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土地家屋調査士と宅建|重なる範囲と取得順序

関連資格・ダブルライセンス 読了 約24分

土地家屋調査士と宅建士が担当する局面の違い、試験で重なる科目、午前の部の免除の仕組み、取得順序の考え方を条文と公表データにもとづいて整理します。

目次

    この記事は、宅建士と土地家屋調査士という組み合わせに絞って、両者が担当する局面の違い、試験で重なる範囲、そして取得順序の設計を扱います。宅建と組み合わせる資格の全体像は宅建とダブルライセンス|相性の良い資格5選に、目的から選ぶ場合の考え方は宅建と組み合わせる資格一覧|目的別の選び方にまとめてあります。

    結論を先に述べます。この2つは競合しません。土地家屋調査士は不動産の「表示に関する登記」を担い、宅建士は「取引」を担うので、同じ土地の同じ案件のなかで担当する場面がずれています。試験の面では民法と不動産登記法が重なりますが、同じ科目名でも見ている方向が逆です。そして両試験は同じ日に実施されるため、同じ年に両方を受けることはできません。この3点が、順序を設計するうえでの前提になります。

    土地家屋調査士は何をする資格か

    土地家屋調査士法3条1項が定める8つの事務

    土地家屋調査士(以下「調査士」)の業務は、土地家屋調査士法3条1項が8つの号で列挙しています。条文の順に見ていきます。

    1号は「不動産の表示に関する登記について必要な土地又は家屋に関する調査又は測量」です。現地に出て測る仕事、資料を集めて調べる仕事がここに入ります。2号は「不動産の表示に関する登記の申請手続又はこれに関する審査請求の手続についての代理」で、依頼者に代わって法務局に登記を申請する部分です。3号は、その申請や審査請求のために法務局または地方法務局に提出する書類・電磁的記録の作成です。

    4号と5号は筆界特定の手続についての代理と、そのための書類・電磁的記録の作成です。6号は1号から5号までの事務についての相談。7号は「土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続についての代理」、8号はその相談です。

    こう並べると、調査士の仕事が「測る」「書く」「代理する」「相談に乗る」の4層でできていて、対象が一貫して不動産の表示に関する登記と筆界であることが見えてきます。所有権が誰に移ったか、抵当権がいくらで設定されたかという話は、この8つのどこにも出てきません。

    業務独占の範囲は1号から5号まで

    調査士が業務独占資格だと言われる根拠は、土地家屋調査士法68条(非調査士等の取締り)です。調査士会に入会している調査士または調査士法人でない者は、3条1項1号から5号までに掲げる事務を業とすることができません。ただし、他の法律に別段の定めがある場合は例外とされます。

    独占の範囲が1号から5号までであって、6号の「相談」が含まれていない点は正確に押さえてください。表示に関する登記の調査・測量・申請代理・書類作成・筆界特定代理が独占業務で、単なる相談に応じること自体は独占されていません。宅建士が顧客から「うちの土地、境界がはっきりしないんですが」と相談を受けて一般的な説明をすることは、この68条には触れません。

    筆界特定とADR代理

    3条1項4号・5号の筆界特定は、不動産登記法123条以下が定める制度です。同条1号は「筆界」を、表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点およびこれらを結ぶ直線と定義しています。同条2号の「筆界特定」は、その筆界の現地における位置を特定すること(位置を特定できないときはその位置の範囲を特定すること)です。

    ここで大事なのは、筆界が登記された時に決まった線であって、隣り合う所有者どうしの合意で動かせるものではない、という点です。所有権の及ぶ範囲としての境界(所有権界)は当事者の合意や取得時効で動きますが、筆界は動きません。この区別は、土地の売買で「隣と話がついているから大丈夫」という説明が通用しない理由でもあります。

    資格を得てから業務ができるまで

    68条が「調査士会に入会している調査士」と書いていることからわかるとおり、試験に合格しただけでは業務を行えません。土地家屋調査士法8条1項は、調査士となる資格を有する者が調査士となるには、日本土地家屋調査士会連合会に備える土地家屋調査士名簿に、氏名、生年月日、事務所の所在地、所属する土地家屋調査士会その他法務省令で定める事項の登録を受けなければならないと定めています。同条2項により、この名簿の登録は調査士会連合会が行います。

    さらに52条1項は、登録の申請または変更の登録の申請をする者は、その申請と同時に、申請を経由すべき調査士会に入会する手続をとらなければならないと定めています。同条2項により、入会の手続をとった者は登録または変更の登録の時に会員となります。登録と入会が同時に動く仕組みです。

    宅建士の場合も、試験の合格、都道府県知事の登録、宅建士証の交付という段階があり、合格しただけでは業務を行えないという構造は共通しています(宅建士の登録と宅建士証|合格後の手続き)。ただし登録先が違います。調査士の名簿は全国一本で調査士会連合会が管理するのに対し、宅建士の登録は試験を行った都道府県知事が行います。

    3条1項7号・8号のADR代理には、さらに条件が付きます。同条2項により、法務省令で定める法人が実施する研修で法務大臣が指定するものの課程を修了し、その申請にもとづいて法務大臣が能力を有すると認定し、かつ土地家屋調査士会の会員であること。この3つをすべて満たした調査士だけが行えます。しかも7号の業務は、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限って行えるとされています。調査士が単独で紛争解決の代理人になれるわけではありません。

    宅建士とはどの局面で分かれるか

    登記記録は表題部と権利部に分かれている

    不動産登記法12条は「登記記録は、表題部及び権利部に区分して作成する」と定めています。この一本の条文が、調査士と司法書士の分業の出発点です。

    表題部には不動産の物理的な状況、すなわち土地なら所在・地番・地目・地積、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積が記録されます。ここを扱うのが調査士です。権利部には所有権に関する事項(甲区)と所有権以外の権利に関する事項(乙区)が記録され、こちらを扱うのが司法書士です。登記記録の構造そのものについては不動産登記法|表示の登記と権利の登記の違い不動産登記簿の読み方|甲区・乙区の見方を初心者向けに解説で詳しく扱っています。

    宅建士が立つのは取引の場面

    宅建士の独占業務は、宅地建物取引業法が定める3つ、すなわち重要事項の説明(35条1項)、35条書面への記名(35条5項)、37条書面への記名(37条3項)です。いずれも取引が成立する前後の場面に置かれています。物件の物理的な状況を確定させる作業でも、権利変動を公示する作業でもありません。

    つまり、同じ一筆の土地をめぐって3つの資格が順番に登場します。調査士がその土地の輪郭を確定して表題部を整え、宅建士が売主と買主のあいだを取り持って契約を成立させ、司法書士が所有権移転を権利部に記録する。担当する時間帯と対象がずれているので、業務が食い合いません。ダブルライセンスの意味は、複数の局面を一人で引き受けられることにあります。

    補完関係が具体的に効く場面

    宅建士としてだけ動いていると、調査士に投げるしかない場面が繰り返し出てきます。逆に調査士としてだけ動いていると、案件が測量と登記で終わってしまい、その先の売買には関われません。両方を持つと、依頼者から見て「相談先が1つで済む」状態を作れます。この効果は、相続で取得した土地を売りたいというような、測量と売却が地続きになっている案件で最も大きくなります。開業の実務面は宅建で独立開業する|免許と保証金の要件を参照してください。

    試験範囲は何が重なるのか

    重なるのは民法と不動産登記法

    両試験で科目名として重なるのは、民法不動産登記法の2つです。宅建試験の「権利関係」には民法と不動産登記法が含まれ、調査士試験の午後の部にも民法と不動産登記法が出ます。数字で「何割重なる」と言うのは難しいのですが、どの科目が重なるかははっきりしています。

    重ならないほうも明確です。宅建側の宅地建物取引業法、法令上の制限(都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、農地法、宅地造成及び特定盛土等規制法、土地区画整理法)、税・その他は、調査士試験には出ません。調査士側の土地家屋調査士法と、記述式で問われる作図・面積計算は、宅建試験には出ません。

    同じ不動産登記法でも向きが逆

    科目名が同じでも、見ている方向が違います。ここが「重なっているのに思ったほど楽にならない」原因です。

    宅建試験の不動産登記法は、権利に関する登記が中心です。登記の対抗力、共同申請主義、仮登記の順位保全効といった、権利変動を公示する仕組みの側から問われます。仮登記については仮登記と本登記の違いとは?順位保全効と1号・2号仮登記で扱っています。

    これに対して調査士試験の不動産登記法は、表示に関する登記が中心です。誰が申請義務を負うのか、いつまでに申請しなければならないのか、どんな添付情報が要るのか、という手続の細部が問われます。たとえば不動産登記法37条1項は、地目または地積について変更があったときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が変更があった日から1月以内に変更の登記を申請しなければならないと定めています。47条1項は、新築した建物または区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者が、所有権取得の日から1月以内に表題登記を申請しなければならないとし、57条は、建物が滅失したときに表題部所有者または所有権の登記名義人が滅失の日から1月以内に滅失の登記を申請しなければならないとしています。

    宅建試験では、こうした「1月以内」の申請義務が主役になることはまずありません。逆に調査士試験では、こちらが主役です。宅建で不動産登記法を勉強したから調査士の不動産登記法は楽だ、とはならないのはこのためです。ただし、登記記録の構造、申請主義、登記事項証明書の読み方といった土台は共通なので、ゼロから始めるよりは入りやすい、という言い方が実態に近いはずです。

    民法の重なり方

    民法は、宅建試験のほうが範囲が広く、調査士試験のほうが範囲が狭い代わりに出題される領域が偏ります。調査士試験で問われやすいのは、所有権、共有、相隣関係、相続といった、土地の輪郭と帰属に関わる領域です。宅建試験は意思表示、代理、時効、債務不履行、契約不適合責任、抵当権、賃貸借と、取引に関わる領域まで含めて広く問われます。

    したがって、宅建の民法を仕上げてから調査士に進む場合、調査士側で新しく覚え直す民法は多くありません。逆方向、つまり調査士の民法から宅建に進む場合は、取引法の領域をまるごと足すことになります。この非対称は、あとで順序を考えるときに効いてきます。

    最大の違いは記述式

    宅建試験は四肢択一50問だけで構成されます。調査士試験には記述式があり、これが最大の違いです。午後の部の記述式は土地と建物の2問で、登記申請書を書き、与えられた座標値などから図面を作図し、面積を計算する作業が求められます。マークシートを塗る試験と、定規と電卓を使って図面を仕上げる試験とでは、必要な練習の質がまったく違います。通勤中に選択肢を読む学習では記述式は伸びません。机に向かってペンを動かすまとまった時間が要ります。

    試験の形式と午前の部の免除

    筆記と口述の二段構え

    土地家屋調査士法6条1項は、法務大臣が毎年1回以上調査士試験を行わなければならないとし、同条2項は「前項の試験は、筆記及び口述の方法により行う」と定めています。宅建試験にはない口述試験が最後にあります。

    同条3項は筆記試験の内容を2つに分けています。1号が「土地及び家屋の調査及び測量」、2号が「申請手続及び審査請求の手続」です。この1号が午前の部、2号が午後の部にあたります。同条4項により、口述試験は筆記試験に合格した者について、3項2号の事項に関する知識について行われます。

    午前の部が免除される4つの資格

    土地家屋調査士法6条5項1号は、測量士、測量士補、一級建築士、二級建築士となる資格を有する者について、申請により3項1号に掲げる事項についての筆記試験、つまり午前の部を免除すると定めています。免除の対象は測量士補だけではありません。すでに建築士を持っている人も、そのまま午前の部を免除できます。

    さらに見落とされやすいのが同項2号です。筆記試験に合格した者は、次回の試験の筆記試験と、その後に行われる試験における1号の筆記試験(午前の部)が免除されます。筆記に受かって口述で不合格になった場合や、筆記合格の翌年に事情があって受けられなかった場合の救済がここに用意されています。3号は、午前の部相当の知識および技能について法務大臣が認定した者を対象とする免除です。

    免除は自動ではなく「その申請により」行われるので、資格を持っているだけでは足りず、申請手続が必要です。

    令和7年度の実績

    法務省が公表した令和7年度土地家屋調査士試験の最終結果によれば、筆記試験は令和7年10月19日、口述試験は令和8年1月22日に実施され、受験者数は4,824人、合格者数は489人でした。合格率は約10.1パーセントになります。合格者の平均年齢は39.20歳、最低年齢は20歳、最高年齢は65歳と公表されています。

    筆記試験の合格点も同資料に示されています。午前の部を受験した者は、午前の部が満点100点中70.0点以上、かつ午後の部が満点100点中76.0点以上。午前の部を免除された者は、午後の部が満点100点中76.0点以上です。加えて基準点、いわゆる足切りがあり、午前の部は多肢択一式が満点60点中30.0点、記述式が満点40点中32.0点、午後の部は多肢択一式が満点50点中37.5点、記述式が満点50点中32.5点に達しない場合は、それだけで不合格とされました。記述式の基準点が満点50点中32.5点という水準は、記述式を捨てて択一で稼ぐ戦い方が成立しないことを意味します。

    比較のために宅建試験を見ると、不動産適正取引推進機構が公表した令和7年度の結果では、試験日は同じ令和7年10月19日、受験者数245,462人、合格者数45,821人、合格率18.7パーセント、合格判定基準は50問中33問以上の正解(登録講習修了者は45問中28問以上)でした。受験者の規模が50倍ほど違い、合格率も倍近い開きがあります。

    測量士補については、国土地理院が公表した令和7年の実施結果によれば、試験日は令和7年5月18日、測量士補試験の受験者は13,363名、合格者は6,837名で合格率は51.2パーセントでした。合格発表は同年6月26日です。午前の部の免除を取りに行くルートとして、この試験が使われる理由が数字からも見えます。

    同日実施という動かせない制約

    令和7年度の両試験がいずれも10月19日に実施されたことからわかるとおり、調査士試験の筆記と宅建試験は同じ日に行われます。したがって、同じ年に両方を受験することはできません。ダブルライセンスを狙う以上、最低でも2年計画になります。試験日程から逆算する計画の立て方は資格取得の順番|試験日程から逆算する計画にまとめてあります。

    実務でどう噛み合うか

    境界が確定していない土地を売るとき

    土地の売買で最初につまずくのが境界です。登記記録に地積が載っていても、それが現地の実測と一致している保証はありません。古い測量図しかない土地、そもそも地積測量図が備え付けられていない土地はいくらでもあります。

    ここで宅建士側の注意点を整理しておきます。境界そのものは、宅地建物取引業法35条1項が列挙する重要事項説明の法定事項には挙がっていません。しかし、隣地との間に境界をめぐる争いがあることを知りながら黙っていれば、宅建業法47条1号が禁じる「重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」にあたりうる場面が出てきます。同号ニは、宅地または建物の所在、規模、形質などであって相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるものを対象に含めているからです。物件調査で何を確認すべきかは不動産の物件調査の方法|重要事項説明に必要な調査で扱っています。

    実務では、売買契約で売主に境界明示義務を負わせる特約を置き、引渡しまでに境界確定測量を済ませる段取りを組むのが通例です。この測量と、必要に応じた地積更正登記が調査士の仕事になります。宅建士としてここまで見通せると、契約書に置くべき条項と引渡しまでのスケジュールを最初から設計できます。

    公図と地積測量図をどう読むか

    境界の話をするとき、必ず出てくるのが図面です。不動産登記法14条1項は「登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする」と定め、同条2項は、その地図が一筆または二筆以上の土地ごとに作成され、各土地の区画を明確にし、地番を表示するものだとしています。この14条1項の地図は、測量にもとづいて区画を正確に表したものです。

    ところが、同条4項は「第一項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる」と定めています。同条5項によれば、地図に準ずる図面は一筆または二筆以上の土地ごとに土地の位置、形状および地番を表示するものです。実務で「公図」と呼ばれているものの多くは、この4項の地図に準ずる図面にあたります。

    条文の書き方が示すとおり、地図に準ずる図面は14条1項の地図が備え付けられるまでの暫定的なものです。位置と形状と地番はわかりますが、区画を明確にするという2項の要請を満たすものではありません。公図だけを見て「この土地はこの形だ」と判断できないのは、この差によります。宅建士が物件調査で公図を取ったときに、それが14条1項の地図なのか4項の地図に準ずる図面なのかを確認する習慣があると、境界確定測量が必要かどうかの見立てが変わります。調査士の学習をしていると、この区別が体に入ります。

    一部だけ売るとき

    一筆の土地の一部だけを売る場合、そのままでは登記ができないので分筆が必要になります。不動産登記法39条1項は「分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない」と定めており、申請できる人が限られています。実際の申請書作成と測量は調査士が担います。

    分筆には前提として境界の確定が要るため、隣接地所有者との立会いが必要になり、これに時間がかかります。決済日を先に決めてから分筆に着手すると間に合わない、という事故が起きやすい場所です。宅建士が分筆の所要期間を体感として知っていると、媒介の段階で無理のない日程を組めます。

    なお、同条2項と3項は例外を定めています。2項は、申請がなくても一筆の土地の一部が別の地目となり、または地番区域を異にするに至ったときに登記官が職権で分筆の登記をしなければならないとするもの。3項は、14条1項の地図を作成するため必要があると認めるときに、表題部所有者または所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で分筆または合筆の登記をすることができるとするものです。

    建物を壊して更地で売るとき

    古家付きの土地を更地にして売る場合、建物を取り壊した後に滅失の登記が必要です。不動産登記法57条は、建物が滅失したときは表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定めています。1月以内という期限が条文に書かれている点に注意してください。取り壊したのに登記が残っている状態は、買主にとって不安材料になります。

    地目が実態と合っていないとき

    農地を宅地に転用した場合など、現況と地目が食い違っているときは地目変更の登記が必要です。不動産登記法37条1項が定めるとおり、地目または地積に変更があったときは変更があった日から1月以内に変更の登記を申請しなければなりません。なお、農地法上の転用許可そのものは登記とは別の手続で、農地法4条・5条の許可は行政庁に対して行うものです。宅建試験の法令上の制限で扱う農地法と、調査士が扱う地目変更登記は、同じ「農地を宅地にする」という出来事の別々の側面を見ています。土地の区画そのものを動かす制度としては土地区画整理法|仮換地と換地処分の仕組みもあわせて確認しておくと、土地の輪郭がどう変わりうるかの見取り図ができます。

    新築を売るとき、マンションを分譲するとき

    新築建物の表題登記は、不動産登記法47条1項により所有権取得の日から1月以内に申請しなければならず、これも調査士の仕事です。分譲マンションでは、各住戸を独立した不動産として登記する区分建物の表題登記が必要になり、一棟につき住戸の数だけ登記が発生します。デベロッパーの案件で調査士が関わる典型がここです。

    宅建士としてマンションの分譲販売に関わるなら、区分建物の登記記録がどう作られるかを知っていることは、そのまま重要事項説明の精度に返ってきます。専有部分の床面積が壁芯と内法のどちらで表示されているかという論点は、35条書面の記載事項とも直結します。詳細は35条書面の記載事項一覧|重要事項説明書に何を書くかを参照してください。

    登記の義務化が入口を増やしている

    近年の不動産登記法の改正は、権利に関する登記に申請義務を持ち込みました。76条の2第1項は、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、相続により所有権を取得した者が、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならないと定めています。同条2項は、その登記の後に遺産の分割があった場合に、相続分を超えて所有権を取得した者が分割の日から3年以内に登記を申請しなければならないとしています。2024年4月1日に施行された、いわゆる相続登記の義務化です。

    76条の5は、所有権の登記名義人の氏名もしくは名称または住所について変更があったときに、その変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないと定めています。こちらは2026年4月1日に施行されました。

    これらは権利に関する登記なので、申請代理そのものは司法書士の領域です。ただし、相続をきっかけに登記記録を確認した結果、表題部が現況と合っていないことが判明する、という流れは頻繁に起きます。建物が取り壊されているのに滅失の登記がされていない、地目が現況と違う、地積が実測と食い違う。そうなれば表示に関する登記の出番であり、その先に売却の相談が続けば宅建士の出番になります。義務化そのものは調査士の独占業務を増やすものではありませんが、登記記録を見直す機会を社会全体で増やしているという意味で、入口を広げています。

    取得の順序をどう考えるか

    制約は3つ

    順序を考えるうえで動かせない制約は3つです。第一に、調査士試験の筆記と宅建試験は同日実施なので、同年に両方は受けられません。第二に、午前の部の免除に使える測量士補試験は5月、調査士試験の筆記は10月なので、同じ年のうちに測量士補を取って調査士の午前免除に使う設計が可能です。第三に、調査士試験は記述式と口述があり、学習の性質が宅建とは違います。

    宅建を先に置く場合

    宅建を先に取ると、民法と不動産登記法の土台がある状態で調査士の学習に入れます。前述のとおり、調査士側の民法は宅建の民法の一部と重なる領域が多いので、この順序では民法の負担が軽くなります。不動産登記法は方向が変わりますが、登記記録の構造や申請主義といった土台は使えます。

    1年目に宅建、2年目の5月に測量士補、同年10月に調査士の筆記、翌年1月に口述、という組み方が素直です。測量士補を挟むぶん2年目の前半が埋まりますが、午前の部を免除できれば当日の負担が大きく変わります。すでに一級建築士または二級建築士を持っている人は、土地家屋調査士法6条5項1号によりそのまま午前の部を免除できるので、測量士補のステップは不要です。

    調査士を先に置く場合

    すでに測量会社や調査士事務所に勤めていて、測量と登記が日常の仕事になっている人は、調査士を先に置くほうが自然です。この場合、宅建で新しく足すのは宅地建物取引業法、法令上の制限、税・その他という、調査士試験には出てこない範囲です。民法と不動産登記法は土台があるので、実質的には宅建業法と法令上の制限に時間を集中させる形になります。

    ただし、宅建業法は50問中20問を占める最大の分野で、条文の細部を正確に覚えることが求められます。「不動産の実務をやっているから宅建は簡単だろう」という前提で入ると足をすくわれます。実務経験があっても、条文の期限や届出義務者を覚え直す作業は避けられません。

    記述式に必要なのは時間の質

    どちらの順序を選ぶにせよ、調査士の記述式対策には、まとまった時間を確保できる期間が要ります。宅建の学習はスキマ時間との相性が良い一方、作図と面積計算はそうはいきません。仕事の繁忙期と記述式の追い込み時期が重ならないように、年間の予定から逆算しておくことをすすめます。

    なお、土地家屋調査士法6条5項2号により、筆記試験に合格すれば次回の筆記試験が免除されます。筆記まで到達しておけば、翌年は口述に集中できるということです。1年で決めきれなかった場合の設計としても、この規定は知っておく価値があります。

    不動産の評価という別方向のステップアップを考えている場合は不動産鑑定士と宅建士の違い|ステップアップすべき?も比較材料になります。

    試験での出題ポイント

    ここでは、宅建試験を受ける立場から見て、調査士の学習範囲と接する論点がどう問われるかを整理します。

    表示に関する登記は宅建では深く問われない

    宅建試験の権利関係で出る不動産登記法は、対抗要件、共同申請主義、登記の有効要件、仮登記といった権利に関する登記が中心です。表示に関する登記の申請義務や添付情報が正面から問われることは多くありません。調査士の学習をしていると、この領域を過剰に深追いしてしまいがちですが、宅建試験の得点効率という観点では優先度が高くありません。

    区分建物と床面積の表示

    例外的に接点が濃いのが区分建物です。35条書面では専有部分の床面積が問題になり、登記記録上の床面積(内法)と分譲パンフレット上の床面積(壁芯)が食い違う、という論点が出ます。表題部の記録がどう作られるかを知っていれば、この食い違いの理由が構造的に理解できます。

    境界と私道

    35条1項3号は私道に関する負担を重要事項説明の法定事項としています。私道の負担は敷地の輪郭と直結するため、公図や地積測量図を読む力がそのまま効きます。境界そのものは法定事項ではありませんが、争いがあることを知りながら黙っていれば47条1号の問題になりうる、という整理は前述のとおりです。

    農地法と地目

    法令上の制限で出る農地法は、農地の判定を現況主義で行います。登記記録上の地目が「田」でも現況が宅地なら農地法の適用対象外、という論点です。地目変更登記の存在を知っていると、登記地目と現況地目がずれる状態が実際にあるという前提を持てるので、この論点が頭に入りやすくなります。

    覚え方・整理の仕方

    「表題部か権利部か」で担当者を判別する

    不動産登記法12条の一本を軸にすれば、誰の仕事かはほぼ判別できます。表題部の話なら調査士、権利部の話なら司法書士、そのどちらでもなく契約の話なら宅建士。分筆、地目変更、床面積の更正、建物滅失はすべて表題部なので調査士。所有権移転、抵当権設定、仮登記はすべて権利部なので司法書士。この振り分けができれば、実務でも試験でも迷いません。

    調査士の業務は「対象で覚える」

    土地家屋調査士法3条1項の8つの号を丸暗記するのは効率が悪いので、対象で束ねます。表示に関する登記が1号から3号、筆界特定が4号・5号、相談が6号、ADRが7号・8号。そして68条の独占は1号から5号まで、と付け足せば、独占の範囲まで一緒に覚えられます。

    「1月以内」は表示に関する登記の合図

    不動産登記法で「1月以内」という期限が出てきたら、それは表示に関する登記の申請義務です。地目・地積の変更が37条1項、建物の表題登記が47条1項、建物の滅失が57条。権利に関する登記には原則として申請義務も期限もありません(相続登記の義務化はこの原則の例外として設けられたものです)。期限の有無が、表示と権利を分ける目印になります。

    免除は「測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士」の4つ

    午前の部の免除資格を「測量士補だけ」と覚えている人が多いのですが、土地家屋調査士法6条5項1号は4つ挙げています。建築士を持っている人がこれを知らずに測量士補から始めるのは、時間の無駄になります。

    筆界と所有権界を混ぜない

    筆界は不動産登記法123条1号が定めるとおり、土地が登記された時にその境を構成するものとされた線です。当事者の合意では動きません。一方、所有権の及ぶ範囲としての境界は、合意や取得時効で動きます。「隣と話し合って境界を決めた」という状態は所有権界の合意であって、筆界を動かしたわけではない。この一点を押さえておくと、筆界特定制度が何のためにあるのかが理解できます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 土地の所有権移転登記は、土地家屋調査士の業務である。(○か×か)

    答えを見る ×です。所有権移転登記は登記記録のうち権利部(甲区)に関する登記であり、司法書士の業務です。土地家屋調査士法3条1項が列挙する調査士の業務は、いずれも「不動産の表示に関する登記」と「筆界特定」を対象としています。不動産登記法12条が「登記記録は、表題部及び権利部に区分して作成する」と定めており、調査士が扱うのは表題部の側です。土地の分筆、地目の変更、建物の表題登記や滅失の登記が調査士の担当になります。

    Q2. 土地家屋調査士試験の午前の部の免除を受けられるのは、測量士補となる資格を有する者に限られる。(○か×か)

    答えを見る ×です。土地家屋調査士法6条5項1号は、測量士、測量士補、一級建築士、二級建築士となる資格を有する者について、申請により午前の部(同条3項1号の「土地及び家屋の調査及び測量」に関する筆記試験)を免除すると定めています。4つの資格が対象です。また同項2号により、筆記試験に合格した者は次回の試験の筆記試験が免除されます。なお免除は「その申請により」行われるため、資格を持っているだけでは足りず、申請の手続が必要です。

    Q3. 土地家屋調査士試験の筆記試験と宅建試験は、同じ年に両方を受験することができる。(○か×か)

    答えを見る ×です。法務省が公表した令和7年度土地家屋調査士試験の最終結果によれば筆記試験は令和7年10月19日に実施され、不動産適正取引推進機構が公表した令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要によれば宅建試験の試験日も令和7年10月19日でした。同日実施であるため、同じ年に両方を受験することはできません。ダブルライセンスを目指す場合は最低でも2年計画になります。なお、午前の部の免除に使える測量士補試験は5月(令和7年は5月18日実施)なので、測量士補と調査士を同じ年に組み合わせる設計は可能です。

    Q4. 土地の一部を売却するために行う分筆の登記は、表題部所有者または所有権の登記名義人以外の者は申請することができない。(○か×か)

    答えを見る ○です。不動産登記法39条1項が「分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない」と定めています。ただし例外があり、同条2項により、申請がなくても一筆の土地の一部が別の地目となり、または地番区域を異にするに至ったときは登記官が職権で分筆の登記をしなければなりません。同条3項では、14条1項の地図を作成するため必要があると認めるときに、表題部所有者または所有権の登記名義人の異議がないときに限り、職権で分筆または合筆の登記をすることができるとされています。

    Q5. 隣接地の所有者との間で境界の位置について合意が成立すれば、筆界もその合意した位置に変更される。(○か×か)

    答えを見る ×です。不動産登記法123条1号は筆界を、表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点およびこれらを結ぶ直線と定義しています。登記された時に決まった線であり、当事者の合意で動かせるものではありません。合意によって動くのは所有権の及ぶ範囲としての境界(所有権界)です。筆界の現地における位置がわからない場合に、その位置を特定する手続が同条2号の筆界特定であり、その代理は土地家屋調査士法3条1項4号により調査士の業務とされています。

    まとめ

    土地家屋調査士と宅建士は、同じ不動産を扱いながら担当する局面が違います。調査士は土地家屋調査士法3条1項が定めるとおり表示に関する登記と筆界を、宅建士は宅地建物取引業法が定めるとおり取引を担います。不動産登記法12条の表題部と権利部という区分が、この分業の背骨です。

    試験の面で重なるのは民法と不動産登記法ですが、不動産登記法は宅建が権利に関する登記、調査士が表示に関する登記と向きが逆で、民法も調査士側は所有権・共有・相隣関係・相続に偏ります。最大の違いは記述式の有無で、作図と面積計算はスキマ時間では伸びません。

    順序の設計では、同日実施という制約、5月の測量士補で午前の部を取りに行けること、土地家屋調査士法6条5項1号の免除対象が測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士の4つであること、同項2号により筆記合格者は次回の筆記が免除されること、この4点を押さえておけば十分です。宅建から始める場合は、まず宅建業法と権利関係を確実に仕上げるところからになります。

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