宅地建物取引士の記名たくちたてものとりひきしのきめい
重要事項説明書(35条書面)と37条書面に、宅地建物取引士が自分の氏名を記載することです(35条5項・7項、37条3項)。つまり、書面の中身に取引の専門家が責任を持つことを、名前で示す仕組みです。
不動産会社で受け取る重要事項説明書と、契約の後に届く37条書面には、どちらにも「宅地建物取引士 氏名 ○○」という欄があり、取引士の名前が書かれています。これが宅地建物取引士の記名で、記名とは、自分の氏名を書面に記載することです。会社の代表者の名前ではなく、取引士の名前でなければなりません。書面の中身が正しいかを専門の資格者が確かめ、誰が責任を持つかを相手に分かるようにするための決まりです。以前は記名に加えて押印も必要でしたが、令和4年5月18日施行の改正で押印は不要になり、記名だけで足ります。

記名するのは取引士で、専任の取引士でなくてかまいません
35条5項は、35条書面の交付に当たって宅地建物取引士が記名しなければならないと定め、37条3項は、業者が37条書面を作成したときは宅地建物取引士をして記名させなければならないと定めています。どちらも「宅地建物取引士」とだけ書いていて、事務所に置く専任の取引士に限っていません。説明する取引士と記名する取引士が同じ人である必要もなく、35条書面に記名した取引士と37条書面に記名する取引士が別の人でもかまいません。37条書面の交付そのものは取引士でない従業者がしてもよく、取引士が受け持つのは記名で、37条書面の内容の説明は求められていません。
相手が業者でも、記名は省けません
相手方が宅地建物取引業者のとき、35条6項は取引士による説明を外しますが、同じ条の7項が、その場合も書面に取引士をして記名させなければならないと定めています。37条書面には業者間の例外がもともと置かれていません。説明は省けても、書面の中身に資格者が責任を持つことは、相手がプロでも変わらないという仕組みです。

業者が複数なら、それぞれの業者の取引士が記名します
一つの売買に売主の業者と媒介の業者が関わると、37条1項の交付義務はそれぞれの業者に掛かり、37条3項の「宅地建物取引業者は…記名させなければならない」もそれぞれの業者に掛かります。そのため、二つの業者が共同で一通の37条書面を作るときは、売主の業者の取引士と媒介の業者の取引士の両方が記名します。一方の業者の取引士の記名があっても、もう一方の業者の義務は果たされません。重要事項の説明も、35条1項が業者ごとに義務を課しているので、関与した業者のどれか一社に任せきりにはできません。

宅地建物取引業法 37条3項宅地建物取引業者は、前二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない。
試験ではこう問われる
- 35条書面・37条書面に記名する取引士は専任でなくてよい。「専任の取引士をして記名させなければならない」は誤り
- 37条書面に記名する取引士は、35条書面に記名した取引士と同じでなくてよい。37条書面の交付は取引士でない従業者が行ってもよい
- 相手方が宅地建物取引業者でも、35条書面・37条書面への取引士の記名は省略できない。代表者の記名で取引士の記名に代えることもできない
- 売主の業者と媒介の業者が共同で37条書面を作成したときは、両方の業者の取引士が記名する。一方の取引士の記名だけでは足りない
- 媒介契約書面には業者が記名押印し、取引士の記名は要らない。クーリング・オフを告げる書面にも取引士の記名は要らない
- 記名だけで足り、押印は要らない
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