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住宅ローンの仕組み|住宅金融支援機構と抵当権

税・その他 読了 約27分

住宅ローンを条文と計算構造から解説。元利均等と元金均等の違い、変動金利の5年ルールと125%ルール、住宅金融支援機構法13条の業務、抵当権、35条1項12号の説明義務までを整理します。

目次

    本記事の役割 — この記事は住宅ローンを制度と条文の側から組み立てます。金利タイプをどう選ぶか、金融機関をどう比較するかといった実際の選び方は住宅ローンの基礎知識|金利タイプと返済方法の違い、控除額の計算は所得税の住宅ローン控除にそれぞれ譲り、ここでは変わらない骨格を扱います。

    住宅ローンの記事は数字であふれています。金利は何パーセント、審査は年収の何倍まで、控除額はいくら。ところがこの種の数字は、金融機関によって違い、年度によって変わり、商品要件の改定でも動きます。出典と時点を示せない数字を覚えても、学習にも実務にも役立ちません。

    この記事では逆のことをします。変わらない部分、つまり計算構造と条文構造を骨格に据えます。 元利均等返済と元金均等返済が数学的にどう違うか。変動金利の返済額据置の仕組みが何を生むか。住宅金融支援機構が法律上どう位置づけられているか。抵当権が実行されると何が起きるか。宅地建物取引業法35条が何を説明させるか。これらは金融機関が違っても年度が変わっても同じです。そのうえで、動く数字には必ず出典と時点を添えます。

    住宅ローンは宅建試験の複数分野に枝を伸ばしています。住宅金融支援機構は税・その他(5問免除の対象科目)、抵当権は権利関係、金銭の貸借のあっせんは宅建業法、住宅ローン控除は税。ばらばらに覚えるより、ひとつの取引の中でどこにどう現れるかを見たほうが定着します。

    返済方式は二つしかない

    元利均等返済の構造

    住宅ローンの返済方式は、元利均等返済と元金均等返済の二つです。この違いは商品の違いではなく、計算式の違いです。

    元利均等返済は、毎回の返済額(元金+利息)を一定にする方式です。返済額をmとすると、借入額をP、1回あたりの利率をr、返済回数をnとして、mは次の式で決まります。

    m = P × r × (1 + r)^n ÷ ((1 + r)^n − 1)

    毎回同じ額を払いますが、その内訳は毎回変わります。各回の利息は「その時点の残高 × r」で計算されるため、残高が大きい返済初期は利息の取り分が大きく、元金の減りが遅くなります。返済が進んで残高が減ると利息の取り分が小さくなり、同じ支払額のうち元金に回る割合が増えていきます。返済表を見ると、利息と元金の比率が回を追うごとに逆転していくのが分かります。

    元金均等返済の構造

    元金均等返済は、毎回返済する元金を一定にする方式です。元金部分は常にP ÷ nで固定され、利息は「その時点の残高 × r」なので、残高が減るぶんだけ利息も減っていきます。したがって毎回の返済額は初回が最大で、以後は単調に減っていきます。

    元金の減り方が最初から一定なので、同じ借入額・同じ利率・同じ期間なら、元金均等返済のほうが平均残高が小さくなります。利息は残高に利率を掛けたものですから、平均残高が小さければ利息総額も小さくなります。元金均等返済のほうが総返済額が少ないのは、この一点から導かれる結論です。逆に、返済初期の負担は元利均等返済より重くなります。

    計算例で差を見る

    以下は計算例です。実際の借入条件、適用金利、手数料は金融機関により異なります。

    前提を明示します。借入額3,000万円、年利1.5%(全期間一定と仮定)、返済期間35年(420回)、ボーナス払いなし、毎月払いのみ。この前提で計算すると次のようになります。

    元利均等返済では、毎回の返済額が約91,855円で420回同額です。総返済額は約3,858万円、うち利息が約858万円になります。元金均等返済では、初回の返済額が約108,929円、最終回が約71,518円まで下がります。総返済額は約3,789万円、うち利息が約789万円です。

    利息の差はおよそ69万円で、元金均等返済のほうが少なくなります。一方で初回の返済額は元金均等返済のほうが約1万7千円多くなります。「総額を抑えるか、初期の月々を抑えるか」というトレードオフであって、どちらかが一方的に有利ということはありません。なお、この計算は利率が全期間一定という仮定に依存しており、変動金利の場合はrが途中で変わるため返済表は組み直されます。

    この節の要点

    • 元利均等返済は毎回の支払額が一定、元金均等返済は毎回の元金が一定。
    • 元金均等返済のほうが平均残高が小さいので、同条件なら利息総額が小さくなる。
    • 初期の負担は元金均等返済のほうが重い。トレードオフであって優劣ではない。

    変動金利の5年ルールと125%ルール

    金利が変わっても返済額はすぐには変わらない

    変動金利型の住宅ローンでは、適用金利が定期的に見直されます。一般的には短期の市場金利に連動する指標をもとに年2回見直す商品設計が多く採られています。

    ここで問題になるのが、金利が変わるたびに毎月の返済額が変わると家計が立ち行かないことです。そこで多くの変動金利型商品には、次の二つの仕組みが組み込まれています。いずれも法律で定められたものではなく商品性の問題なので、すべての商品が採用しているわけではなく、契約時に約款で確認する必要があります。

    ひとつが5年ルールです。金利が見直されても、毎月の返済額そのものの見直しは5年ごとにしか行わない、という設計です。金利は半年ごとに動いても、支払う額は5年間据え置かれます。

    もうひとつが125%ルールです。5年後に返済額を見直すとき、新しい返済額は従前の返済額の125%を上限とする、という設計です。金利が大きく上がっても、次の5年間の月々の負担が一気に1.25倍を超えることはありません。

    据え置かれるのは金額であって利息ではない

    この二つのルールは家計の急変を防ぐ緩衝装置ですが、債務そのものを減らす仕組みではありません。ここが最も誤解されるところです。

    返済額が据え置かれている間も、適用金利は上がっています。各回の利息は「残高 × その時点の利率」で計算されるので、金利が上がれば利息額も増えます。返済額が一定のまま利息額が増えれば、その分だけ元金に回る額が減ります。つまり、返済額は変わらないのに元金の減り方だけが遅くなるという状態が生じます。

    さらに金利が上がると、計算上の利息が毎月の返済額そのものを上回る事態が起こりえます。この場合、その回の支払いでは利息すら払いきれず、元金はまったく減りません。支払いきれなかった利息は未払利息として積み上がっていきます。125%ルールが働いている局面でも同じことが起こります。上限に抑えられた返済額と、実際に発生している利息との差は消えるのではなく、繰り延べられるだけです。

    未払利息や減らなかった元金の扱いは商品によりますが、返済期間の最終回にまとめて精算する定めが一般的です。5年ルールと125%ルールは「支払いの平準化」であって「負担の減免」ではない、と理解しておいてください。

    固定金利との比較軸

    全期間固定金利型では、契約時の利率が完済まで変わりません。したがって前節の計算式のrが動かず、返済表は最初に確定します。将来の返済額が確定するかわりに、市場金利が下がっても恩恵を受けられません。固定期間選択型は、当初の一定期間だけ利率を固定し、期間終了後に変動へ移行するか再度固定を選ぶ形です。注意点として、5年ルールや125%ルールが適用されない商品設計が多く、固定期間終了時に返済額が大きく変わる可能性があります。この三類型の選び方は住宅ローンの基礎知識で扱っています。

    この節の要点

    • 5年ルールは返済額の見直しを5年ごとに限る仕組み、125%ルールは見直し後の返済額を従前の1.25倍までとする仕組み。いずれも法定ではなく商品性。
    • 据え置かれるのは支払額であって、発生する利息ではない。元金の減りが遅くなり、未払利息が生じうる。
    • 固定期間選択型ではこれらのルールが働かない設計が多い。

    住宅金融支援機構は何をする法人か

    条文が置いた「支援」と「補完」

    住宅金融支援機構は、独立行政法人住宅金融支援機構法にもとづく独立行政法人です。旧住宅金融公庫を廃止して業務を引き継ぐ形で、平成19年4月1日に設立されました(同法附則1条が施行期日を平成19年4月1日と定めています)。

    機構の性格を決めているのは4条です。機構は、一般の金融機関による住宅の建設等に必要な資金の融通を支援するための貸付債権の譲受け等の業務を行うとともに、資金の調達等に関する情報の提供その他の援助の業務を行うほか、一般の金融機関による融通を補完するための災害復興建築物の建設等に必要な資金の貸付けの業務を行うことにより、住宅の建設等に必要な資金の円滑かつ効率的な融通を図ることを目的とする、と定めています。

    条文の中に「支援」と「補完」という二つの語が置かれていることに注目してください。通常の住宅取得資金については「支援」、すなわち貸付債権を譲り受ける形で民間金融機関を後押しする。直接の貸付けを行うのは「補完」の場面、すなわち災害復興建築物などに限られる。 旧住宅金融公庫が国民に直接融資していた構造から、この4条によって役割が転換されました。

    14条もこの姿勢を裏づけています。機構は業務の実施に当たっては、資金の需要と供給の状況に応じて、一般の金融機関との適切な役割分担を図り、国民に対する長期資金の融通が円滑に行われるよう努めなければならない、と定めています。

    13条1項が並べる業務

    機構の業務の範囲は13条が定めています。1項に並ぶ号のうち、押さえておきたいものを条文の順に見ていきます。

    1号は貸付債権の譲受けです。住宅の建設・購入・改良に必要な資金の貸付けに係る、主務省令で定める金融機関の貸付債権を譲り受ける業務です。これが証券化支援業務の買取型にあたり、フラット35の基盤になっています。融資そのものを行うのは民間金融機関であり、機構は実行された債権を買い取る立場です。

    2号は特定債務保証です。1号の貸付債権のうち、信託や特定目的会社への譲渡を予定した貸付けに係るもの(特定貸付債権)を担保とする債券等について、債務の保証を行う業務です。これが保証型と呼ばれる仕組みで、この場合の債権は民間金融機関に残ります。

    3号は住宅融資保険法による保険です。ここで重要なのは、この保険が守るのは借入者ではなく貸し手である金融機関だという点です。借入者が返済不能になった場合に機構が金融機関に保険金を支払う仕組みで、金融機関の貸倒れリスクを引き受けることで住宅ローンの供給を促します。

    4号は情報の提供、相談その他の援助です。

    5号から11号までが直接の貸付けにあたります。5号が災害復興建築物の建設・購入または被災建築物の補修、6号が災害予防関連(災害予防代替建築物の建設・購入、災害予防移転建築物の移転、耐震性向上を主たる目的とする改良など)、7号が合理的土地利用建築物の建設・購入またはマンションの共用部分の改良、8号がマンションの更新、9号が子育て家庭・高齢者の家庭に適した賃貸住宅の建設または改良、10号が高齢者向けの住宅改良等、11号が住宅のエネルギー消費性能の向上を主たる目的とする改良です。

    並べてみると分かるとおり、災害、密集市街地の土地利用、マンションの共用部分と更新、子育て世帯・高齢者、省エネという政策目的が明確な領域に限られています。一般の住宅取得資金に対する直接融資は、この列挙のどこにも入っていません。

    12号が団体信用生命保険にあたる業務です。1号の業務により譲り受ける貸付債権に係る貸付けを受けた者、または5号から7号まで・11号等の規定による貸付けを受けた者とあらかじめ契約を締結して、その者が死亡した場合(重度障害の状態となった場合を含む)に支払われる生命保険の保険金または生命共済の共済金を、当該貸付けに係る債務の弁済に充当する、という内容です。

    団体信用生命保険の位置づけ

    団体信用生命保険(団信)は、借入者が死亡または所定の高度障害・重度障害の状態になった場合に、支払われる保険金を住宅ローンの残債務の弁済に充てる仕組みです。機構については13条1項12号がその根拠になります。

    構造上のポイントは、保険金が借入者や遺族に現金として渡るのではなく、債務の弁済に充当されるという点です。結果として残された家族に返済義務が残らず、住宅も競売にかからずに済みます。生命保険というより、住宅ローンという債務に紐づいた弁済の仕組みだと理解したほうが正確です。

    民間金融機関の住宅ローンでは団信への加入が融資条件になっている商品が多く、その場合は健康状態が審査の一部になります。加入の要否や保障範囲は商品により異なるため、条件は個別に確認する必要があります。

    この節の要点

    • 機構法4条が「支援」(貸付債権の譲受け)と「補完」(災害復興等の直接貸付け)を書き分けている。
    • 13条1項1号が買取型、2号が保証型、3号が住宅融資保険、5号から11号が直接貸付け、12号が団信。
    • 住宅融資保険は借入者ではなく金融機関を守る保険。

    フラット35と、要件は動くという事実

    商品としての骨格

    フラット35は、機構の証券化支援業務(買取型)を基盤とする全期間固定金利型の住宅ローンです。民間金融機関が融資を実行し、その債権を機構が買い取ります。

    制度の骨格として動きにくい部分を挙げます。金利タイプが全期間固定であること。適用される借入金利は申込時ではなく資金受取時(融資実行時)の金利であること。対象住宅が機構の定める技術基準に適合していることが要件であり、適合証明検査機関または適合証明技術者による物件検査を経て適合証明書の交付を受ける必要があること。借入対象となる住宅およびその敷地に機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定すること。保証人は不要であること。返済方法は元利均等毎月払いまたは元金均等毎月払いを選択でき、ボーナス払いを併用できること。返済終了までの間、対象住宅について火災保険に加入すること。

    技術基準への適合が要件になっている点は、機構法14条2項が「住宅の質の向上を図るために必要なものとして政令で定める事項に配慮して……貸付債権の譲受け……の条件の適切な設定その他の必要な措置を講ずる」と定めていることと対応しています。買い取る債権の対象住宅の質を機構が担保する、という構造です。

    数値要件は改定される

    一方で、金額や面積といった具体的な要件は、機構が商品条件として定めるものであり、法令ではないため改定されます。ここを固定的に覚えると、古い数字を持ち続けることになります。

    実例があります。独立行政法人住宅金融支援機構は令和7年12月23日付のプレスリリース「令和7年度補正予算に伴う制度拡充のお知らせ」で、フラット35について次の見直しを公表しました。融資限度額を8,000万円以下から1億2,000万円以下へ引き上げること(令和8年4月予定)、および対象となる一戸建て住宅等における床面積の下限を70㎡以上から50㎡以上へ緩和すること(令和8年4月予定)です。あわせて借換融資について、子育て世帯等向けの金利引下げ制度を借換融資でも利用可能とし、借入期間算出の基準となる年数を35年から40年に延長すること(借入期間の上限は35年のまま)も示されました。

    長年「融資限度額8,000万円」「一戸建ては70㎡以上」と書かれてきた要件が、この改定で置き換わりました。古い数字を載せたままの解説は今も流通しています。

    現時点の主な利用条件

    以下は住宅金融支援機構のフラット35公式サイト「ご利用条件」に掲載されている内容です(2026年8月時点での確認)。申込時点の最新条件は必ず公式サイトで確認してください。

    申込人については、申込時の年齢が満70歳未満であること、日本国籍の方・永住許可を受けている方・特別永住者の方であること、そして年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率)が、年収400万円未満で30%以下、年収400万円以上で35%以下であることが示されています。この総返済負担率は機構が公表している基準で、他の借入れの返済額も合算して判定されます。資金使途は、申込本人またはその親族が住むための新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金です。借入額は100万円以上1億2,000万円以下(1万円単位)で建設費または購入価額以内、借入期間は15年以上で「80歳−申込時の年齢」と「35年」のいずれか短い年数まで。床面積は一戸建て等が50㎡以上、共同建て(マンション等)が30㎡以上とされています。

    繰り返しますが、これらは商品条件であって法令ではありません。宅建試験で問われるのは機構法の条文構造であり、学習の重心は条文側に置いてください。

    この節の要点

    • フラット35の骨格(全期間固定、実行時金利、技術基準と適合証明書、第1順位の抵当権、保証人不要)は動きにくい。
    • 金額や面積の要件は機構の商品条件であり改定される。令和7年12月23日公表の改定で融資限度額は1億2,000万円へ、一戸建て等の床面積下限は50㎡へ。
    • 数値を扱うときは出典と時点をセットにする。

    抵当権は住宅ローンが権利関係と交わる場所

    抵当権が設定される理由

    住宅ローンを借りると、購入する住宅とその敷地に、融資した金融機関を抵当権者とする抵当権が設定されます。フラット35の場合は機構を抵当権者とする第1順位の抵当権です。

    抵当権の内容は民法369条1項が定めています。抵当権者は、債務者または第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する、と。占有を移転しない、つまり借入者はその家に住み続けられます。ここが質権との決定的な違いであり、住宅ローンの担保として抵当権が使われる理由でもあります。

    抵当権の効力は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及びます(370条)。土地に抵当権を設定しても、その上の建物には及びません。土地と建物を別個の不動産として扱う日本法の建前がここに表れています。だから住宅ローンでは通常、土地と建物の双方に抵当権を設定します。

    抵当権の基本論点の全体像は抵当権の基本と頻出論点、根抵当権との違いは根抵当権の仕組みにまとめています。抵当権が登記簿のどこに現れるかは登記簿の読み方で確認できます。

    順位と、実行されたときに起きること

    同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その順位は登記の前後による(373条)。第1順位の抵当権者は、競売代金から他の抵当権者に優先して配当を受けます。フラット35が第1順位を要求しているのは、機構が買い取る債権の回収可能性を確保するためです。

    被担保債権の範囲には制限があります。抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ抵当権を行使できます(375条1項本文)。後順位抵当権者や一般債権者が予測できない額まで優先されないようにする趣旨です。遅延損害金についても最後の2年分に限られ、利息と通算して2年分を超えることはできません(同条2項)。

    返済が滞れば、抵当権者は抵当権を実行します。担保不動産競売により不動産が売却され、その代金から順位に従って配当が行われます。競売の手続と配当計算は抵当権の実行と配当で扱っています。

    競売の結果として問題になる条文が二つあります。ひとつが法定地上権で、土地とその上の建物が同一の所有者に属する場合に、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について地上権が設定されたものとみなされます(388条)。もうひとつが抵当建物使用者の引渡猶予で、抵当権者に対抗できない賃貸借により抵当建物を使用収益する者のうち競売手続の開始前から使用収益する者等は、買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは建物を引き渡すことを要しません(395条1項)。

    この節の要点

    • 抵当権は占有を移転しない担保(369条1項)。だから住み続けながら借りられる。
    • 順位は登記の前後(373条)。フラット35は第1順位を要求する。
    • 利息は満期となった最後の2年分に限って抵当権を行使できる(375条)。

    重要事項説明でローンはどう扱われるか

    35条1項12号の説明義務

    不動産取引の実務で住宅ローンが宅建業法と交わるのが、重要事項説明です。宅地建物取引業法35条1項12号は、説明すべき事項として次を挙げています。

    代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置。

    この号は二つの要素からできています。ひとつが「あっせんの内容」、もうひとつが「あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」です。宅建業者が買主に融資をあっせんする場合、どの金融機関のどういう条件のローンかという内容だけでなく、そのローンが不成立になったときにどうなるのかまで説明しなければならないという構造になっています。

    条文が「代金又は交換差金に関する」と限定していることにも注意してください。売買と交換の場面を想定した規定であり、条文の文言上、貸借の代金に関する記述にはなっていません。35条の記載事項全体の並びは35条書面の記載事項一覧、区分所有建物で追加される項目は区分所有建物の重要事項説明にまとめています。

    ローン特約と「成立しないときの措置」

    35条1項12号が求める「成立しないときの措置」の実務的な受け皿が、売買契約に置かれるいわゆるローン特約です。買主が予定していた融資の承認を得られなかった場合に、売買契約を解除できる、あるいは契約が当然に効力を失う、という定めを置くものです。

    法的な性格は特約の書きぶりで変わります。一定期日までに融資承認が得られないことを解除条件とする形なら、条件成就により契約は当然に効力を失います。解除権を留保する形なら、買主が期間内に解除の意思表示をする必要があります。手付解除や債務不履行解除とは別の解除原因であり、通常は違約金や損害賠償を伴わず、受領済みの手付金は返還されるのが一般的な設計です。

    手付による解除は宅建業者が自ら売主となる場合の規制と絡みます(手付の額の制限と解除)。債務不履行を理由とする解除の要件は債務不履行と解除で扱っています。ローン特約による解除はこれらのいずれとも別物で、資金調達の失敗という買主に帰責性のない事由に備えるものだ、と位置づけを分けて覚えてください。

    取引全体の中でどのタイミングにローンの審査と実行が入るかは、不動産売買の流れ不動産売買の流れで時系列に整理しています。

    この節の要点

    • 35条1項12号は「あっせんの内容」と「不成立のときの措置」の二本立て。
    • ローン特約は「不成立のときの措置」の実務的な受け皿。
    • 手付解除・債務不履行解除とは別の解除原因として区別する。

    住宅ローン控除の枠組み

    根拠は租税特別措置法

    住宅ローン控除は、正式には住宅借入金等特別控除といい、租税特別措置法41条などにもとづく制度です。住宅ローンを利用して自ら居住する住宅を取得等した場合に、年末のローン残高に一定の率を乗じた額を所得税額から控除します。所得控除ではなく税額控除である点が、この制度の効きの強さの理由です。

    制度の骨格として押さえるべき要件を挙げます。国税庁タックスアンサーNo.1211-1(令和7年4月1日現在の法令等にもとづく記載)によれば、控除額は年末残高等に0.7%を乗じて計算します。控除期間は認定住宅等について13年間、その他の住宅については令和5年12月31日までに建築確認を受けたものなど一定の場合に10年間とされています。

    借入金については、10年以上にわたり分割して返済する方法になっていることが要件です。床面積は原則50㎡以上で、特例居住用家屋については40㎡以上50㎡未満に該当する場合があります。合計所得金額は原則2,000万円以下、特例居住用家屋の場合は1,000万円以下です。そして住宅の新築等の日から6か月以内に居住の用に供していることが必要です。

    数値は改正が頻繁である

    控除率、控除期間、借入限度額、対象となる住宅の区分は、税制改正のたびに見直されてきた領域です。特に借入限度額は住宅の環境性能等の区分ごとに設定され、入居する年によっても変わります。

    したがって、この記事に書いた数値も令和7年4月1日現在の国税庁の記載にもとづくものであり、実際に適用を受けるときは国税庁のタックスアンサーおよび最新の税制改正内容を必ず確認してください。控除額の計算方法や適用要件の詳細は所得税の住宅ローン控除にまとめています。

    住宅を取得すると、控除以外にも取得時・保有時・譲渡時それぞれに税が関わります。全体像は不動産にかかる税金の全体像、宅建試験の税分野の横断整理は宅建試験の税金を横断整理、保有時の固定資産税の特例は固定資産税を安くする方法を参照してください。

    この節の要点

    • 根拠は租税特別措置法41条等。所得控除ではなく税額控除。
    • 償還期間10年以上、床面積原則50㎡以上、合計所得金額原則2,000万円以下、6か月以内の入居。
    • 率と限度額は改正が頻繁。適用時は国税庁の最新情報を確認する。

    借り換えと繰上返済をどう考えるか

    借り換えは新しい契約を結び直すこと

    借り換えとは、別の金融機関で新たに住宅ローンを組み、その資金で既存のローンを一括返済することです。感覚としては「乗り換え」ですが、法的には既存の債務を弁済し、新たな金銭消費貸借契約を締結するという二つの行為の組み合わせです。

    したがって、新規に借りるときと同じ手続きが必要になります。新しい金融機関の審査を受け直し、新たに抵当権を設定し、既存の抵当権は弁済によって被担保債権が消滅するため抹消登記を行います。抵当権設定登記と抹消登記には登録免許税と司法書士報酬がかかり、金融機関によっては事務手数料や保証料も発生します。

    判断の枠組みはシンプルです。借り換えによって減る利息の総額と、借り換えに要する費用の合計を比較する。ここで比較すべきは金利の差そのものではなく、残高と残存期間を踏まえた利息総額の差です。残高が小さかったり残存期間が短かったりすると、金利差があっても費用を回収できないことがあります。

    繰上返済は元金を直接減らすこと

    繰上返済は、約定の返済とは別に元金を直接返済することです。利息は「残高 × 利率」で決まるので、元金を前倒しで減らせば、それ以降に発生するはずだった利息が丸ごと消えます。繰上返済の効果は、返済期間の早い時期ほど大きくなります。残高が大きく残存期間が長いほど、消える利息の総量が大きいからです。

    繰上返済には二つの型があります。期間短縮型は返済額を維持したまま返済期間を縮めるもので、利息の削減効果が大きくなります。返済額軽減型は返済期間を維持したまま毎回の返済額を下げるもので、削減効果は期間短縮型より小さいかわりに月々のキャッシュフローが改善します。同じ額を繰上返済しても、どちらを選ぶかで結果が変わります。手数料の有無や最低金額の設定は商品により異なります。

    前節で見た変動金利の5年ルール・125%ルールとの関係も押さえておいてください。金利上昇局面で返済額が据え置かれると元金の減りが遅くなりますが、返済額の据置は元金の減少を止めるだけで繰上返済を妨げるものではなく、繰上返済はその滞留を直接解消する手段になります。

    試験での出題ポイント

    住宅金融支援機構(問46)の問われ方

    宅建試験では、住宅金融支援機構が税・その他の分野で出題されます。この分野は登録講習修了者が免除を受ける問46から問50までに含まれるため、免除を受けない受験者にとっては確実に取りにいく問題になります。免除制度そのものは5問免除(登録講習)制度、免除を受けない場合の対策は免除科目5問の攻略法で扱っています。

    問われ方には型があります。

    第一に、直接貸付けの範囲です。「機構は、一般の住宅の建設に必要な資金の貸付けを業務としている」といった記述が誤りとして出ます。13条1項5号から11号までの列挙にない一般の住宅取得資金は、直接貸付けの対象ではありません。判断の手順は、その資金使途が災害・密集市街地の合理的土地利用・マンションの共用部分や更新・子育て世帯や高齢者向け賃貸住宅・省エネ改良のいずれかに当たるかを確認することです。

    第二に、買取型の主体関係です。「機構が直接借入者に融資を行い、その債権を証券化する」という記述は誤りです。融資を実行するのは民間金融機関で、機構が行うのは13条1項1号の貸付債権の譲受けです。誰が貸したのか、誰が買い取ったのかを分けて読む必要があります。

    第三に、住宅融資保険の受益者です。保険金が支払われるのは借入者ではなく金融機関です。「借入者が返済不能になった場合に借入者に保険金が支払われる」という記述は誤りになります。

    第四に、団信の効果です。保険金は債務の弁済に充当されます(13条1項12号)。遺族に現金が支払われる制度ではありません。

    第五に、フラット35の金利の適用時点です。適用されるのは申込時ではなく資金受取時の金利です。

    数値要件については、前述のとおり商品条件であり改定されます。数値の暗記より、条文構造と主体関係の理解を優先してください。

    抵当権(権利関係)の問われ方

    抵当権は権利関係の定番論点です。住宅ローンの文脈で問われやすいのは、順位(373条)、被担保債権の範囲(375条の最後の2年分)、法定地上権の成立要件(388条)、明渡猶予(395条の6か月)です。特に法定地上権は、抵当権設定時に土地と建物が同一所有者に属していたかという時点の判断が引っかけになります。

    宅建業法(35条)の問われ方

    35条1項12号については、「あっせんの内容」だけを説明すれば足りるかのような記述が誤りとして出ます。不成立のときの措置まで説明事項に含まれることが条文の眼目です。また、37条書面の記載事項との区別も問われます。35条は契約前の説明、37条は契約後に交付する書面という性格の違いを押さえてください。

    この節の要点

    • 機構の問題は「誰が貸したか」「列挙に入るか」「誰が保険金を受け取るか」の三点で解ける。
    • 抵当権は373条・375条・388条・395条の数字と要件を確定させる。
    • 35条1項12号は二本立て。片方だけの記述は誤り。

    覚え方・整理の仕方

    機構は「支援か、補完か」で二分する

    13条1項の号を丸暗記しようとすると挫折します。4条の文言に戻ってください。条文は支援(貸付債権の譲受け等)と補完(一般の金融機関による融通を補完するための災害復興建築物等への貸付け)を書き分けています。

    そこで、選択肢を読んだらまず「これは機構が民間を後押しする話か、それとも民間が手を出しにくい領域を機構が埋める話か」を判定します。一般の住宅取得は前者なので、機構は買い取るだけ。災害復興やマンションの共用部分改良は後者なので、機構が直接貸す。この二分法で大半の選択肢が処理できます。

    直接貸付けの対象は「災害・まち・マンション・子育てと高齢者・省エネ」の五つで束ねると思い出しやすくなります。裏返せば、この五つに当たらない普通の家の購入資金は直接貸付けの対象外です。

    三つの「保険」を混同しない

    機構の業務には保険が三種類関係します。混同が起きやすいので、誰を守るかで分けてください。

    住宅融資保険(13条1項3号)は金融機関を守る保険です。貸倒れリスクを機構が引き受けます。団体信用生命保険(13条1項12号)は借入者と遺族を守る仕組みで、保険金は債務の弁済に充当されます。そして火災保険はフラット35の利用条件として求められるもので、担保物件そのものを守る保険です。「金融機関・借入者・建物」と受益の対象を三つ並べれば取り違えません。

    返済方式は「何を一定にするか」だけ

    元利均等と元金均等の違いは、名前がそのまま答えになっています。元利均等は「元金+利息」を一定にする、元金均等は「元金」を一定にする。一定にするものが違えば、動くものも違います。

    そこから先は自動的に導けます。元金均等は元金の減りが最初から一定なので平均残高が小さく、利息総額が小さい。そのかわり初回の返済額は最大になる。元利均等は支払額が一定で家計管理がしやすいかわりに、初期は利息の取り分が大きく元金が減りにくい。暗記すべきは名前の意味だけで、あとは導出できます。

    数字は「誰がいつ決めたか」で層を分ける

    住宅ローンの数字は三層に分かれます。

    法律が決めた数字は動きにくい層です。抵当権の最後の2年分(375条)、明渡猶予の6か月(395条)、住宅ローン控除の償還期間10年以上(租税特別措置法41条等)。試験で問われるのは主にここです。

    税制改正で動く数字が中間層です。控除率、控除期間、借入限度額。年度と出典を確認して使います。

    機構や金融機関が商品条件として決める数字が最も動く層です。フラット35の融資限度額や床面積、総返済負担率。実際、令和7年12月23日の公表で融資限度額と床面積の要件が動きました。

    どの層の数字かを意識すれば、暗記の優先順位と、確認が必要な場面が自動的に決まります。

    理解度チェッククイズ

    問1 住宅金融支援機構は、一般の住宅の建設または購入に必要な資金について、申込者に対して直接貸付けを行うことを主たる業務としている。

    答え:×。独立行政法人住宅金融支援機構法4条は、機構の目的として、一般の金融機関による資金の融通を支援するための貸付債権の譲受け等の業務を行うことと、一般の金融機関による融通を補完するための災害復興建築物の建設等に必要な資金の貸付けの業務を行うことを書き分けています。一般の住宅取得資金について機構が行うのは13条1項1号の貸付債権の譲受けであり、融資を実行するのは民間金融機関です。直接貸付けは13条1項5号から11号までに列挙された災害復興、災害予防、合理的土地利用建築物やマンションの共用部分の改良、マンションの更新、子育て世帯・高齢者向け賃貸住宅、省エネ改良などに限られます。

    問2 住宅融資保険は、住宅ローンの借入者が返済不能になった場合に、その借入者に対して機構が保険金を支払う制度である。

    答え:×。住宅融資保険(機構法13条1項3号、住宅融資保険法)は、民間金融機関の貸倒れリスクを機構が引き受ける仕組みであり、保険金が支払われるのは金融機関です。借入者を保護する制度ではありません。借入者側に効くのは団体信用生命保険(同項12号)で、こちらは支払われる保険金等を貸付けに係る債務の弁済に充当する仕組みです。

    問3 変動金利型の住宅ローンでいわゆる5年ルールと125%ルールが適用される場合、金利が上昇しても返済額の増加が抑えられるため、支払う利息の総額も抑えられる。

    答え:×。5年ルールは返済額の見直しを5年ごとに限る仕組み、125%ルールは見直し後の返済額を従前の125%までとする仕組みで、いずれも支払額を平準化するだけで債務を減免しません。各回の利息は残高に適用金利を乗じて計算されるため、金利が上がれば利息額は増えます。返済額が据え置かれれば元金に回る額が減り、元金の減りが遅くなります。利息が返済額を上回れば元金は減らず、支払いきれない分は未払利息として繰り延べられます。なお、これらのルールは法律上の制度ではなく商品性の問題で、すべての金融機関が採用しているわけではありません。

    問4 同一の不動産に複数の抵当権が設定されている場合、抵当権の順位は各抵当権設定契約を締結した日の前後によって決まる。

    答え:×。民法373条は「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による」と定めています。契約日ではなく登記の前後です。フラット35が借入対象となる住宅およびその敷地に機構を抵当権者とする第1順位の抵当権の設定を求めているのも、登記上の順位を確保するためです。

    問5 宅地建物取引業者は、重要事項説明において、代金に関する金銭の貸借のあっせんを行う場合、そのあっせんの内容を説明すれば足り、あっせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置まで説明する必要はない。

    答え:×。宅地建物取引業法35条1項12号は「代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」と定めており、二つの要素をともに説明事項としています。この「成立しないときの措置」に対応する実務上の定めが、売買契約に置かれるローン特約です。

    まとめ

    • 返済方式は「何を一定にするか」の違いにすぎません。元利均等は元金と利息の合計を一定にし、元金均等は元金を一定にします。同条件なら元金均等のほうが平均残高が小さく利息総額も小さくなりますが、初期の負担は重くなります。
    • 変動金利の5年ルールと125%ルールは商品性の仕組みであり、支払いを平準化するだけで負担を減らすものではありません。返済額が据え置かれる間に元金の減りが遅れ、未払利息が生じうる点まで理解しておく必要があります。
    • 住宅金融支援機構法4条は「支援」と「補完」を書き分けており、13条1項1号の貸付債権の譲受けが証券化支援業務の中核、5号から11号が限定列挙された直接貸付け、3号の住宅融資保険は金融機関を守る保険、12号が団信です。フラット35の金額・面積要件は商品条件であり、令和7年12月23日公表の改定で融資限度額は1億2,000万円、一戸建て等の床面積下限は50㎡へ見直されました。
    • 抵当権は占有を移転しない担保(民法369条1項)で、順位は登記の前後(373条)、利息は最後の2年分(375条)。宅地建物取引業法35条1項12号は、あっせんの内容と不成立のときの措置の両方を説明事項としています。

    住宅金融支援機構、抵当権、35条書面の各論点は、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで分野をまたいで演習できます。

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