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印紙税の課税文書一覧|宅建の出題パターン

税・その他 読了 約38分

印紙税は取引ではなく文書に課される税です。課税文書の判定手順、1号・2号・17号の区別、記載金額の決め方、過怠税までを条文根拠つきで解説します。

目次

    この記事は、宅建試験の「税・その他」で問われる印紙税を、税額の暗記ではなく課税の仕組みから整理するものです。不動産に関わる税の全体像は不動産に関する税金の全体像、国税と地方税を横断した整理は宅建試験の税金を横断整理にあります。

    印紙税で出題されることは、実はほとんど一つの性質から導かれます。印紙税は取引に課される税ではなく、文書に課される税だということです。同じ売買をしても、契約書を作らなければ課税されません。契約書を2通作れば2通とも課税されます。国と私人が1通の契約書を共同で作ると、どちらが保存するかで課税されたりされなかったりします。これらはすべて、課税物件が文書であることの帰結です。以下では、その性質から順に、判定手順・号の区別・記載金額・納付と制裁までを条文根拠つきで追います。

    なお、宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。本記事は令和8年度に合わせ、2026年4月1日時点で施行されている印紙税法(昭和42年法律第23号)および租税特別措置法(昭和32年法律第26号)の条文を前提に書いています。

    課税物件は取引ではなく文書である

    条文が「文書」と書いている

    印紙税法2条は、次のように定めています。

    別表第一の課税物件の欄に掲げる文書には、この法律により、印紙税を課する。
    ――印紙税法2条

    主語は「文書」です。「不動産の譲渡」でも「請負」でもありません。別表第一(課税物件表)の第1号に掲げられているのも「不動産、鉱業権、貯留権……又は営業の譲渡に関する契約書」であって、譲渡そのものではないのです。

    この一語の違いが、印紙税を他の税から決定的に切り離します。不動産取得税は不動産の取得という事実に課され、登録免許税は登記という行為に課されます。どちらも、書面があるかどうかで結論が変わりません。ところが印紙税は、まさに書面があるかどうかで結論が変わる税です。登録免許税と印紙税の基礎で2つの税を並べているのも、同じ不動産取引の場面に登場しながら課税の対象がまったく違うからです。

    契約書を作らなければ課税されない

    口頭で売買契約を締結し、契約書をいっさい作成しなかった場合、印紙税は課されません。契約は民法上有効に成立していますし、代金も動きます。しかし課税物件である文書が存在しないため、課税のしようがないのです。

    これは印紙税に固有の帰結です。宅建業法37条は、宅建業者が売買契約を成立させたときに書面を交付すべきことを定めていますから(37条書面の記載事項)、業者が関与する取引では実際には書面が作られます。しかし、それは宅建業法上の義務であって、印紙税法が課税のために書面を要求しているわけではありません。ここを混同すると、「宅建業者が媒介した売買には必ず印紙税がかかる」といった誤った一般化に流れます。

    契約書を2通作れば2通とも課税される

    売主と買主がそれぞれ1通ずつ保管するために契約書を2通作成した場合、その2通のいずれもが課税文書です。1通分の印紙で足りるということはありません。契約は1個でも、文書は2個だからです。

    課税物件が取引であればこうはなりません。取引は1個なのですから、1回課税して終わりのはずです。文書に課税するからこそ、文書の数だけ課税されます。この論理は素直に押さえておくと、応用が利きます。

    写しは常に非課税とは限らない

    では、1通だけ正本を作り、もう一方はコピーを保管する場合はどうか。単なる複写にとどまるものであれば、課税文書には当たりません。しかし、その写しに当事者双方の署名押印があるもの、あるいは正本と相違ない旨の証明が付されているものは、それ自体が契約の成立を証明する目的で作成された文書と評価され、課税文書として扱われることがあります。

    「コピーだから非課税」と暗記していると、この形の出題で崩れます。判定基準は紙が原本か複写かではなく、その文書が契約の成立等を証明する目的で作成されたものかどうかです。ここでも問われているのは文書の性質であって、取引の実質ではありません。

    電磁的記録には貼付という行為が観念できない

    印紙税法8条1項は、課税文書の作成者は「当該課税文書に……印紙を……はり付ける方法により、印紙税を納付しなければならない」と定めています。納付の方法そのものが、紙の存在を前提に組み立てられています。

    電子契約は電磁的記録として作成され、紙の文書が交付されません。国税庁は、電磁的記録により作成されたものについては印紙税を課さないという取扱いを示しており、実務上も電子契約に印紙は不要とされています。不動産取引の電子化が進む背景の一つがここにあります(IT重説と書面電子化ITを活用した重要事項説明)。

    ただし試験対策としては、「電子だから非課税」と結論だけを覚えるのではなく、「課税物件が文書であり、納付方法が貼付である以上、電磁的記録は制度の枠外にある」という順序で理解しておくべきです。理由まで押さえていれば、電子契約を紙に出力して交付した場合はどうか、という一歩踏み込んだ問いにも対応できます。

    課税文書かどうかを判定する順序

    三つの関門を順に通す

    ある文書が課税文書に当たるかどうかは、次の順序で判定します。

    第一に、印紙税法別表第一の課税物件の欄に掲げられているかどうか。掲げられていなければ、そこで終わりです。第二に、その号の非課税物件の欄に該当しないかどうか。第1号文書であれば契約金額1万円未満、第17号の1文書であれば受取金額5万円未満などが非課税物件として掲げられています。第三に、印紙税法5条各号の非課税文書に当たらないかどうか。5条は、別表第一の非課税物件の欄に掲げる文書、国・地方公共団体または別表第二に掲げる者が作成した文書、別表第三の上欄の文書で同表下欄の者が作成したもの、の三つを非課税としています。

    この三段階を素通りしたものだけが課税文書であり、その作成者に納税義務が生じます(3条1項)。順序を意識しておくと、「非課税」という言葉が二つの意味で使われていることに気づけます。号ごとの非課税物件(金額が小さいなど)と、作成者に着目した5条の非課税とは、別の話です。

    名称ではなく実質で判定する

    課税物件表に「契約書」と書かれているとき、その意味は日常語より広く取られています。課税物件表の適用に関する通則5が定義を置いています。

    この表の第一号、第二号、第七号及び第十二号から第十五号までにおいて「契約書」とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実……を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。
    ――印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則5

    読み取るべき点が四つあります。

    一つ目は、名称を問わないこと。「覚書」「合意書」「確認書」という表題でも、内容が不動産の譲渡に関する契約の成立を証するものであれば第1号文書です。逆に「契約書」という表題でも、課税物件表に掲げられていない内容であれば課税されません。

    二つ目は、予約を含むこと。括弧書きで「契約(その予約を含む。)」と明記されています。不動産売買の予約契約書は第1号文書です。

    三つ目は、成立だけでなく更改・変更・補充の事実を証する文書も含むこと。変更契約書が課税されるのはここに根拠があります。

    四つ目は、当事者の一方のみが作成する文書、署名を欠く文書も含みうること。念書や請書がその例です。注文書や申込書と題された文書であっても、実質的に契約の成立を証明するものであれば契約書に当たります(国税庁タックスアンサーNo.7117「契約書の意義」)。

    契約の消滅だけを証する文書は課税されない

    通則5が挙げているのは、成立・更改・変更・補充の四つです。契約の消滅だけを証明する文書、たとえば解約合意書は、この四つのいずれにも当たりません。したがって課税されません。国税庁も同旨の取扱いを示しています。

    これは細かい論点に見えますが、通則5の文言を丁寧に読んでいるかどうかを試す良い題材です。契約書の定義が広いことばかりが強調されがちですが、広いなりに輪郭はあります。輪郭の外にあるものを一つ知っておくと、定義の意味がはっきりします。

    号の体系と、宅建で問われる三つの号

    課税物件表は第1号から第20号までの20類型を掲げています。宅建試験で問われるのは、そのうち実質的に第1号・第2号・第17号の三つ、周辺として第7号です。

    第1号文書は四つの物件からなる

    第1号は一つの類型ではなく、物件名の欄に四つが並んでいます。実務では上から順に第1号の1文書、第1号の2文書と呼ばれます。

    物件名1は、不動産、鉱業権、貯留権、二酸化炭素の貯留事業に関する法律2条8項に規定する試掘権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書です。土地・建物の売買契約書、交換契約書、贈与契約書がここに入ります。

    物件名2は、地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書です。土地の賃貸借契約書、借地権の譲渡契約書がここに入ります(借地権の基本)。

    物件名3は、消費貸借に関する契約書です。金銭消費貸借契約書がこれで、住宅ローンの契約書は第1号文書として課税されます(住宅ローンの基礎)。売買契約書とローン契約書は別々に課税される、という感覚を持っておくと実務問題にも強くなります。

    物件名4は、運送に関する契約書です。宅建試験で問われることはまずありません。

    四つのうち宅建で使うのは1・2・3です。とくに1と2の違い、すなわち「譲渡」と「設定」の違いは重要です。物件名1は譲渡だけを掲げており、賃貸借は入っていません。土地の賃貸借が課税されるのは、物件名2が別に「土地の賃借権の設定」を掲げているからです。

    第1号の2文書の記載金額は権利金であって賃料ではない

    土地の賃貸借契約書が課税文書だとして、記載金額は何になるのか。ここが引っかけどころです。

    記載金額は、地上権または土地の賃借権の設定・譲渡の対価たる金額、すなわち契約に際して相手方に交付し、後日返還されることが予定されていない権利金などの金額です。後日返還される保証金や敷金、契約成立後の使用収益の対価である賃料は含まれません(国税庁タックスアンサーNo.7101)。

    月額賃料20万円、期間20年、敷金200万円、権利金300万円という土地賃貸借契約書があったとして、記載金額は300万円です。賃料総額の4,800万円ではありませんし、敷金を足すわけでもありません。「賃料を年額や総額に引き直して記載金額とする」という選択肢が出たら誤りです。

    理由は明快で、第1号の2文書が課税しているのは賃借権の「設定」という事実を証する文書だからです。設定の対価でない金額は、その文書が証すべき事項に係る金額ではありません。敷金や保証金が入らないのも、返還が予定されている以上、対価ではないからです。敷金・礼金の扱いで見るとおり、敷金は担保として預かる金銭であって対価ではない、という民法上の性質がそのまま印紙税にも反映されています。

    第2号文書は請負に関する契約書

    第2号は請負に関する契約書です。建物の建築工事請負契約書がこれに当たります。物件名は「請負に関する契約書」の一言で、定義の欄では職業野球の選手や映画の俳優などの役務提供契約を請負に含める旨が定められています。

    宅建試験で第2号が効いてくるのは、第1号との区別を問われるときです。土地付き建物を分譲する場合、土地の売買契約書は第1号、建物の建築工事請負契約書は第2号になります。同じ一つの不動産プロジェクトでも、法律関係が譲渡か請負かで号が分かれます。請負と委任の区別そのものは委任と請負の違いで扱っていますが、印紙税ではその区別が税額表の違いに直結します。

    第17号文書は受取書

    第17号は金銭または有価証券の受取書、つまり領収書です。物件名の欄が二つに分かれています。物件名1が「売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書」、物件名2が「1に掲げる受取書以外のもの」です。前者は受取金額に応じた累進的な税額、後者は一律200円です。

    売上代金とは、定義の欄によれば、資産を譲渡しもしくは使用させること(当該資産に係る権利を設定することを含む)または役務を提供することによる対価をいい、手付けを含みます。不動産の売買代金の領収書、賃料の領収書はいずれも売上代金に係る受取書です。手付金の領収書も、定義に「手付けを含み」と明記されているとおり売上代金に含まれます(手付金等の保全措置)。

    非課税物件の欄には三つが掲げられています。記載された受取金額が5万円未満の受取書、営業に関しない受取書、有価証券や第8号・第12号・第14号・第16号の文書に追記した受取書です。

    このうち宅建で問われるのが「営業に関しない受取書」です。個人が自宅を売却して代金を受け取り、領収書を作成した場合、その受取書は営業に関しないものとして非課税です。同じ5,000万円の領収書でも、宅建業者が自ら売主として作成すれば課税され、個人が自宅を売って作成すれば非課税になります。金額ではなく、誰がどういう立場で作成したかで結論が変わります。

    金額の境界にも注意が必要です。第17号の非課税は「5万円未満」であって「5万円以下」ではありません。ちょうど5万円の領収書は課税されます。第1号・第2号の非課税が「1万円未満」であることと合わせて、境界の言葉づかいを正確に覚える必要があります。

    相殺の領収書は課税されない

    売掛金と買掛金を相殺し、その事実を証するために「領収書」と題する文書を作成した場合、実際には金銭も有価証券も動いていません。第17号文書は金銭または有価証券の「受取書」ですから、受領の事実がない以上、課税文書には当たりません(国税庁タックスアンサーNo.7126)。

    ただし、相殺による決済である旨が文書上明らかにされていなければ、通常の領収書として扱われます。一部相殺の場合は、相殺による旨が明示された部分の金額が記載金額から除かれます。

    ここでも効いているのは同じ論理です。課税されるのは文書ですが、その文書が課税物件表の定義に当てはまるかどうかは、文書に何が書かれているかで決まります。実際に金銭が動いていないという実質が、文書上に現れていなければ、印紙税の世界では反映されません。

    第7号文書と、課税物件表に載っていない文書

    第7号は「継続的取引の基本となる契約書」で、一通につき4,000円です。ただし、契約期間の記載があるもののうち、その期間が3か月以内であり、かつ更新に関する定めのないものは除かれます。特約店契約書や代理店契約書、銀行取引約定書などがこれに当たります。金額にかかわらず定額であることと、3か月・更新なしの除外要件が押さえどころです。

    一方、課税物件表のどこにも掲げられていない文書は、いくら重要な文書であっても課税されません。宅建の場面で重要なのは次の三つです。

    抵当権の設定に関する契約書。抵当権設定登記には登録免許税が課されるのに、抵当権設定契約書に印紙税は課されません(抵当権の基本)。同じ抵当権をめぐって、登記という行為には課税し、契約書という文書には課税しない。二つの税の課税物件が違うことが、これほどはっきり出る場面はありません。

    委任に関する契約書。委任状も課税されません。同じ理由で、宅建業者が締結する媒介契約書も課税文書に当たりません(媒介契約の種類と規制)。媒介は委任の性格を持つ契約だからです。

    そして、建物の賃貸借契約書。これは次節で単独に扱います。

    建物の賃貸借契約書はなぜ課税されないのか

    条文が土地としか書いていない

    印紙税で最も出題されるのがこの一点です。土地の賃貸借契約書は課税され、建物の賃貸借契約書は課税されません。

    理由は、第1号の物件名2が「地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」としか書いていないからです。建物の賃借権は掲げられていません。そして課税物件表の他のどの号にも、建物の賃貸借契約書は現れません。掲げられていないものは課税されない。それだけです。

    この論理を「条文がそう書いているから」で止めずに、もう一段だけ踏み込んでおくと記憶が安定します。地上権と土地の賃借権は、いずれも他人の土地を使用する権利であり、設定にあたって権利金という一時金の授受を伴うのが通例でした。つまり、権利の設定という資本的な取引としての性格を持ちます。これに対して建物の賃貸借は、賃料の対価として建物を使わせる継続的な役務提供に近く、一時金を対価とする権利設定とは経済的な姿が異なります。課税物件表が土地のみを掲げているのは、こうした取引の性質の違いを反映したものと理解できます。

    なお、借地借家法の世界では土地と建物の賃貸借がかなり共通の規律に服します(借地借家法の全体像賃貸借契約の注意点)。民法・借地借家法では並ぶものが、印紙税では分かれる。科目をまたいだこのズレそのものが出題の狙い目です。

    賃料の領収書は課税される

    建物の賃貸借契約書が非課税だからといって、建物賃貸借に関する文書がすべて非課税になるわけではありません。

    家賃を受け取って領収書を作成すれば、それは第17号の1文書です。第17号の定義の欄は、売上代金を「資産を譲渡し若しくは使用させること……又は役務を提供することによる対価」と定めています。建物を使用させることの対価である賃料は、まさにここに当たります。したがって、5万円以上の家賃の領収書を賃貸業を営む者が作成すれば課税されます。

    契約書は非課税、領収書は課税。この非対称は、課税物件が文書であって取引ではないという原則の、最もわかりやすい表れです。取引に課税する税であれば、建物賃貸借という一つの取引に対する扱いが文書ごとに変わることはありません。

    記載金額をどう決めるか

    税額は多くの号で記載金額に連動します。何が記載金額になるかは、課税物件表の適用に関する通則4が定めています。宅建で問われるのは次のパターンです。

    同一の号に係る金額が二つ以上あるとき

    通則4イは、一の文書に二以上の記載金額があり、それらが同一の号に該当する文書により証されるべき事項に係るものである場合、その合計額を記載金額とすると定めています。土地1,000万円、建物2,000万円と書き分けられた売買契約書の記載金額は3,000万円です。高いほうを取るのでも、別々に判定するのでもありません。

    交換契約書

    不動産の交換契約書は、第1号の1文書(不動産の譲渡に関する契約書)です。記載金額の決め方は、契約書に何が書かれているかで分かれます。

    双方の不動産の価額がそれぞれ記載されている場合、記載金額は高いほうの金額です。合算するのでも差額を取るのでもありません。等価交換で双方が同額なら、その額が記載金額です。

    交換差金の額だけが記載されている場合は、その交換差金が記載金額になります。1億円の土地と9,000万円の土地を交換し、差金1,000万円と記載されていれば、記載金額は1,000万円です。

    同じ交換という取引でも、契約書の書き方によって記載金額が10倍違ってきます。取引に課税するのではなく文書に課税する税である以上、こうなるほかありません。

    贈与契約書

    不動産の贈与契約書も、不動産の譲渡に関する契約書として第1号文書に該当します。しかし贈与は無償の契約であり、譲渡の対価となる金額が存在しません。したがって記載金額のない契約書として扱われ、税額は200円です。

    贈与する不動産の固定資産税評価額や時価が契約書に書かれていても、それは対価ではないため記載金額にはなりません。ここは贈与税と相続税の基本と併せて押さえると効果的です。贈与税では評価額が課税標準の出発点になるのに、印紙税では評価額をいくら書いても200円のまま。税ごとに何を課税の手がかりにしているかが違う、ということがはっきりします。

    変更契約書は増額と減額で分かれる

    通則4ニの定めが、そのまま出題されます。

    契約金額等の変更の事実を証すべき文書について、当該文書に係る契約についての変更前の契約金額等の記載のある文書が作成されていることが明らかであり、かつ、変更の事実を証すべき文書により変更金額……が記載されている場合……には、当該変更金額が変更前の契約金額等を増加させるものであるときは、当該変更金額を当該文書の記載金額とし、当該変更金額が変更前の契約金額等を減少させるものであるときは、当該文書の記載金額の記載はないものとする。
    ――印紙税法別表第一 課税物件表の適用に関する通則4ニ

    増額なら増加額が記載金額、減額なら記載金額なし。5,000万円の売買を6,000万円に変更する契約書の記載金額は、変更後の総額6,000万円ではなく差額の1,000万円です。5,000万円を4,000万円に減額する契約書は、差額1,000万円が記載金額になるのではなく、記載金額のない契約書として200円です。

    ここで見落としやすいのが、条文が二つの前提を置いていることです。第一に、変更前の契約金額等の記載のある文書が作成されていることが明らかであること。第二に、変更金額が記載されているか、変更前後の金額が記載されていて変更金額を明らかにできること。この前提が満たされない場合、たとえば変更前の契約書の存在が明らかでない場合には、通則4ニは適用されず、変更後の金額が記載金額になります。「減額なら常に200円」と単純化していると、この形の出題に対応できません。

    消費税額が区分記載されている場合

    契約書に消費税額等が区分して記載されている場合、または税込価格と税抜価格の両方が記載されていることにより消費税額等が明らかである場合は、その消費税額等は記載金額に含めません。これは消費税導入時から続く国税庁の取扱いです。

    「売買代金5,500万円(うち消費税500万円)」と記載されていれば、記載金額は5,000万円です。これに対して、単に「売買代金5,500万円」とだけ記載され消費税額が明らかでない場合は、5,500万円が記載金額になります。

    なお、土地の譲渡には消費税が課されません。したがって土地のみの売買契約書に消費税額が区分記載される場面は原則としてなく、この論点が効いてくるのは建物を含む取引です。消費税と不動産の関係は不動産に関する税金の全体像で整理しています。

    単価と数量から計算できる場合

    通則4ホ(一)は、文書に記載されている単価および数量、記号その他によりその契約金額等の計算をすることができるときは、その計算により算出した金額を記載金額とすると定めています。総額が書かれていなくても、計算できるなら記載金額があることになります。

    さらに通則4ホ(二)は、第1号または第2号の文書に、見積書や注文書など他の文書の名称・発行日・記号・番号などの記載があることにより、当事者間で契約金額が明らかであるとき、または計算できるときは、その金額を記載金額とすると定めています。契約書本体に金額を書かず「別紙見積書のとおり」とだけ書いても、その見積書を特定できる記載があれば記載金額があるものとして扱われます。

    「金額が書いていないから記載金額なし」で反射的に200円と答えると誤ります。通則4ホは、金額を書かないことによる回避を封じる規定です。

    記載金額がないことと非課税は違う

    以上のどれにも当てはまらず、契約金額を計算することができない課税文書は、記載金額のない契約書として扱われます。第1号文書および第2号文書の場合、この税額は一通につき200円です。課税物件表の課税標準及び税率の欄に「契約金額の記載のない契約書 一通につき 二百円」と明記されています。

    「記載金額がないから非課税」ではありません。非課税になるのは、第1号・第2号では記載金額が1万円未満のとき、第17号の1では受取金額が5万円未満のときです。金額が書かれていない場合と、書かれた金額が少額である場合とは、まったく別の扱いです。この二つを取り違えさせる出題は定番です。

    一つの文書が二以上の号に当たるとき

    通則2と通則3が所属を決める

    一通の契約書に、土地の売買と建物の建築工事請負の両方が書かれていたらどうなるか。通則2は、一の文書に二以上の号に掲げる文書により証されるべき事項が併記または混合して記載されている場合、その文書は当該各号に掲げる文書に該当するとします。そのうえで通則3が、どの号に所属するかを決めます。

    通則3の骨格は次のとおりです。

    イ 第1号または第2号に掲げる文書と、第3号から第17号までに掲げる文書とに該当する文書は、第1号または第2号に掲げる文書とする。ただし二つの例外があります。第1号または第2号で契約金額の記載のないものと第7号とに該当する文書は第7号とする。第1号または第2号と第17号とに該当する文書のうち、売上代金に係る受取金額(100万円を超えるものに限る)の記載があり、その受取金額が記載された契約金額を超えるもの、または契約金額の記載のないものは、第17号とする。

    ロ 第1号と第2号とに該当する文書は、第1号とする。ただし、契約金額の記載があり、かつその契約金額を第1号に係る部分と第2号に係る部分に区分することができる場合において、第1号に係る契約金額が第2号に係る契約金額に満たないときは、第2号とする。

    ハ 第3号から第17号までのうち二以上の号に該当する文書は、そのうち最も号数の少ない号に掲げる文書とする。ただし売上代金に係る受取金額(100万円を超えるものに限る)の記載があるときは第17号とする。

    ニ・ホ 第18号から第20号までの通帳・判取帳との関係を定めます。宅建では扱いません。

    通則3ロが宅建で効く

    宅建で実際に問われうるのはロです。土地の売買と建物の建築工事請負を一通にまとめた契約書は、第1号と第2号の両方に該当します。原則は第1号です。号数の少ないほうが勝つ、と覚えられます。

    例外が働くのは、金額を区分でき、かつ第1号側の金額が第2号側の金額より小さいときです。土地1,000万円、建築工事3,000万円と区分記載されていれば、第2号文書になります。土地3,000万円、建築工事1,000万円なら第1号のままです。

    なぜこんな規定があるのか。第1号と第2号は税額表の刻みが微妙に違い、また租税特別措置法91条の軽減措置も号ごとに別々に置かれています。どちらの号として扱うかで税額が変わりうる以上、どちらを本体と見るかを金額の大小で決めるのが合理的だ、という判断です。

    号数の少ないほうが強い、という原則

    通則3を通して見ると、イ・ロ・ハのいずれも「号数の少ない号を優先する」を基調としています。例外はすべて、第7号(定額4,000円)と第17号(売上代金100万円超)という、放置すると課税漏れや不均衡が生じる場面に限って置かれています。

    原則を「小さい号が勝つ」と一本で覚え、例外を「7号と17号だけが逆転を起こす」と覚える。これで通則3の構造は再現できます。

    納税義務者と「作成者」の意味

    作成者が納め、共同作成なら連帯する

    印紙税法3条1項は、課税文書の作成者がその作成した課税文書につき印紙税を納める義務を負うと定めます。同条2項は、一の課税文書を二以上の者が共同して作成した場合、これらの者が連帯して納める義務を負うとします。

    売買契約書を売主と買主が共同で作成すれば、両者が連帯納税義務者です。どちらか一方が全額を納付すれば義務は消滅します。実務で売主・買主が印紙代を折半するのは当事者間の取り決めであって、国に対する関係では連帯債務です。

    4条が「作成したものとみなす」場面

    3条だけでは処理できない場面のために、4条が作成のみなし規定を置いています。宅建で重要なのは5項です。

    次条第二号に規定する者(以下この条において「国等」という。)と国等以外の者とが共同して作成した文書については、国等又は公証人法……に規定する公証人が保存するものは国等以外の者が作成したものとみなし、国等以外の者(公証人を除く。)が保存するものは国等が作成したものとみなす。
    ――印紙税法4条5項

    前提として、5条2号により、国・地方公共団体または別表第二に掲げる者が作成した文書は非課税です。そこに4条5項を重ねると、次のようになります。

    国と私人が売買契約書を2通作成し、1通ずつ保存したとします。私人が保存する1通は、国等が作成したものとみなされます。国等が作成した文書ですから5条2号により非課税です。国が保存する1通は、国等以外の者、つまり私人が作成したものとみなされます。私人が作成した文書ですから課税されます。

    直感と逆になります。「国のものだから国の分が非課税だろう」と考えると、ちょうど反対の答えを選ぶことになります。この逆転そのものが典型的な出題です。

    なぜ逆転するのか。契約書を2通作って1通ずつ持ち合うとき、自分の手元に残る文書は、相手方が自分に対して差し入れたものと見るのが実態に近い、という発想です。私人の手元にある文書は国が私人に交付したもの、国の手元にある文書は私人が国に差し入れたもの。この見方を条文にしたのが4条5項です。理由まで理解しておけば、本番で逆転を思い出せなくても再構成できます。

    なお公証人が保存するものも、国等以外の者が作成したものとみなされます。公証人は国等の側に位置づけられているためです。

    参考として、被災者の特例は逆転しない

    租税特別措置法91条の2は、自然災害の被災者が代替建物の取得等のために作成する不動産譲渡契約書等を、災害発生の日から5年を経過する日までの間に作成されるものについて非課税としています。その2項は共同作成の場合を定めており、非課税被災者が保存するものは非課税被災者が作成したものとみなし、それ以外の者が保存するものはその者が作成したものとみなします。

    つまり、被災者が保存する1通が非課税で、相手方が保存する1通は課税されます。4条5項の交差構造とは逆に、保存者と作成者が素直に対応します。同じ「共同作成した文書をどう割り振るか」という問題でも、政策目的が違えば規定の組み方が変わる。4条5項の逆転がわざとそう作られたものだと確認するための対比として押さえておくと、記憶が固くなります。宅建試験で91条の2そのものが問われることは考えにくいので、あくまで理解の補助です。

    納付、消印、過怠税、還付

    作成の時までに貼る

    印紙税法8条1項は、課税文書の作成者が、課されるべき印紙税に相当する金額の印紙を、当該課税文書の作成の時までに貼り付ける方法で納付しなければならないと定めます。期限は「作成の時まで」です。申告書を出して後日納めるのではありません。

    消印は印章でも署名でもよい

    8条2項は、印紙を貼り付ける場合には、政令で定めるところにより、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならないと定めます。

    その政令が印紙税法施行令5条です。「課税文書の作成者は、法第八条第二項の規定により印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない」と定めています。

    三点が読み取れます。第一に、印章でも署名でもよいこと。「消印は必ず押印によらなければならない」という記述は誤りです。第二に、作成者本人でなくても、代理人・使用人その他の従業者の印章または署名でよいこと。第三に、文書と印紙の彩紋とにかけて判明に消す必要があること。印紙の上だけに押しても、文書にまたがっていなければ消印として足りません。

    共同で作成した文書について、消印は当事者の一方が行えば足ります。全員が消印しなければならないわけではありません。

    印紙貼付以外の納付方法

    8条は「次条から第十二条までの規定の適用を受ける場合を除き」と留保しています。大量に課税文書を作成する事業者のために、四つの特例が用意されているためです。

    9条は税印による納付の特例です。税務署長に対し、印紙の貼付に代えて税印を押すことを請求できます。ただし記載金額が明らかでないなど印紙税の保全上不適当と認めるときは、税務署長は請求を棄却できます。

    10条は印紙税納付計器の使用による納付の特例です。国税庁長官の指定を受けた計器を、税務署長の承認を受けて設置し、納付印を押す方法です。

    11条は書式表示による申告および納付の特例です。様式または形式が同一で、毎月継続して作成されるもの、または特定の日に多量に作成されるものについて、税務署長の承認を受け、金銭で納付できます。この場合は申告書の提出が必要で、毎月分をその翌月末日までに提出します。

    12条は預貯金通帳等に係る特例です。課税期間は4月1日から翌年3月31日までと定められています。

    宅建試験でこれらが正面から問われることは稀ですが、「印紙税は必ず印紙の貼付によって納付する」という断定が誤りであることは押さえておく価値があります。

    過怠税は3倍、自主的な申出なら1.1倍

    20条が制裁を定めます。1項は、納付すべき印紙税を作成の時までに納付しなかった場合、納付しなかった印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額、すなわち本来の税額の3倍を過怠税として徴収するとします。

    2項は軽減規定です。作成者から所轄税務署長に対し、印紙税を納付していない旨の申出があり、かつその申出が調査があったことにより過怠税の決定があるべきことを予知してされたものでないときは、納付しなかった印紙税の額とその10パーセントに相当する金額との合計額、すなわち1.1倍とされます。要件は「自主的に申し出たこと」と「調査による決定を予知していないこと」の両方です。調査の通知を受けてから慌てて申し出ても軽減されません。

    3項は消印を怠った場合です。印紙を貼り付けたが消さなかった場合、消されていない印紙の額面金額に相当する金額を過怠税として徴収します。貼るには貼ったので印紙代は払っていますが、それとは別に同額を取られます。つまり実質的な負担は2倍です。貼らなかった場合の3倍と、消さなかった場合の額面相当額。この二つを混同しないようにします。

    4項も見落とされがちです。1項または3項の場合において、過怠税の合計額が1,000円に満たないときは1,000円とされます。200円の印紙を貼らなかったときの過怠税は600円ではなく1,000円です。

    印紙を貼らなくても契約は有効

    印紙税で最も重要な結論がこれです。印紙が貼られていない契約書であっても、その契約自体は有効です。

    印紙税の納付は税法上の義務であり、契約の成立や効力とは関係がありません。制裁は過怠税であって、契約が無効になるわけでも、その契約書が裁判で証拠として使えなくなるわけでもありません。契約の成立要件は民法が定めるものであって(意思表示)、印紙税法が要件を追加しているわけではないからです。この点は繰り返し出題されます。

    なお、罰則も別に用意されています。22条1号は、8条1項の規定による相当印紙の貼付けをしなかった者を1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処するとし、23条1号は、8条2項に違反した者、つまり消印しなかった者を30万円以下の罰金に処するとしています。21条は、偽りその他不正の行為により印紙税を免れた者を3年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、または併科するとします。

    過誤納があれば還付されるが、過怠税は戻らない

    14条1項は、印紙税に係る過誤納金の還付を受けようとする者は、その過誤納の事実につき納税地の所轄税務署長の確認を受けなければならないと定めます。課税文書でない文書に誤って印紙を貼ってしまった場合や、必要額を超える印紙を貼ってしまった場合には、確認を受けて還付を受けられます。

    ただし同項ただし書により、11条・12条の申告書に係る印紙税として納付されたもの、および20条に規定する過怠税として徴収された過誤納金は、この確認の対象外です。過怠税として取られたものは、後から「やはり課税文書ではなかった」と主張して確認を受ける手続には乗りません。

    貼りすぎたら戻る、貼らなければ3倍取られ、取られた分は戻らない。納付が印紙という物理的な手段で行われるがゆえの、この非対称も文書課税の帰結です。

    税額そのものはどう押さえるか

    宅建試験で税額表を丸暗記する必要はありません。求められるのは、本則と特例の関係、非課税の境界、号ごとの刻みの起点の違いです。数字の扱い方は税金の計算問題計算問題の総まとめの考え方と同じで、覚える数字を絞ることが先です。

    第1号文書の本則

    課税物件表が定める第1号文書の本則は、契約金額の記載のある契約書について、10万円以下が200円、10万円超50万円以下が400円、50万円超100万円以下が1,000円、100万円超500万円以下が2,000円、500万円超1,000万円以下が1万円、1,000万円超5,000万円以下が2万円、5,000万円超1億円以下が6万円、1億円超5億円以下が10万円、5億円超10億円以下が20万円、10億円超50億円以下が40万円、50億円超が60万円です。契約金額の記載のない契約書は一通につき200円。非課税物件は、契約金額の記載のある契約書のうち契約金額が1万円未満のものです。

    第2号文書の本則

    第2号文書の本則は、100万円以下が200円、100万円超200万円以下が400円、200万円超300万円以下が1,000円、300万円超500万円以下が2,000円、500万円超1,000万円以下が1万円、1,000万円超5,000万円以下が2万円、5,000万円超1億円以下が6万円、以降は第1号と同じ刻みです。契約金額の記載のない契約書は200円、非課税は1万円未満。

    第1号と比べると、下のほうの刻みだけが違います。第1号は10万円で最初の段が切り替わるのに、第2号は100万円まで200円のままです。500万円超からは両者が完全に一致します。「下だけ違う、上は同じ」と覚えるのが実際的です。

    第17号の1文書の本則

    売上代金に係る受取書で受取金額の記載のあるものは、100万円以下が200円、100万円超200万円以下が400円、200万円超300万円以下が600円、300万円超500万円以下が1,000円、500万円超1,000万円以下が2,000円、1,000万円超2,000万円以下が4,000円、2,000万円超3,000万円以下が6,000円、3,000万円超5,000万円以下が1万円、5,000万円超1億円以下が2万円、1億円超2億円以下が4万円、2億円超3億円以下が6万円、3億円超5億円以下が10万円、5億円超10億円以下が15万円、10億円超が20万円です。売上代金に係るもの以外の受取書は一通につき200円。非課税は5万円未満です。

    契約書と領収書では刻みがまったく違います。5,000万円の売買であれば、契約書は本則6万円(軽減後3万円)、領収書は2万円。同じ取引の同じ金額でも、文書の種類ごとに別の税率表が適用されます。

    租税特別措置法91条の軽減措置

    租税特別措置法91条1項は、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成される不動産譲渡契約書のうち、記載された契約金額が10万円を超えるものについて、印紙税の税率を軽減しています。10万円超50万円以下が200円、50万円超100万円以下が500円、100万円超500万円以下が1,000円、500万円超1,000万円以下が5,000円、1,000万円超5,000万円以下が1万円、5,000万円超1億円以下が3万円、1億円超5億円以下が6万円、5億円超10億円以下が16万円、10億円超50億円以下が32万円、50億円超が48万円です。

    同条2項は、同じ期間に作成される建設工事請負契約書(建設業法2条1項に規定する建設工事の請負に係る契約に基づき作成されるものに限る)のうち、契約金額が100万円を超えるものについて軽減します。100万円超200万円以下が200円、200万円超300万円以下が500円、300万円超500万円以下が1,000円、500万円超1,000万円以下が5,000円、以降は1項と同額です。

    押さえるべきは三点です。第一に、期限のある特例であること。令和9年3月31日までに作成されるものが対象で、この日付は延長を重ねてきたものです。第二に、対象が限定されていること。第1号文書のうち不動産の譲渡に関する契約書、第2号文書のうち建設工事の請負に関する契約書だけです。土地の賃貸借契約書や金銭消費貸借契約書は同じ第1号でも軽減の対象外です。第三に、下限があること。不動産譲渡契約書は10万円超、建設工事請負契約書は100万円超が対象で、それ以下は本則のままです。

    多くの帯で軽減後は本則のおおむね半分ですが、5億円超の帯では16万円対20万円、32万円対40万円、48万円対60万円と、圧縮率が緩やかになります。「一律半額」ではありません。

    試験での出題ポイント

    建物か土地かの取り違え

    最頻出です。建物の賃貸借契約書を課税文書とする選択肢、土地の賃貸借契約書を非課税とする選択肢の両方が作られます。第1号の物件名2が「地上権又は土地の賃借権」としか書いていないという条文の事実に戻れば、迷いません。

    賃料を記載金額とする誤り

    土地の賃貸借契約書について、月額賃料や賃料総額を記載金額として税額を計算させる選択肢が作られます。記載金額は権利金など後日返還されない金額であり、賃料や敷金は含まれません。

    文書の数を取引の数と混同させる誤り

    契約書を2通作成しても1通分の印紙で足りるとする選択肢、写しには常に印紙が不要とする選択肢。どちらも、課税物件が文書であるという原則から誤りと判断できます。

    記載金額の判定パターン

    減額の変更契約書について差額を記載金額とする、交換契約書について双方の価額を合算する、贈与契約書について評価額を記載金額とする、消費税額が区分記載されているのに税込額を記載金額とする。いずれも定番です。加えて、記載金額のない契約書を非課税とする誤りにも注意が必要です。

    国等との共同作成の逆転

    国または地方公共団体と私人が共同で作成した文書について、国等が保存するものを非課税、私人が保存するものを課税とする選択肢が出ます。4条5項は逆です。保存する者と作成したものとみなされる者が入れ替わる、と覚えます。

    過怠税と契約の効力

    印紙を貼らなかったために契約が無効になる、契約書が証拠として使えなくなる、という選択肢は誤りです。数字については、貼付を怠った場合が3倍、自主的な申出があれば1.1倍、消印を怠った場合が消されていない印紙の額面金額。この三つを取り違えさせる出題も定番です。

    消印の方法

    消印は押印に限られるとする選択肢、作成者本人が行わなければならないとする選択肢、共同作成なら全員が消印しなければならないとする選択肢。いずれも施行令5条および8条2項の解釈として誤りです。

    号の取り違え

    領収書を第1号文書とする、建設工事請負契約書を第1号文書とする、といった単純な入れ替えもあります。売買契約書は1号、請負契約書は2号、領収書は17号。この三つは即答できるようにしておきます。

    覚え方・整理の仕方

    「文書に課税する」から全部を導く

    印紙税の論点は、丸暗記のリストではなく一つの原則からの演繹として持っておくのが最も効率的です。

    課税物件が文書であるから、文書を作らなければ課税されない。文書が2通あれば2通課税される。写しでも文書として機能するなら課税されうる。電磁的記録は文書でないから課税されない。建物賃貸借の契約書は課税物件表に載っていないから課税されないが、賃料の領収書は17号に載っているから課税される。相殺の領収書は、金銭の受領という17号の要件を満たさないから課税されない。

    このように、結論の一つ一つを原則から引き出せるようにしておくと、覚える量が劇的に減ります。逆に、結論だけをリストで覚えていると、少しひねられただけで手が止まります。

    号数は「小さいほうが強い」

    通則3の所属決定は、原則として号数の小さい号が勝ちます。1号と2号なら1号、1号や2号と3号以下なら1号や2号、3号から17号のあいだなら最も小さい号。

    例外は第7号と第17号が絡む場面だけです。契約金額の記載がない1号・2号と7号なら7号、売上代金100万円超が絡めば17号。「小さいほうが勝つ。ただし7号と17号だけが逆転を起こす」と二段で覚えます。

    変更契約書は「増えるか減るか」

    増額は増加額が記載金額、減額は記載金額なし。増えたことは文書に書いてある、減ったことは記載金額としては書いていないものと扱う、と言い換えると忘れにくくなります。ただし、変更前の契約書の存在が明らかであることが前提だという条件も一緒に覚えておきます。

    金額の境界は三つだけ

    第1号・第2号の非課税は1万円未満。第17号の1の非課税は5万円未満。記載金額のない1号・2号は200円。宅建で必要な金額の境界は、実質的にこの三つです。あとは軽減措置の対象が10万円超(不動産譲渡)と100万円超(建設工事請負)であることを足せば足ります。

    過怠税は「3・1.1・額面」

    貼らなければ3倍、自分から申し出れば1.1倍、消さなければ額面相当額。三つを並べて音で覚えます。1,000円未満なら1,000円という下限も、余裕があれば足しておきます。

    保存者で決まる、ただし入れ替わる

    国等との共同作成は、「保存者を見る。ただし作成者は入れ替わる」と覚えます。自分の手元にある文書は相手が差し入れたもの、という実態のイメージを添えておくと、本番で方向を間違えません。

    印紙税は税・その他の中でどう位置づけるか

    税・その他の分野は8問前後で、うち税が2問程度です。印紙税は登録免許税と並んで国税側の出題候補であり、毎年出るわけではありません。学習の優先度としては、不動産取得税・固定資産税といった地方税、譲渡所得の特例を先に固めたうえで、印紙税は本記事の原則と数字の境界だけを短時間で回す形が効率的です。全体の配分は税・その他の攻略戦略を参照してください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 土地の賃貸借契約書は印紙税の課税文書に該当するが、建物の賃貸借契約書は課税文書に該当しない。

    答えを見る **○ 正しい。** 印紙税法別表第一の第1号文書の物件名2は「地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」であり、土地の賃借権の設定に関する契約書は課税されます。これに対し建物の賃借権は課税物件表のどこにも掲げられていないため、建物の賃貸借契約書は課税文書に該当しません。

    Q2. 建物の賃貸借契約書が非課税である以上、その建物の賃料を受け取った際に作成する領収書にも印紙税は課されない。

    答えを見る **× 誤り。** 第17号文書の定義の欄は、売上代金を「資産を譲渡し若しくは使用させること……又は役務を提供することによる対価」と定めており、建物を使用させることの対価である賃料はこれに当たります。したがって受取金額5万円以上の家賃の領収書を賃貸業を営む者が作成すれば課税されます。契約書が非課税であることと、領収書が課税されることは矛盾しません。課税物件が取引ではなく文書だからです。

    Q3. 国と株式会社Aが土地の売買契約書を2通作成し、それぞれ1通ずつ保存した場合、国が保存する契約書には印紙税が課されないが、株式会社Aが保存する契約書には印紙税が課される。

    答えを見る **× 誤り。** 逆です。印紙税法4条5項により、国等が保存するものは国等以外の者が作成したものとみなされるため課税され、国等以外の者が保存するものは国等が作成したものとみなされるため、5条2号により非課税となります。株式会社Aが保存する契約書が非課税で、国が保存する契約書が課税されます。

    Q4. 契約金額5,000万円の土地売買契約を4,000万円に変更する契約書(変更前の契約書が作成されていることが明らかなもの)の記載金額は、差額の1,000万円である。

    答えを見る **× 誤り。** 課税物件表の適用に関する通則4ニは、変更金額が変更前の契約金額を減少させるものであるときは「当該文書の記載金額の記載はないものとする」と定めています。したがって記載金額のない契約書として一通につき200円です。増額変更の場合に増加額が記載金額になることと混同しないよう注意が必要です。

    Q5. 課税文書に印紙を貼り付けたが消印をしなかった場合、消されていない印紙の額面金額に相当する金額が過怠税として徴収される。

    答えを見る **○ 正しい。** 印紙税法20条3項の定めるとおりです。印紙を貼らなかった場合の過怠税が本来の税額の3倍(同条1項、自主的な申出があれば1.1倍。同条2項)であるのに対し、貼ったが消さなかった場合は額面金額相当額です。印紙代を払ったうえに同額を取られるため、実質的な負担は2倍になります。

    Q6. 不動産の贈与契約書は、贈与する不動産の固定資産税評価額が契約書に記載されている場合、その評価額を記載金額として印紙税額を判定する。

    答えを見る **× 誤り。** 不動産の贈与契約書は不動産の譲渡に関する契約書として第1号文書に該当しますが、贈与は無償契約であり譲渡の対価となる金額が存在しません。評価額が記載されていても、それは対価ではないため記載金額にはならず、記載金額のない契約書として一通につき200円となります。

    まとめ

    印紙税は、課税物件が取引ではなく文書であるという一点から組み立てられた税です。文書を作らなければ課税されず、2通作れば2通課税され、電磁的記録には課税されません。建物の賃貸借契約書が非課税で賃料の領収書が課税されるという一見ちぐはぐな結論も、この原則からまっすぐ導かれます。

    宅建で問われる号は、不動産の譲渡と土地の賃借権の設定を含む第1号、請負の第2号、受取書の第17号の三つです。記載金額の判定は、交換・贈与・変更契約書・消費税の区分記載という四つのパターンを、通則4の文言に沿って押さえます。納税義務者は作成者、共同作成なら連帯。国等との共同作成では保存者と作成者が入れ替わります。

    納付は作成の時までの貼付と消印によりますが、税印・納付計器・書式表示という特例もあります。制裁は貼付を怠れば3倍、自主的な申出があれば1.1倍、消印を怠れば額面金額相当額。そして、印紙を貼らなくても契約は有効です。

    よくある質問

    印紙税は毎年出題されますか

    税・その他の分野で税に割り当てられるのは例年2問程度で、印紙税はその候補の一つです。毎年出題されるわけではありませんが、出題されたときは本記事で扱った論点の範囲に収まります。学習量に対する得点効率は高い分野です。

    税額表は暗記すべきですか

    段階ごとの税額を全部覚える必要はありません。必要なのは、非課税の境界(第1号・第2号は1万円未満、第17号の1は5万円未満)、記載金額のない契約書が200円であること、軽減措置の対象と期限、そして第1号と第2号で下のほうの刻みだけが違うことです。具体的な金額を問う出題があるとしても、極端な帯を問うことは考えにくく、原則の理解が優先されます。

    軽減措置の期限が変わったらどうなりますか

    租税特別措置法91条の軽減措置は、これまで何度も延長されてきました。2026年4月1日時点では令和9年3月31日までの適用とされています。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されるため、受験年度の4月1日時点でどうなっているかを確認するのが正しい対応です。制度の骨格、すなわち「不動産譲渡契約書と建設工事請負契約書だけが対象で、期限のある特例である」という点は変わりません。

    電子契約が普及すると印紙税はどうなりますか

    現行法上、電磁的記録として作成され紙の文書が交付されない電子契約には印紙税が課されないという取扱いです。不動産取引の電子化が進めば、印紙税の対象となる文書は実務上減っていきます。ただし試験で問われるのは現行の印紙税法の枠組みであり、電子契約は「文書課税である印紙税の枠外にある」という位置づけで押さえておけば足ります。

    登録免許税との違いをどう整理すればよいですか

    課税物件が違います。登録免許税は登記という行為に、印紙税は文書という物に課されます。だから、抵当権設定登記には登録免許税がかかるのに抵当権設定契約書には印紙税がかからない、という非対称が生じます。2つを並べた整理は登録免許税と印紙税の基礎にあります。


    宅建試験AIブートラボのアプリでは、印紙税を含む「税・その他」の論点を肢別に演習できます。本記事で押さえた判定の順序を、実際の選択肢で確かめてみてください。

    読んだ内容を、税・その他の肢で確かめる

    税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。

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