、消防法にもとづく防火管理者、消防法一般、建築保全標準(JAMS)鉄筋コンクリート造建築物からの語句補充、鉄筋コンクリート構造体の劣化現象と発生原因、排水設備、建築設備一般、そして長期修繕計画作成ガイドラインが4問、修繕積立金ガイドラインが1問です。
12問という数は、50問中の24パーセントにあたります。合格基準点が36問である以上、この塊を丸ごと捨てると残り38問で36問を取ることになり、現実的ではありません。そして、この12問のうち宅建の学習範囲と重なるものはほぼありません。宅建の「土地・建物」でも建物構造の初歩は扱いますが、排水トラップの機能や長期修繕計画の作成手順が問われることはないからです。
標準管理規約が9問
問29から問37までの9問が、マンション標準管理規約(単棟型)を根拠とする出題でした。組合員等の情報の扱い、届出住所への請求が届かず所在不明だった場合の理事長の対応、会計年度と理事長の行為、窓ガラスの扱い、専有部分の貸与、専有部分の修繕等、理事会、総会決議(単棟型と団地型の対比)といった内容です。
標準管理規約は法令ではありません。国土交通省が示すモデル規約であり、条文の効力を問う問題にはなりません。「モデルではこう定められている」という中身そのものが問われます。宅建の出題範囲には一切含まれないため、9問すべてが新規学習になります。区分所有法5問と合わせて14問がマンション管理の制度から出ていることになり、しかもその内訳は規約側のほうが多い。この配分は、宅建受験生が持ちやすい「区分所有法をやったからマンションは大丈夫」という感覚が通用しないことを示しています。
標準管理委託契約書が5問、会計・税務が4問
問4から問8までの5問が、マンション標準管理委託契約書を根拠とする出題でした。これも国土交通省が示すモデル契約書で、宅建の範囲外です。ただし問7は、管理組合の組合員から専有部分の売却等の依頼を受けた宅地建物取引業者が、媒介業務のために理由を付した書面で管理規約等の提供と開示を求めてきた場面を扱っており、宅建業者の実務が管理会社側からどう見えるかという設問になっています。宅建で媒介契約や重要事項調査を学んだ人には、場面が想像できるぶん取り組みやすい1問です。
会計と税務は4問でした。問9は消費税法によれば管理組合が当課税期間において必ず消費税の課税事業者となるものはいくつあるかを問うもの、問10は一般(管理費)会計に係る誤った勘定式の貸借対照表を示し、資産の部と負債・繰越金の部に計上された9つの科目のうち不適切なものがいくつあるかを問うもの、問11と問12が仕訳です。宅建の税・その他では不動産取得税や固定資産税、印紙税、登録免許税、譲渡所得といった取引課税を扱いますが、管理組合という団体の会計処理や消費税の課税判定は出てきません。ここも新規です。
マンション管理適正化法と基本方針が5問
問46から問50までの5問が、マンション管理適正化法およびその関連からの出題でした。問46は「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針」(令和3年9月28日国土交通省告示第1286号)、問47は管理業務主任者、問48は適正化法一般、問49はマンション管理業者、問50は管理業務主任者および管理業務主任者証です。
なお、マンション管理士試験の合格者が試験の一部免除を申請した場合に免除されるのは、出題範囲の4号すなわち「マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること」の5問で、45問・午後1時10分から午後3時までの110分となります(前掲・受験申込案内書)。免除の対象がこの5問だということは、問46から問50までがその位置に固定して並べられていることの裏返しでもあります。
民法・区分所有法・その他法令が15問
残りが、民法系と区分所有法系、そして他法令です。問1が善良な管理者としての注意義務、問2が委任契約と寄託契約の異同、問3が請負契約。問25から問28が区分所有法(法定共用部分、集会、罰則規定を含む)、問38が区分所有法および最高裁判所の判決、問39と問40が管理費の滞納を民法および区分所有法から、問41が賃貸借を民法および借地借家法から。そして問42が個人情報保護法、問43が国土交通省の公表する分譲マンションの統計・データ等、問44が賃貸住宅管理業法、問45が宅地建物取引業法35条の重要事項説明です。
問43から問45の並びは令和5年度・令和6年度も同じで、3年連続で問43が統計、問44が賃貸住宅管理業法、問45が宅建業法という配置になっています。管理業務主任者試験の後半には、マンション管理の周辺法令をひととおり触れる枠が用意されている、と読むのが自然です。
宅建の知識が土台として効く場所
前節の分類を踏まえて、宅建の学習内容が土台として効く問題を拾うと次のようになります。民法系の問1から問3、区分所有法の問25から問28と問38、管理費滞納の問39・問40、賃貸借の問41、そして宅建業法の問45。合わせて12問です。
ただし、この12問がそのまま得点になるわけではありません。問2の寄託契約や問28の罰則規定のように、宅建ではまず扱わない条文が混ざっているからです。宅建の学習だけで確実に取れるのは、このうちさらに絞られます。12問という数は「上限に近い見積もり」だと考えてください。合格基準点が36問である以上、追加で積む必要があるのは24問分以上ということになります。
宅建業法35条は、そのまま1問になる
もっともわかりやすいのが問45です。令和7年度の設問は、宅地建物取引業者Aが自ら売主として宅地建物取引業者ではない買主Bにマンションを販売する場合の、宅建業法35条にもとづく重要事項の説明を問うものでした。正解は損害賠償額の予定または違約金に関する事項を説明しなければならないとする肢で、これは35条1項8号そのままです。
誤りの肢も宅建の学習内容の範囲に収まっています。「管理が委託されているときは、委託を受けている者の商号のほかに、その主たる事務所に置かれる専任の管理業務主任者の氏名も説明しなければならない」という肢は、宅地建物取引業法施行規則16条の2第8号が定めるのが「その委託を受けている者の氏名(法人にあつては、その商号又は名称)及び住所(法人にあつては、その主たる事務所の所在地)」であり、専任の管理業務主任者の氏名は含まれないため誤りです。「通常の管理費用の額は売買に関する内容ではないので説明する必要はない」という肢は、同条7号が「当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額」を挙げているため誤り。「石綿の使用の有無を自ら調査して説明しなければならない」という肢は、調査結果の記録があるときにその内容を説明する義務であって、自ら調査する義務はないため誤りです。
つまり管理業務主任者試験の問45は、宅建で区分所有建物の重要事項説明を仕上げていれば追加学習ゼロで取れる1問です。宅建の35条対策の全体像は重要事項説明の記載事項にまとめています。
なお、施行規則16条の2には第9号として「当該一棟の建物及びその敷地の管理者等が当該一棟の建物及びその敷地に係る管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合にあつては、その旨」という項目があります。管理会社自身が管理者等に就任するいわゆる第三者管理方式が広がったことに対応して置かれた説明事項で、宅建の側から見ても管理業務主任者の側から見ても新しい論点です。両試験に橋を架ける位置にあるので、併願するなら押さえておく価値があります。
民法は道具として持ち込める
問1の善管注意義務、問2の委任と寄託、問3の請負は、いずれも民法の典型契約の理解を問うものです。宅建の権利関係で委任と請負を扱っていれば、条文の原則はそのまま使えます。ただし寄託は宅建でまず出題されない契約類型なので、ここだけは追加で条文を読む必要があります。委任と請負の基本は委任契約と請負契約の違いで整理しています。
問39と問40の管理費滞納は、民法の債権回収と区分所有法7条の先取特権が組み合わされた出題です。消滅時効の起算点と完成猶予、債務者の承認による更新といった論点は宅建の時効でそのまま扱う内容です。問41の賃貸借は民法および借地借家法によるもので、居住用でない建物にも借地借家法が適用されるかといった、宅建の借地借家法の基本論点が問われています。
重なって見えて、問われ方が違う場所
ここが併願でもっとも取りこぼしが出る領域です。範囲表の上では同じ法律の名前が並んでいるのに、実際に問われる内容がずれているものを、論点ごとに見ていきます。
区分所有法は、宅建では「取引の前提」、管業では「運営の手順」
宅建で区分所有法が出るとき、その関心は取引の場面にあります。買主に何を説明しなければならないか、専有部分と共用部分の境目がどこか、敷地利用権は分離処分できるのか、規約でどこまで別段の定めができるのか。決議要件も、共用部分の変更(17条1項)、規約の設定・変更・廃止(31条1項)、建替え(62条1項)の各要件を取り違えていないかが試されます。取引の相手方に不利益が及ぶかどうかという観点から、法律の骨格を知っていれば足ります。
管理業務主任者試験の区分所有法は、管理組合を実際に回す側の手順として問われます。令和7年度は、法定共用部分に何が含まれるかを判例を含めて数える問題、集会の手続に関する問題、そして罰則規定に関する問題が出ています。罰則の内容は、規約や議事録の保管をしなかった場合、正当な理由なく閲覧を拒んだ場合などに、その行為をした管理者・理事・規約を保管する者・議長または清算人を20万円以下の過料に処するというものです。宅建の学習でこの条文まで読む人はまずいません。管理者や理事長が果たすべき義務に違反したらどうなるか、という管理側の視点があって初めて出題対象になる条文だからです。
同じことは招集手続にも言えます。宅建では集会の招集通知が会日より少なくとも1週間前に発せられることを知っていれば十分ですが、管理業務主任者では、通知をどこに宛てるか、届出のない区分所有者にはどう通知するか、招集手続を省略できるのはどういう場合か、といった実務の分岐まで踏み込まれます。決議要件の数字を覚えるところで止めず、条文の順序に沿って手続を追う読み方に切り替える必要があります。
令和8年4月1日施行の区分所有法改正で、過去問と条文がずれる
併願する人がいま最も気をつけるべきなのが、この点です。「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第47号)により、区分所有法は令和8年4月1日から改正後の内容で施行されています。宅建試験も管理業務主任者試験も、出題の根拠となる法令等は当該年度の4月1日現在で施行されているものとされているため、令和8年度は両試験とも改正後の条文で出題されます。
影響が大きいのは3か所です。
第1に、集会の決議要件の数え方です。改正後の17条1項は、共用部分の変更について、区分所有者の過半数であって議決権の過半数を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の多数による決議で決するという形になりました。31条1項の規約の設定・変更・廃止も同じく、定足数を満たしたうえで出席者を分母とする4分の3以上という構成です。39条1項の普通決議も「出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及びその議決権の各過半数」となっています。改正前は区分所有者の総数と議決権の総数を分母にしていたので、分母が変わったことになります。一方、62条1項の建替え決議は区分所有者及び議決権の各5分の4以上という総数基準のままで、同条2項に耐震性や防火性の基準に適合しない場合などについて4分の3に緩和する規定が置かれました。
第2に、招集通知の内容と期間です。改正後の35条1項は、会日より少なくとも1週間前に「会議の目的たる事項及び議案の要領を示して」通知を発することを求め、ただし書は「この期間は、規約で伸長することができる」となりました。改正前は議案の要領を示すのは特別決議事項の場合に限られ、ただし書も「伸縮することができる」でした。短縮できなくなった点は、宅建でも管理業務主任者でも問われやすいところです。
第3に、条番号の移動です。前述した20万円以下の過料の規定は、改正前は71条にありましたが、改正後は91条になっています。令和7年度以前の過去問には「区分所有法第71条の罰則規定に関する」という柱書がそのまま残っているため、過去問を解いて条文に当たると番号が合いません。番号で覚えるのではなく、誰が何をしなかったときの過料か、という中身で覚えておくのが安全です。決議要件の整理は区分所有法の決議要件を、区分所有法全体の構造は区分所有法の基本ルールを、それぞれ改正内容と突き合わせながら読んでください。
区分所有法と標準管理規約は、原則とモデルの関係にある
もう一段ややこしいのが、区分所有法と標準管理規約の関係です。令和7年度は区分所有法系が5問、標準管理規約系が9問でした。両者は重なる話題を扱いますが、根拠が違います。
区分所有法は法律なので、その規定に反する規約は効力を持ちません。標準管理規約は国土交通省が示すモデルであって、法的拘束力はなく、各管理組合が自分の規約を作るときの雛形です。したがって設問の柱書が「区分所有法によれば」なのか「標準管理規約(単棟型)によれば」なのかで、答えが変わることがあります。
たとえば総会の決議です。令和7年10月17日に改正された標準管理規約(単棟型)47条は、総会の会議が議決権総数の過半数を有する組合員の出席で成立し(1項)、議事は出席組合員の議決権の過半数で決する(2項)としています。普通決議は議決権だけを数え、組合員の頭数を数えません。これに対し区分所有法39条1項は、出席した区分所有者(議決権を有しないものを除く)およびその議決権の各過半数と定めており、頭数と議決権の両方を数えます。同じ「過半数」という言葉でも、何を分母にしているかが違います。
規約の制定・変更・廃止などの特別決議はさらに枝分かれします。標準管理規約47条3項は、組合員総数の過半数であって議決権総数の過半数を有する組合員の出席を要し、出席組合員およびその議決権の各4分の3以上で決するとしています。加えて同条4項に、瑕疵の除去やバリアフリー化に関する変更、建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の共用部分の復旧について、各3分の2以上とする枠が置かれました。法律の話をしているのか、モデル規約の話をしているのかを毎回確認する癖がないと、正確に覚えているほど間違えます。
なお、この標準管理規約の改正は区分所有法等の改正を踏まえたものです。国土交通省が公表している現行版は令和7年10月17日最終改正で、表紙にも「令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)」と記されています。令和6年度以前の過去問と条文を突き合わせると食い違うので、条文は必ず現行版で確認してください。
宅建の学習から入る人は、この二層構造を最初に頭に入れてください。区分所有法で原則を押さえ、そのうえで標準管理規約がどこを具体化し、どこを法律と違う書きぶりにしているかを対比する。順序を逆にして標準管理規約から入ると、なぜその条項があるのかがわからないまま丸暗記することになり、9問という最大級の塊に太刀打ちできません。
重要事項説明は、相手方と時期の設計が違う
宅建業法35条と、マンション管理適正化法72条は、構造がよく似ています。専門知識を持つ事業者が、持たない相手方に対して、契約前に法定事項を説明し、書面に専門家が記名する。参入規制と専門家の設置義務とセットになっている点も同じです。だから宅建業法を仕上げた人は、適正化法を「宅建業法の管理版」として読めます。
ただし、対応させるときに落ちる差が4つあります。
第1に、説明の相手方です。宅建業法35条の説明は取引の相手方に対して行います。適正化法72条1項は、新たに管理受託契約を締結しようとするときは、あらかじめ説明会を開催し、管理組合を構成するマンションの区分所有者等および管理組合の管理者等に対して説明させなければならないと定めます。個人ではなく集団が相手であり、そのために説明会という手続が法定されています。
第2に、書面交付の時期です。宅建業法35条には「契約が成立するまでの間に」という規定があるだけで、何日前という期限はありません。適正化法72条1項は、説明会の日の1週間前までに、区分所有者等および管理者等の全員に対し、重要事項ならびに説明会の日時および場所を記載した書面を交付しなければならないと定めています。1週間前という数字は、集会の招集通知の1週間前と混ざりやすいところなので、条文ごとに分けて覚えます。
第3に、更新のときの扱いです。宅建の取引に「同一条件での更新」という概念はありませんが、管理委託契約は毎年更新されます。適正化法72条2項は、従前の管理受託契約と同一の条件で更新しようとするときは、あらかじめ区分所有者等全員に重要事項を記載した書面を交付すればよいとし、説明会の開催は求めていません。ただし同条3項により、管理者等が置かれているときは、その管理者等に対して管理業務主任者が書面を交付して説明しなければなりません。新規契約は説明会、同一条件の更新は書面交付プラス管理者等への説明、という場合分けが出題の定番です。
第4に、証の提示です。宅建士は35条の説明をするとき、相手方に宅地建物取引士証を提示しなければなりません。管理業務主任者も、72条4項により重要事項の説明をするとき、77条3項により管理事務の報告をするときに、管理業務主任者証を提示しなければなりません。提示義務がある場面が説明時だけでなく報告時にも及ぶのは、管理という業務が継続するからです。35条と37条の書面の違いを整理した35条書面と37条書面の横断整理を先に固めておくと、この対応づけが速く進みます。
契約成立時の書面は、交付先が違う
宅建業法37条書面は契約の各当事者に交付します。適正化法73条1項は、管理受託契約を締結したときは、管理組合の管理者等に対し遅滞なく書面を交付しなければならないと定め、管理業者自身が管理者等である場合または管理者等が置かれていない場合には、区分所有者等全員に交付するとしています。記載事項は、管理事務の対象となるマンションの部分、管理事務の内容および実施方法、管理事務に要する費用ならびにその支払の時期および方法、一部の再委託に関する定めがあるときはその内容、契約期間に関する事項、契約の更新に関する定めがあるときはその内容、契約の解除に関する定めがあるときはその内容、その他国土交通省令で定める事項です。同条2項により、この書面にも管理業務主任者が記名します。
37条書面の必要的記載事項と任意的記載事項の切り分けを宅建で仕上げていれば、73条の8項目も同じ読み方で頭に入ります。逆に、宅建の段階で37条書面を「35条との違い」だけで処理していると、73条を新規暗記することになります。
建築基準法は、集団規定と単体規定で分かれる
宅建の法令上の制限で扱う建築基準法は、主に集団規定です。用途地域ごとの用途制限、建ぺい率と容積率、道路と接道義務、高さ制限。街をどう作るかという規制で、建物を建てる前の話です。建築基準法の全体像や建ぺい率と容積率の基本で扱う内容がここに当たります。
管理業務主任者試験の建築基準法は、単体規定と維持保全の側に寄ります。令和6年度は12条1項の定期調査・報告が出題されており、これは既存建物を所有者・管理者が定期に調査させて特定行政庁に報告する制度です。建てた後の建物をどう維持するかという規定で、宅建ではまず問われません。防火・避難規定や消防法にもとづく防火管理者の選任も同じ枠にあります。
ただし完全に断絶しているわけではありません。令和6年度の問14は容積率の算定にあたって延べ面積に算入しない部分を問うもので、これは宅建の集団規定そのものです。宅建で建ぺい率・容積率を計算できる状態にしておけば、こうした問題が出た年には確実に拾えます。
税は、取引の税と団体の税で別物
宅建の税・その他は、不動産の取得・保有・譲渡にかかる税を扱います。不動産取得税、固定資産税、印紙税、登録免許税、所得税(譲渡所得)。納税義務者は不動産を買った人・持っている人・売った人です。
管理業務主任者試験の税務は、管理組合という団体にかかる税です。令和7年度の問9は、消費税法によれば管理組合が当課税期間において必ず消費税の課税事業者となるものはいくつあるか、というものでした。肢には、基準期間における敷地の一部貸出しによる組合員以外の第三者からの賃料収入や、組合員以外の第三者からの駐車場使用料収入の金額が具体的に示されており、基準期間と特定期間の課税売上高から課税事業者になるかどうかを判定させる作りになっています。組合員から受け取る管理費のように対価性のない負担金と、組合員以外への貸付けのように対価性のある収入とを切り分ける、という発想が土台にあります。同じ「税」という言葉でも、問われているものが違います。宅建側の税の全体像は不動産にかかる税金の横断整理を参照してください。
統計は、形式が似ていて中身が別
宅建には統計問題があります。地価公示、住宅着工統計、法人企業統計、土地白書といった公表資料から、直近の増減を問う1問です。管理業務主任者試験にも、国土交通省が公表している分譲マンションの統計・データ等を問う枠があり、令和5年度から令和7年度まで問43に固定して置かれています。令和7年度は、築40年以上のマンションの戸数、マンションストックの総数、マンション総合調査における世帯主の年齢構成、長期修繕計画の作成率が肢に並びました。
形式は似ていますが、覚える数字はまったく別です。宅建の統計対策をしたから管理業務主任者の問43が取れる、ということはありません。逆に言えば、どちらも直前期に短時間で仕上げる性質の1問なので、併願する年はこの2つを別々に、それぞれの直前に詰め込むと決めておけば混乱しません。宅建側の準備の仕方は統計問題の対策にまとめています。
併願の日程と、制度上おさえておくこと
令和8年度の日程
管理業務主任者試験は、令和8年度は12月6日(日)13時00分から15時00分に実施されます。試験地は北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県および沖縄県ならびにこれらの周辺地域。受験手数料は8,900円(非課税)で、Web申込の場合は事務手数料297円が別途必要です。受験申込は、Web申込が8月3日から9月30日まで、郵送申込が8月3日から8月24日まで(当日消印有効)。合格発表は令和9年1月15日(金)です(マンション管理業協会「令和8年度 管理業務主任者試験 実施要領」)。
宅建試験は毎年1回、10月の第3日曜日の午後1時から午後3時までです(不動産適正取引推進機構「宅建試験の概要」)。両者のあいだには7週間前後が空きます。年度ごとの正確な日付は2026年の宅建試験日程で確認してください。
注意すべきは申込の時期です。管理業務主任者の受験申込期間は8月から9月にかけてで、これは宅建の直前期に完全に重なります。宅建の学習が最も張り詰めている時期に、別の試験の申込手続を挟むことになるため、併願を決めているなら申込を先に済ませてしまうのが安全です。郵送申込は8月下旬で締め切られるので、実質的にはWeb申込を使うことになります。
5問免除は宅建からは効かない
併願を検討する人が最初に確認すべきなのは、宅建の合格が管理業務主任者試験の免除につながらないという点です。管理業務主任者試験で試験の一部免除を受けられるのは、マンション管理士試験の合格者だけです(前掲・受験申込案内書)。免除されるのは出題範囲の4号すなわちマンション管理適正化法に関することの5問で、45問・110分になります。
逆方向、つまり管理業務主任者試験の合格者がマンション管理士試験で5問免除を受けられる制度もあり、この2つは相互に免除の関係にあります。宅建だけがこの輪の外にいます。宅建の5問免除は、登録講習機関が行う講習を修了し、その修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験を受ける者が、施行規則8条1号と5号の部分について免除を受けるもので、宅建業に従事している人向けの制度です。制度の系統がそもそも違います。マンション管理士との関係の詳細はマンション管理士と宅建の関係で扱っています。
合格しても、登録には実務経験か講習が要る
管理業務主任者試験には受験資格がなく、年齢・性別・学歴を問わず誰でも受けられます。ただし合格後に国土交通大臣の登録を受けるには、適正化法59条1項により、管理事務に関し国土交通省令で定める期間以上の実務経験を有すること、または国土交通大臣がそれと同等以上の能力を有すると認めたものであることが必要です。同法施行規則68条は、この期間を2年と定めています。実務経験が2年に満たない場合は、国土交通大臣の登録を受けた者が行う登録実務講習を受講し、修了試験に合格することで、2年以上の実務経験を有するものと同等以上の能力を有すると認められます(マンション管理業協会「管理業務主任者の登録」)。
さらに、登録を受けた者が管理業務主任者証の交付を申請するときは、適正化法60条2項により、登録講習機関が行う講習で交付申請の日前6月以内に行われるものを受けなければなりません。ただし試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする者は、この講習が不要です。管理業務主任者証の有効期間は5年です(同条3項)。宅建士証の交付にあたって法定講習が必要で、合格から1年以内なら免除される仕組みと同じ構造です。宅建側の手続は宅建士の登録と宅建士証にまとめています。
設置義務の数え方が違う
宅地建物取引業者は、事務所については、業務に従事する者の数に対する専任の宅地建物取引士の数の割合が5分の1以上となる数を置かなければなりません(宅建業法31条の3第1項、同法施行規則15条の5の3)。分母は人です。専任の宅建士の設置義務で詳しく扱っています。
マンション管理業者は、その事務所ごとに、事務所の規模を考慮して国土交通省令で定める数の成年者である専任の管理業務主任者を置かなければならず(適正化法56条1項)、施行規則61条はこの数を「管理事務の委託を受けた管理組合の数を三十で除したもの(一未満の端数は切り上げる。)以上」と定めています。分母は管理組合です。なお56条1項ただし書により、人の居住の用に供する独立部分が国土交通省令で定める数以上である建物の区分所有者を構成員に含む管理組合から委託を受けて行う管理事務を業務としない事務所には、この設置義務が及びません。この独立部分の数は施行規則62条により6とされています。
学習順序をどう組むか
宅建の学習期にやっておくこと
併願を決めているなら、宅建の学習期のうちにやっておくと後で効くことが3つあります。
ひとつめは、区分所有法を条文で読むことです。宅建における区分所有法の出題数は多くありません。しかし管理業務主任者では区分所有法5問と標準管理規約9問の土台になります。宅建の重要度に合わせて「1問だから軽く」と処理すると、10月以降に一から積み直すことになります。逆に、専有部分と共用部分、敷地利用権、管理者、規約、集会、義務違反者に対する措置、復旧と建替え、団地という条文の並びを一度追っておけば、そのまま管理業務主任者の骨格になります。
ふたつめは、宅建業法35条・37条を「構造」で理解することです。誰が、誰に、いつまでに、何を説明し、誰が記名するか。この4点セットの形で頭に入れておくと、適正化法72条・73条をまったく同じ枠で読めます。記載事項を語呂で丸暗記した状態だと、この転用が効きません。
みっつめは、建ぺい率・容積率の計算を捨てないことです。管理業務主任者でも、年によっては集団規定側から出題されます。計算問題は一度手が動くようになれば維持コストが低いので、宅建の段階で仕上げておく価値があります。
宅建が終わってからの7週間
宅建の翌日から管理業務主任者までは7週間前後です。ここで全範囲を均等に回そうとすると確実に足りません。前節までの分類を使って引き算します。
引き算の結果、この期間にやるべきものは5つに絞られます。建築設備と維持修繕(12問)、標準管理規約(9問)、標準管理委託契約書(5問)、マンション管理適正化法と基本方針(5問)、管理組合の会計と税務(4問)。合計35問です。ここに区分所有法の上積みが加わります。
着手の順序は、時間のかかり方で決めます。
最初に手をつけるべきは建築設備と維持修繕です。理由は2つあります。第1に12問と最も配点が大きいこと。第2に、法律科目のように論理で埋められず、用語を知っているかどうかで決まる部分が大きいため、覚える日数がそのまま必要になることです。排水トラップの封水切れ、受水槽方式と直結増圧方式の違い、コンクリートの中性化、屋上防水の工法といった内容は、7週間の後半に詰め込もうとしても間に合いません。長期修繕計画作成ガイドラインと修繕積立金ガイドラインは国土交通省が公表している文書なので、原典に目を通せる点は有利です。
次が標準管理規約です。9問という配点に加えて、区分所有法の理解と往復させる必要があるため時間がかかります。区分所有法の条文を横に置き、法がこう定めているところをモデル規約はこう具体化している、という対応で読み進めます。この読み方をすると、区分所有法の上積み分も同時に進みます。
3番目が標準管理委託契約書です。管理会社と管理組合の契約書のモデルなので、民法の委任・請負の理解がそのまま効きます。宅建で典型契約をやっていれば、5問のわりに短時間で立ち上がります。
4番目が会計と税務です。4問と配点は小さいものの、仕訳の型は限られており、発生主義で「いつの期間の収益・費用か」を判定して未収金・前受金・未払金・前払金のどれに当たるかを決められれば、大半の設問に届きます。簿記の資格がないことを理由に捨てるには惜しい枠です。
最後がマンション管理適正化法です。5問と配点は中程度ですが、宅建業法の理解がそのまま転用できるため、投下時間あたりの回収が最も大きい科目になります。だからこそ後ろに置きます。先に時間を使ってしまうと、転用の効かない設備や規約に割く日数が削られるからです。
順序を決める原則
まとめると、順序を決める原則はひとつです。宅建からの転用が効かないものほど先に、効くものほど後に置く。配点の大きさは、同じ転用度のなかで優先順位をつけるときの第2基準として使います。
この原則から外れる例外は、区分所有法だけです。区分所有法は転用が効くにもかかわらず、標準管理規約の前提になるため早い段階で上積みしておく必要があります。単独の科目としてではなく、標準管理規約を読むための準備として扱うと位置づけを間違えません。
宅建取得後のキャリアの選択肢まで含めて考えたい場合は宅建士のキャリアパス、賃貸管理の方向と比較したい場合は賃貸不動産経営管理士と宅建の違い、資格の取得順序全体は資格取得の順番ガイドを参照してください。
試験での出題ポイント
ここでは、併願する人が両試験で取りこぼしやすいポイントを、宅建側の視点で整理します。
柱書を読む
管理業務主任者試験の設問は、柱書で根拠を指定します。「区分所有法によれば」「標準管理規約(単棟型)によれば」「標準管理委託契約書によれば」「マンション管理適正化法によれば」「長期修繕計画作成ガイドラインによれば」。この指定が答えを決めます。宅建の設問にも「民法の規定によれば」「判例によれば」といった指定はありますが、管理業務主任者では法令そのものではないモデル文書・ガイドライン・告示を根拠とする問題が令和7年度で20問あり、全体の4割を占めます。法律の知識で答えると間違える設問がそれだけあるということです。柱書を読み飛ばす癖がある人は、そこだけで数問落とします。
数の数え方の問題に慣れる
管理業務主任者試験には「適切なものはいくつあるか」「不適切なものはいくつあるか」という個数問題が多く出ます。令和7年度は問4、問7、問9、問10、問20、問21、問26、問29、問31、問35、問36、問47、問48がこの形式で、50問中13問を占めました。個数問題は、4肢のうち1肢でも判断を誤ると失点するため、消去法が使えません。宅建でも個数問題は出ますが比率は低く、併願する人はこの形式の重さに面食らいがちです。過去問を解くときは、正解の番号ではなく、各肢の正誤を全部言えるかで自己採点する習慣が要ります。
5問免除の位置を知っておく
マンション管理士試験の合格者に免除される5問は、出題範囲の4号すなわち適正化法の部分です。裏を返せば、免除を受けない受験者にとって、問46から問50は「免除される人がいる枠」であり、ここを落とすと免除者との差が開きます。適正化法は宅建業法からの転用が効く科目なので、宅建合格者にとってはむしろ得点源にしやすい枠です。捨てずに拾ってください。
宅建側で問われる管理の知識
逆方向の出題もあります。宅建の35条書面では、区分所有建物について施行規則16条の2が10項目を定めており、そのなかには一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときの内容と既に積み立てられている額、通常の管理費用の額、管理が委託されているときの受託者の氏名・住所、維持修繕の実施状況の記録があるときの内容といった、まさに管理側の情報が並びます。管理業務主任者の学習で標準管理規約や長期修繕計画に触れると、この10項目が「なぜ説明事項なのか」という理由から理解できるようになります。併願は、宅建から管理業務主任者への一方通行ではなく、戻りの効果もあるということです。
覚え方・整理の仕方
「法律・モデル・実務」の三層で置く
管理業務主任者の範囲は、根拠の性質で三層に分けると混乱しません。第一層が法律で、区分所有法、マンション管理適正化法、民法、消防法、建築基準法。第二層がモデル文書で、標準管理規約、標準管理委託契約書。第三層が国土交通省のガイドラインで、長期修繕計画作成ガイドライン、修繕積立金ガイドライン、マンション管理適正化基本方針。
宅建の学習は、ほぼ第一層だけで完結します。管理業務主任者では、令和7年度でいえば第二層が14問(標準管理規約9問と標準管理委託契約書5問)、第三層が6問(長期修繕計画作成ガイドライン4問、修繕積立金ガイドライン1問、基本方針1問)で、合わせて20問を占めます。この構造を先に頭に置いておくと、「宅建で法律をやったのに解けない」という感覚が、能力の問題ではなく層の問題だと整理できます。
対応表を作らず、対応「構造」を持つ
宅建業法と適正化法を対応させるとき、条文番号の対応を暗記しようとすると破綻します。持つべきは番号ではなく構造です。参入規制(免許/登録)、専門家の設置義務(31条の3/56条)、契約前の説明(35条/72条)、契約後の書面(37条/73条)、財産の保全(営業保証金・保証協会/76条の分別管理)、期中の報告(宅建になし/77条)、監督処分。この7つの箱を作り、宅建業法で学んだ中身を左に、適正化法の中身を右に入れていきます。
箱が7つあるうち、宅建業法側が空になるのは「期中の報告」だけです。この空欄が、取引が一点で終わり管理が線で続くという性質の差をそのまま表しています。逆に、適正化法側に営業保証金のような制度がなく代わりに分別管理が置かれているのは、管理業者が預かるのが取引の代金ではなく管理組合の修繕積立金だからです。箱の中身が違う理由を説明できる状態にしておけば、細部を忘れても復元できます。
数字は分母で覚える
宅建士の設置義務は業務に従事する者5人に1人以上で、分母は人。管理業務主任者の設置義務は受託した管理組合30組合に1人以上で、分母は組合。宅建業の仕事量は取引件数に比例し、それは従業者数と連動します。管理業の仕事量は受託した管理組合の数に比例します。だから分母が違う。理屈から出せるようにしておけば、本番で逆にする事故を防げます。
「1週間前」は場面ごとに切り分ける
区分所有法35条1項の集会の招集通知は会日より少なくとも1週間前、適正化法72条1項の重要事項を記載した書面の交付は説明会の日の1週間前まで。同じ1週間ですが、片方は集会、片方は説明会です。混ざりやすいので、「集会の1週間前は区分所有法、説明会の1週間前は適正化法」と、場面と法律をセットで覚えます。
併願は引き算で設計する
管理業務主任者の全範囲を7週間で回そうとすると足りません。全範囲から宅建で済ませた部分を引き、残ったものだけを対象にします。引き算の結果は、建築設備と維持修繕、標準管理規約、標準管理委託契約書、適正化法、会計と税務、そして区分所有法の上積み分。この6つに絞れば、期間内に収まる分量になります。
理解度チェッククイズ
Q1. 管理業務主任者試験で試験の一部免除を受けられるのは、宅地建物取引士資格試験の合格者である。(○か×か)
答えを見る
×:一部免除を受けられるのはマンション管理士試験の合格者です。免除されるのは出題範囲の4号にあたる「マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること」の5問で、45問・午後1時10分から午後3時までの110分となります(マンション管理業協会「令和7年度管理業務主任者試験 受験申込案内書」)。宅建の5問免除は、登録講習機関の講習を修了しその修了試験に合格した日から3年以内の試験について、宅地建物取引業法施行規則8条1号と5号を免除するもので、制度の系統が別です。宅建合格は管理業務主任者試験の免除にはつながりません。Q2. マンション管理業者が従前の管理受託契約と同一の条件で契約を更新しようとするときも、あらかじめ説明会を開催しなければならない。(○か×か)
答えを見る
×:マンション管理適正化法72条2項は、同一の条件で更新しようとするときは、あらかじめ区分所有者等全員に対して重要事項を記載した書面を交付すればよいとしており、説明会の開催は求めていません。ただし同条3項により、その管理組合に管理者等が置かれているときは、管理業務主任者が管理者等に対して書面を交付して説明しなければなりません。説明会が必要なのは72条1項の新規締結の場面で、この場合は説明会の日の1週間前までに区分所有者等および管理者等の全員へ書面を交付する必要があります。Q3. 令和7年度の管理業務主任者試験では、宅地建物取引業法35条にもとづく重要事項の説明を正面から問う問題が出題された。(○か×か)
答えを見る
○:令和7年度の問45が、宅地建物取引業者Aが自ら売主として宅地建物取引業者ではない買主Bにマンションを販売する場合の、宅建業法35条にもとづく重要事項の説明を問うものでした。正解は損害賠償額の予定または違約金に関する事項を説明しなければならないとする肢です。問45が宅建業法から出題される構成は令和4年度から令和7年度まで続いており、宅建の学習がそのまま1問になる枠として扱えます。Q4. 宅建で区分所有法を仕上げておけば、管理業務主任者試験のマンション管理に関する出題はおおむね対応できる。(○か×か)
答えを見る
×:令和7年度の本試験を出題対象で分類すると、区分所有法を根拠とする問題が5問であるのに対し、マンション標準管理規約を根拠とする問題は9問あります。標準管理規約は法令ではなく国土交通省が示すモデル規約で、宅建の出題範囲には含まれません。区分所有法が原則を定め、標準管理規約がそれを管理組合運営に落とし込むという二層構造になっているため、法律だけを押さえても規約側の9問には届きません。Q5. 管理業務主任者試験に合格すれば、実務経験がなくても直ちに国土交通大臣の登録を受けることができる。(○か×か)
答えを見る
×:マンション管理適正化法59条1項は、試験に合格した者で管理事務に関し国土交通省令で定める期間以上の実務経験を有するもの、または国土交通大臣がそれと同等以上の能力を有すると認めたものが登録を受けられるとしており、同法施行規則68条はこの期間を2年と定めています。実務経験が2年に満たない場合は、国土交通大臣の登録を受けた者が行う登録実務講習を受講し修了試験に合格することで、同等以上の能力を有するものと認められます。なお試験自体には受験資格がなく、年齢・性別・学歴を問わず受験できます。よくある質問
宅建に落ちたら、管理業務主任者の学習は無駄になりますか
無駄にはなりません。管理業務主任者で学ぶ区分所有法と民法は翌年の宅建にそのまま効きますし、適正化法の学習は宅建業法と同じ構造をたどるため、宅建業法の復習として機能します。標準管理規約や長期修繕計画に触れた経験は、宅建業法施行規則16条の2が定める区分所有建物の説明事項が「なぜその項目なのか」を理解する助けにもなります。ただし宅建の自己採点が明らかに合格圏外だった場合は、管理業務主任者に進むより翌年の宅建へ資源を集中したほうが期待値は高くなります。判断の目安は宅建試験の合格ラインを参照してください。
管理業務主任者を先に取る順序はありえますか
ありえます。すでにマンション管理会社に勤めていて、適正化法56条の設置義務を満たすために会社が資格者を必要としている場合は、順序を逆にする合理性があります。ただし学習効率の観点では、宅建で作った民法・区分所有法・宅建業法の土台が管理業務主任者に流れ込む一方、標準管理規約・建築設備・管理組合会計は宅建でほとんど使わないため、転用は一方通行に近くなります。同じ2つを取るのでも順序で総コストが変わります。
標準管理規約は毎年改正されますか
毎年ではありませんが、法改正に合わせて改正されます。直近では令和7年10月17日に、区分所有法等の改正を踏まえた大きな改正が行われました。国土交通省が公表している現行版は「令和7年改正マンション標準管理規約」で、単棟型・団地型・複合用途型のそれぞれにコメントつきの本文が示されています。総会の会議の成立要件が議決権総数の過半数を有する組合員の出席となった点、特別決議に各3分の2以上という枠が加わった点などが変わっており、令和6年度以前の過去問と条文が食い違います。
なお、本試験の出題根拠となる法令等は当該年度の4月1日現在で施行されているものとされており(マンション管理業協会「令和8年度 管理業務主任者試験 実施要領」)、モデル文書についても本試験問題の冒頭で参照する版が明示されます。令和7年度の問題冊子では、長期修繕計画作成ガイドラインと修繕積立金ガイドラインについて令和6年6月改定版が参照されていました。改正のあった年は、改正部分が出題されやすいと考えて構いません。
会計は簿記の勉強をしてから取り組むべきですか
必要ありません。令和7年度の会計は、一般会計貸借対照表の読み取りが1問、仕訳が2問の計3問でした。問われるのは管理組合会計という限定された領域で、発生主義にもとづき「いつの期間の収益・費用か」を判定し、未収金・前受金・未払金・前払金のどれに当たるかを決められれば大半に届きます。簿記の体系を先に学ぶより、過去問の仕訳パターンを直接なぞるほうが7週間という制約には合います。
管理業務主任者証はいつまでに取ればよいですか
急ぐ必要があるかどうかは、勤務先が設置義務を満たすために資格者を必要としているかで決まります。制度上は、試験に合格した日から1年以内に管理業務主任者証の交付を受けようとする場合、適正化法60条2項ただし書により登録講習機関の講習が不要になります。1年を過ぎると、交付申請の日前6月以内に行われる講習を受ける必要があります。ただし登録自体に2年の実務経験または登録実務講習が要るため、実務経験がない人はまず登録の要件を満たすところから始めることになります。
まとめ
- 出題範囲を定めるのは、宅建が宅地建物取引業法施行規則8条の7項目、管理業務主任者がマンション管理適正化法施行規則64条の5項目。前者の主語は土地と建物、後者の主語はすべて管理事務であり、この差が会計と建築設備という宅建にない分野を生んでいる。
- 令和7年度の管理業務主任者試験50問を出題対象で分類すると、建築設備・維持修繕が12問、標準管理規約が9問、標準管理委託契約書が5問、区分所有法が5問、適正化法と基本方針が5問、会計・税務が4問、民法系が6問、他法令が4問。宅建の学習が直接効くのは12問前後で、合格基準点36問には遠く及ばない。
- 重なって見えて問われ方が違うのは、区分所有法(取引の前提か運営の手順か)、区分所有法と標準管理規約(法律かモデルか)、重要事項説明(相手方が個人か集団か、1週間前の書面交付があるか)、建築基準法(集団規定か単体規定・維持保全か)、税(取引の税か団体の税か)、統計(同じ形式で別の数字)の6か所。
- 学習順序は、宅建からの転用が効かないものほど先に置く。建築設備・維持修繕、標準管理規約、標準管理委託契約書、会計・税務、そして最後に適正化法。例外は区分所有法で、標準管理規約を読むための前提として早めに上積みする。
- 令和8年度は、区分所有法が令和7年法律第47号により令和8年4月1日施行の改正後の内容で、標準管理規約も令和7年10月17日改正の現行版で出題される。決議要件の分母、招集通知の記載事項と期間の伸長、過料規定の条番号が変わっているため、令和7年度以前の過去問と条文が食い違う。
- 制度面では、宅建合格は管理業務主任者試験の5問免除につながらないこと(免除はマンション管理士試験合格者のみ)、登録には2年の実務経験または登録実務講習が要ること、設置義務の分母が宅建は人で管理業務主任者は管理組合であることを押さえておく。
宅建試験AIブートラボでは、区分所有法や35条書面など管理業務主任者にもつながる論点を肢別に演習できるので、併願を決めたら権利関係と宅建業法の該当分野から取り組んでみてください。