違反転用に対する処分いはんてんようにたいするしょぶん
農地法4条又は5条の許可を受けずに農地を転用した者などに対し、都道府県知事等が、許可の取消し、工事その他の行為の停止、相当の期限を定めた原状回復その他違反を是正するため必要な措置を命ずることです(51条)。つまり、無断でつぶされた農地を元に戻させるための行政の命令で、これとは別に刑事の罰則もあります。
畑を買った会社が、許可を受けないまま土を入れて砂利を敷き、資材置き場にしてしまいました。農地は一度つぶすと、元の畑に戻すのに何年もかかります。農地法は、許可なく転用された農地について、都道府県知事等が工事を止めさせ、元の農地に戻すよう命ずることができると定めています。命令に従わなければ行政が代わりに元に戻して費用を取り立てることもでき、違反には重い罰則もあります。

命ずることができるのは、取消し、停止、原状回復です
51条1項は、都道府県知事等は、違反転用者等に対して、4条又は5条の許可を取り消し、その条件を変更し、新たに条件を付し、工事その他の行為の停止を命じ、又は相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置を講ずべきことを命ずることができると定めています。都道府県知事等とは、都道府県知事のことで、農林水産大臣が指定する市町村の区域内ではその市町村の長です。命令は、土地の農業上の利用の確保と他の公益、関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるときに、必要の限度で行います。命令をするときは、命令書を交付します。
工事を請け負った者も、命令の相手になります
命令の相手である違反転用者等は、四つに分かれます。4条1項又は5条1項の規定に違反した者とその一般承継人、許可に付した条件に違反している者、これらの者から工事その他の行為を請け負った者とその下請人、偽りその他不正の手段により許可を受けた者です。一般承継人とは、相続人や合併後の会社のように、前の人の権利と義務を丸ごと引き継いだ者のことです。現場で土を入れているのは請負人や下請人であることが多く、その手を止めなければ農地がつぶれていくのを防げないので、工事をしている側も相手に加えられています。

従わなければ公表や代執行があり、費用は違反した側が負います
原状回復等の措置を命ぜられた者が、期限までに正当な理由がなくて命令に従わなかったときは、都道府県知事等は、その旨と土地の地番などを公表することができます(51条3項)。命ぜられた者が期限までに措置を講じないとき、講じても十分でないとき、講ずる見込みがないときなどは、都道府県知事等が自ら原状回復等の措置を講ずることができます。命ずべき相手を探しても確知できないときや、緊急で命ずるいとまがないときも同じです。この費用は、違反転用者等に負担させることができます。
罰則は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です
4条1項又は5条1項の規定に違反した者、偽りその他不正の手段により許可を受けた者、51条1項の命令に違反した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処せられます(64条)。法人の代表者や従業者が、法人の業務に関して4条・5条の違反や命令違反をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に1億円以下の罰金刑が科されます(67条)。これを両罰規定といいます。会社が利益のために農地をつぶす場合、個人と同じ300万円では歯止めにならないので、法人の罰金だけが大きく引き上げられています。

農地法 51条1項都道府県知事等は、政令で定めるところにより、次の各号のいずれかに該当する者(以下この条において「違反転用者等」という。)に対して、土地の農業上の利用の確保及び他の公益並びに関係人の利益を衡量して特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、第四条若しくは第五条の規定によつてした許可を取り消し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて原状回復その他違反を是正するため必要な措置(以下この条において「原状回復等の措置」という。)を講ずべきことを命ずることができる。
一 第四条第一項若しくは第五条第一項の規定に違反した者又はその一般承継人
二 第四条第一項又は第五条第一項の許可に付した条件に違反している者
三 前二号に掲げる者から当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負つた者又はその工事その他の行為の下請人
四 偽りその他不正の手段により、第四条第一項又は第五条第一項の許可を受けた者
試験ではこう問われる
- 原状回復等の措置を命ずる相手(違反転用者等)には、4条1項・5条1項に違反した者又はその一般承継人のほか、工事その他の行為を請け負った者とその下請人も含まれる(51条1項1号・3号)。「工事を請け負った者は含まれない」は誤り
- 4条1項又は5条1項に違反して転用した者は、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金(64条)
- 法人の代表者等が法人の業務に関し4条1項・5条1項に違反して転用したときは、行為者を罰するほか、法人に1億円以下の罰金刑が科される(67条)。「法人も300万円以下の罰金刑」は誤り
- 都道府県知事等は、許可の取消し、条件の変更、工事その他の行為の停止、相当の期限を定めた原状回復等の措置を命ずることができる(51条1項)
- 許可の条件に違反している者、偽りその他不正の手段により許可を受けた者も、処分の相手になる(51条1項2号・4号)
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