宅建の年末年始|締切が最も遠い連休の使い方
年末年始は外部の締切が最も遠く、直近年度の本試験問題が出そろった直後の連休です。この二点から、通し・順序の設計・教材の年度判断という三つに絞って使い方を解説します。
目次
本記事の役割 — 年末年始という連休の単位だけを扱います。連休一般の考え方はゴールデンウィークと夏休みを扱った宅建のGW・夏休みの勉強法で立てているので、ここではその枠組みを年末年始に当てはめ、距離が違えば何が変わるかを書きます。
年間の逆算は宅建の試験日から逆算する年間スケジュール、期間全体の割り振りは勉強スケジュールの立て方にあります。
年末年始の記事は「休みが何日あるから何時間確保できる」という書き方になりがちです。この記事はその書き方を採りません。
宅建の勉強時間で確定させているとおり、時間は投じた資源の量であって、身についた量ではありません。連休を時間の塊として扱うと、座っていれば達成できる目標を立てることになります。代わりに使う基準は宅建のGW・夏休みの勉強法と同じ一つで、連続したブロックでなければ実行できない作業か、それとも細切れでもできる作業かです。
そのうえで、先に結論を三つ述べます。
第一に、年末年始は、外部から与えられる締切が最も遠い連休です。その年度の試験日は、年末年始の時点ではまだ公告されていません。宅地建物取引業法施行規則10条1項が定めているのは「試験は、毎年少なくとも一回行なう」ということだけで、具体的な期日は同条2項の公告によって決まります。公告は毎年6月上旬です。年末年始から数えて5か月以上、外部のイベントが一つもありません。
第二に、年末年始は、直近年度の情報が出そろった直後の連休です。試験は10月の第3日曜日に行われ、問題と正解番号はその後に公表されます。合格基準点と受験者データも11月下旬に公表されます。つまり年末年始は、直近年度の本試験問題を解ける最初の長期休暇です。この位置に立てるのは年末年始だけです。
第三に、この二点から、年末年始にやるべきことは三つに絞られます。直近年度を通しで解くこと、学習の順序を最初に組むこと、そして教材の年度をどうするかを決めることです。ゴールデンウィークが「順序を組み直す最後の機会」だったのに対し、年末年始は「順序を組む最初の機会」です。
以下、順に見ていきます。
年末年始が他の連休と違う二点
試験日は、まだ法的に確定していない
宅建試験の日程は、毎年6月上旬の官報公告で正式に確定します。令和8年度は令和8年6月5日に公告されました。ここで試験日、試験案内の配布期間、申込の受付期間、受験手数料、試験地が確定します。
根拠は施行規則10条です。1項が「試験は、毎年少なくとも一回行なう」と定め、2項が「都道府県知事(中略)は、試験を施行する期日、場所その他試験の施行に関し必要な事項をあらかじめ公告しなければならない」と定めています。
条文が定めているのは「毎年少なくとも一回」までです。「10月の第3日曜日」という日付は条文に書かれていません。運用として安定しているので推定はほぼ外れませんが、法的に確定するのは6月の公告の時点です。日程の確定情報は令和8年度宅建試験の日程にまとめてあります。
年末年始の位置づけは、ここから出てきます。公告まで5か月以上、申込開始まで6か月以上、試験まで9〜10か月。この期間、外部から与えられる締切は一つもありません。
宅建のGW・夏休みの勉強法では、夏休みを「締切のない2か月の入口」と書きました。年末年始は、締切のない6か月の入口です。しかもゴールデンウィークより手前にあります。ゴールデンウィークの時点では公告まで1か月ですが、年末年始は5か月以上あります。
直近年度の情報が、すべて出そろっている
もう一つの特徴が、情報の側にあります。
宅建試験は10月の第3日曜日に実施され、指定試験機関である一般財団法人不動産適正取引推進機構が試験実施後に問題と正解番号を公表します。合格発表は11月下旬で、あわせて合格基準点、受験者数、合格者数、合格率、合格者の平均年齢といった実績値が公表されます。令和7年度でいえば、試験は令和7年10月19日、試験結果の概要は令和7年11月26日に公表されました。
したがって年末年始は、直近年度の本試験問題が手に入っている最初の長期休暇です。
この点は、他の連休と比べると際立ちます。ゴールデンウィークの時点で最新の過去問は半年以上前のもので、夏休みならさらに古い。「いちばん新しい年度が、いちばん新しいうちに解ける」のは年末年始だけです。これは構造から言えることで、根性や気合の話ではありません。
二点をどう使うか
締切が最も遠く、情報が最も新しい。この二つを組み合わせると、年末年始の使い道が決まります。
締切が遠いということは、設計を変えても誰にも影響しないということです。順序を組み替えても、範囲を切っても、教材を変えても、失うものがありません。この自由度は7月の申込を過ぎると急速に失われます。
情報が新しいということは、いま解けば「試験の現在の姿」が分かるということです。何年も前の年度を解くより、直近年度を解くほうが、出題の形式も難易度の感覚も正確に伝わります。
設計を決めるための材料が、最も新しい形で手に入る時期。これが年末年始の位置づけです。
時間量で語らない、という前提
基準は「連続ブロックが要るか」
宅建のGW・夏休みの勉強法で立てた基準をそのまま使います。連続したブロックでなければ実行できない作業か、それとも細切れでもできる作業か。
この基準の良さは、実行できたかどうかを自分で判定できることです。50問を2時間続けて解いたかどうかは、やったか、やらなかったかのどちらかです。「集中して6時間やった」のような自己評価が入り込む余地がありません。
宅建の合格に必要な学習時間について、国も試験実施機関も統計を公表していません。世間で流通している総時間の数字には公的な出典がなく、それを分母にして「年末年始で何割を稼ぐ」と計算しても、根拠のない数字の割り算になります。
年末年始は、他人の予定が最も入る連休である
そのうえで、年末年始には固有の事情があります。一年のうちで、他人の予定が最も入りやすい連休だということです。
帰省、親族の集まり、大掃除、年賀状、子どもの冬休み。ゴールデンウィークや夏休みにも予定は入りますが、年末年始は行事そのものが日付に固定されている点が違います。元日を動かすことはできません。
したがって、年末年始に総量を積む前提で計画を立てるのは、設計として最も脆弱です。予定が潰れる確率が最も高い連休に、計画の重心を置くことになるからです。
対処は単純で、先に予定を確定させてから、使えるブロックの数を数えます。5日のうち使えるのが2日なら、2日で組みます。3つ全部をやろうとして全部が中途半端になるくらいなら、優先度の高い順に2つに絞るほうが確実です。優先順位は後述します。
年末年始は「上積み」ですらない
ゴールデンウィークや夏休みの記事では、連休を平日の計画に対する上積みとして扱いました。年末年始は、多くの人にとってさらに手前の位置にあります。平日の計画がまだ存在しないからです。
これから学習を始める人にとって、年末年始は上積みではなく起点です。すでに学習している人にとっては上積みですが、その場合も年末年始固有の使い方があります。この違いは後の節で分けて扱います。
年末年始にしかできないこと① 直近年度を通しで解く
なぜ年末年始が最初の機会なのか
前述のとおり、直近年度の問題と正解番号が公表されるのは試験実施後です。年末年始は、それを解ける最初の長期休暇にあたります。
そして本試験は50問を2時間で解きます。この2時間を中断なしに、しかも本番と同じ午後1時から3時に確保するのは、平日にはまず不可能です。連休にしかできないことの筆頭が通しであるという点は、どの連休でも変わりません。
年末年始の通しは「距離を測る」より手前にある
ゴールデンウィークの通しは「試験との距離を測る」ためのものでした。年末年始の通しは、多くの人にとってさらに手前の目的を持ちます。試験がどういうものかを知ることです。
初学者が12月末に50問を解けば、点数は相当低くなります。それで構いません。この時点の得点には情報がほとんどありません。代わりに得られるものが四つあります。
第一に、問題文の長さと形式です。四肢択一といっても、肢が三行以上ある問題が並びます。「正しいものはいくつあるか」という個数問題や、「正しいものの組合せはどれか」という組合せ問題も混ざります。この見た目を知っているかどうかで、以後の学習の解像度が変わります。
第二に、科目の配置です。50問の内訳は、権利関係14問、法令上の制限8問、税と価格の評定3問、宅建業法20問、免除対象科目5問です。そして宅建業法は問26から問45に置かれています。問1から順に解くと、最も時間を食う権利関係が先に来る。この並びは、実際に開いてみないと実感になりません。
第三に、2時間という時間の感覚です。1問あたり平均2分24秒です。この数字を知っていることと、2時間座って50問を処理した経験があることは別です。
第四に、分からない問題に出会ったときの自分の反応です。固まるのか、飛ばせるのか、消去法に切り替えられるのか。これは初見の問題群を制限時間の中で処理する状況でしか観測されません。
直近年度を使うことの意味と、限界
直近年度を使う利点は、法令の基準日が最も近いことです。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されるので、令和7年度の問題は2025年4月1日時点の法令に基づいています。それ以前の年度より、現在に近い状態です。
ただし限界もあります。あなたが受ける年度とは、基準日が1年ずれています。令和8年度を受けるなら基準日は2026年4月1日であり、直近年度の問題はその1年前の法令に基づいています。この1年の間に施行された改正があれば、当時の正解が現在は誤りになっている肢が混ざります。
令和8年度でいえば、区分所有法の改正(令和7年法律第47号、2026年4月1日施行)と、宅地建物取引業法施行規則16条の2第9号の新設(令和7年内閣府・国土交通省令第2号、同日施行)が該当します。前者は決議要件の分母が総数から出席者に変わる実体改正で、後者は区分所有建物の重要事項説明の項目が9項目から10項目に増えるものです。決議要件の中身は区分所有法の決議要件にまとめています。
通しの段階では、この程度のずれは無視して構いません。目的が形式の把握と自分の反応の観測にある以上、数問の正誤が変わっても結論は動きません。ただし、解説を読んで知識として取り込む段階では、改正の有無を確認する必要があります。
本番条件のうち、何を守るか
条件は五つです。制限時間2時間を厳守する。資料を見ない。途中で中断しない。可能なら本番と同じ午後1時から3時に解く。マークシートを使う。
このうち平日に再現できないのは「途中で中断しない」と「午後1時から3時」の二つなので、連休にやるべきなのはこの二つを満たす通しです。条件を崩した通しで測れるのは知識の量だけになり、それは肢別演習でも測れます。詳しくは宅建の模試活用法にあります。
登録講習を修了して5問免除を使う予定なら、通しも45問を1時間50分で解いてください。免除の要件と範囲は5問免除(登録講習)にまとめています。
記録するのは点数ではない
年末年始の通しで記録すべきものは三つです。
科目別の内訳。全科目が低いのか、特定の科目だけ極端に低いのか。初学者ならどの科目も低いのが普通ですが、それでも宅建業法だけは常識で取れる肢があるといった傾向は出ます。
時間が足りたか、余ったか。この時期に大幅に時間が余るなら、考えていない問題が多いということで、知識の不足を示します。時間が足りないなら、読むことに時間がかかっているということです。
手が止まった回数。問題文を読んで何をしていいか分からず止まった回数を、正の字で数えるだけで足ります。次に同じことをやったときに比較できます。
採点後の処理は宅建の過去問活用術、自己採点そのものの手順は宅建試験の自己採点のやり方を参照してください。
年末年始にしかできないこと② 学習の順序を最初に組む
「組み直す」ではなく「組む」
ゴールデンウィークの記事では、この作業を「順序を組み直せる最後の機会」と位置づけました。年末年始は、組む最初の機会です。
違いは自由度です。5月の時点では、すでに数か月分の学習が積み上がっており、順序を変えると積み上げの一部が無駄になります。年末年始にはその制約がありません。白紙から組める唯一の時期です。
順序の設計で決める四項目
宅建に独学で合格するで整理したとおり、順序の設計とは科目の並べ方を決めることだけを指すのではなく、なぜその順序なのかを説明できる状態にすることを指します。理由のない順序は、途中で崩れたときに立て直せません。
決めるべき項目は四つです。科目をどの順に扱うか。各科目でインプットとアウトプットをどう配分するか。どの論点を捨てるか。範囲を何回繰り返すか。この四つを紙に書き出せていれば、順序は設計されています。
ただし、年末年始の時点で四つ全部は決められません。後述するとおり、三つ目の「どの論点を捨てるか」は、この時期には決められない項目です。
宅建業法から始める理由は、配点だけではない
学習を宅建業法から始めるという順序は、多くの資料で共通しています。理由として挙げられるのは配点の多さで、20問は50問中の40%にあたります。
ただし、より重要な理由があります。宅建業法は、演習量が正答率に変わるまでの時間が最も短い科目だということです。
問われるのは条文の要件と手続です。免許の要否、営業保証金と弁済業務保証金、35条書面と37条書面の記載事項、自ら売主となる場合の8種制限、報酬額の制限、監督処分。範囲は有限で、問われ方も繰り返されます。事案に条文を当てはめる作業が中心の権利関係と違い、覚えた内容がそのまま得点に変わります。
年末年始に学習を始める人にとって、これが何を意味するか。自分で作った学習の型が機能しているかどうかを、最初に検証できるということです。宅建業法を一定量やって正答率が上がらなければ、順序か、判定の基準か、演習の方法に問題があります。逆に上がるなら、その手順を他の科目に転用できます。科目の骨格は宅建業法の全体像にまとめています。
権利関係をどこに置くか
権利関係は14問で、宅建業法に次ぐ出題数です。しかし順序の設計上、扱いが最も難しい科目でもあります。投じた分量が得点に変わるまでの時間が長いからです。
登場人物が三人以上になると判断できなくなる、対抗要件の問題だと分かっているのに誰が誰に対抗するのかを取り違える。こうした詰まり方は、演習量を増やすだけでは解消しません。関係図を描く手順を固定し、制度の趣旨に戻って理由を言えるようにする、という質的な作業が要ります。
ここから順序の判断が出ます。権利関係を最初に置くと、成果が出ないまま時間が過ぎます。年末年始に学習を始めて、最初に民法に取り組み、1月中に手応えが出ないまま2月を迎える。これが最も避けたい経路です。
現実的なのは、宅建業法で学習の型を立ち上げたあと、早い段階で権利関係に着手し、ただし到達の判定基準を他の科目と変えることです。正答率ではなく「頻出論点のうち、事案を図に落として説明できるものがいくつあるか」で測ります。範囲の絞り込み方は権利関係の頻出論点を参照してください。
法令上の制限は二回に割る前提で置く
法令上の制限は8問で、内容の中心は数値と要件の暗記です。開発許可が必要な規模、建蔽率と容積率の緩和条件、農地法3条・4条・5条の許可権者、国土利用計画法の届出面積。覚えていれば取れ、覚えていなければ取れません。
この性質から、順序の設計では忘却が最も速い科目として扱います。年末年始に一巡目の位置を決めるとき、同時に二巡目の位置も決めてください。一巡目で「できた」と判定してそのまま放置すると、10月には落ちています。数値の覚え方は法令上の制限の暗記法にまとめています。
捨てる範囲は、この時期には決められない
四項目のうち三つ目だけは、年末年始には決められません。
捨てる範囲の判断基準は二つで、出題頻度が低いことと、理解に時間がかかることです。前者は公表情報から分かりますが、後者は自分にとっての難易度なので、実際にやってみないと分かりません。年末年始の時点でこれを決めると、単に「難しそうな名前の論点」を切ることになります。
したがって、この項目はゴールデンウィークに送ります。5月の時点なら、数か月分の演習記録から「自分にとって時間がかかる論点」が判定できます。年末年始に決めるのは、残り三項目です。
決められないことを無理に決めないという判断も、順序の設計の一部です。
成果物を一枚に落とす
順序の設計は、やっただけでは残りません。紙一枚かノート見開きに落としてください。
書くのは、科目の順序と、それぞれの科目をいつからいつまでやるか、そして各科目でインプットとアウトプットをどう配分するか。日付まで細かく決める必要はなく、月単位で構いません。重要なのは、遅れているかどうかを判定できる形になっていることです。判定できなければ、遅れは9月まで見えません。
年末年始にしかできないこと③ 教材の年度を決める
年末年始は、教材の年度が切り替わる途中にある
三つ目が、他の連休にはない年末年始固有の判断です。
宅建試験の出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです。受験年度版の教材は、この基準日より前に刊行されます。したがって年末年始の時点では、受験年度版がまだ出そろっていない可能性があります。
これは、ゴールデンウィークにはない問題です。5月の時点では基準日が過ぎており、その年度対応の教材を選ぶ判断ができます。年末年始は、判断材料が揃う前の時期にあたります。
選択肢は三つで、それぞれ失うものが違う
第一の選択肢は、受験年度版が出るまで待つことです。確実ですが、待っている数か月が空きます。年末年始という最も自由度の高い時期を、教材の到着待ちで消費することになります。
第二の選択肢は、前年度版で始めることです。すぐ始められますが、改正が反映されていません。
第三の選択肢は、前年度版で始めて、受験年度版が出たら差し替えることです。費用が二重にかかりますが、時間は失いません。
前年度版で始めるなら、線を引いておく
結論から言えば、多くの人にとって第三の選択肢が合理的です。理由は、年末年始に失うものの大きさが釣り合わないからです。
学習を始めるかどうかの判断と、どの版を使うかの判断は別のものです。前年度版で学習しても、大半の内容は変わりません。改正があった論点だけが問題になります。そして、どこが改正論点かは分かっているので、そこに線を引いておけば済みます。
令和8年度でいえば、前年度版が反映していない可能性が高いのは次の二つです。
区分所有法の決議要件(令和7年法律第47号、2026年4月1日施行)。定足数が新設され、多数決の分母が総数から出席者に変わりました。「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」という表現が総数を分母とするものとして書かれていれば、未反映です。
宅地建物取引業法施行規則16条の2第9号の新設(令和7年内閣府・国土交通省令第2号、同日施行)。区分所有建物の重要事項説明の項目が9項目から10項目に増え、旧9号の維持修繕の実施状況の記録が10号に繰り下がりました。
この二つに付箋を貼っておき、受験年度版が出たら差し替える。これで前年度版で始めることの不利益はほぼ消えます。
判定は検査語で行う
そのうえで、手元の教材が改正を反映しているかどうかは、自分で判定できます。宅建の問題集の選び方に、改正で消えたはずの表現が残っていないかを探すだけの手順を七つの検査語としてまとめてあります。読んで理解する必要はなく、特定の語がヒットするかどうかだけを見ます。
年末年始に教材を買うなら、店頭でこの検査を通してください。とくに「区分所有者及び議決権の各4分の3以上」を総数の意味で使っているかどうかは、令和8年度の基準日そのものの改正なので最優先です。
なお、対応年度の表示だけでは判定がつきません。受験年度版と表示されていても、刊行が基準日より前であれば、その年度に施行される改正を織り込んで編集したのか、単に前年の内容を引き継いだのかが表示からは区別できないからです。教材そのものの選び方は宅建テキストの選び方にまとめています。
過去問集は年度版の影響が小さい
なお、テキストと問題集では事情が違います。過去問集は、収録される問題そのものが過去の基準日で作られているので、どの版を買っても問題文は同じです。差が出るのは解説の側だけです。
したがって、年末年始に買うなら過去問集のほうが先でよいという判断ができます。直近年度の通しに使えますし、版による差も小さくて済みます。
年末年始にやっても効きが薄いこと
三つを取り出したのと同じ基準から、逆側も見ておきます。
直近年度以外の過去問を周回する
年末年始に過去問を何年分も解こうとするのは、効きが薄い使い方です。
理由は、この時期の演習には判定機能がないからです。知識がまだ入っていない段階で10年分を解いても、出てくるのは「ほとんど解けない」という結果だけで、それは1年分解けば分かります。残りの9年分は、知識を入れてから解いたほうが判定として意味を持ちます。
過去問は有限の資源です。10年分で500問、選択肢に分解すると2,000肢ありますが、初見であることは一度しか使えません。知識がない段階で消費すると、あとで初見の判定ができなくなります。直近年度を1年分だけ通しに使い、残りは取っておくのが、この時期の使い方です。
統計を覚える
統計の問題は、知識の抜けではなく情報の鮮度の問題です。数値は毎年更新されるので、年末年始に覚えても、10月には別の作業をやり直すことになります。直前期に最新の公表値を確認する扱いにしてください。対策は統計問題の対策にまとめています。
総量を計算する
「試験まで何日あるから、1日何時間で合計何時間」という計算は、この時期に最もやりたくなる作業です。しかし、分母になる総時間に公的な出典がありません。根拠のない数字を分母に置いた計算は、計画が正しいかどうかの検証もできなくします。
管理すべきなのは、何時間机に向かったかではなく、何が解けるようになったかです。指標の置き方は宅建の勉強時間にまとめてあります。
年末年始ですべてを決めようとする
最後に、年末年始固有の落とし穴を挙げます。この時期に決められないことまで決めようとすることです。
捨てる範囲は決められません。目標点の科目別配分も、自分の得意不得意が分かっていない段階では意味のある数字になりません。模試をいつ受けるかも、その年度の日程が公告されていないので確定できません。
決められることと決められないことを仕分けるのも、この時期の作業です。決められないことを空欄のまま残し、いつ決めるかだけを書いておく。これで十分です。
すでに学習している人・再受験する人の年末年始
ここまでは、これから始める人を中心に書きました。すでに学習している人と、直近年度を受験して不合格だった人では、年末年始の使い方が変わります。
直近年度の実績値が出そろっている
再受験する人にとって、年末年始の最大の材料は直近年度の結果です。問題と正解番号、合格基準点、受験者データがすべて公表されています。
まず、自己採点の結果と実際の合格基準点を突き合わせてください。何点足りなかったのかが確定します。合格基準点は毎年動くので、この数字は年度ごとに違います。令和7年度は前年の37点から33点へ4点下がりました。基準点が動く仕組みは宅建の合格ライン予想、受験者データの読み方は宅建試験の受験者データにまとめています。
前年の本試験に誤答の四分類を当てる
そのうえで、前年の本試験の誤答を分類し直します。
宅建の弱点克服法では、誤答の原因を四つに分けています。知(知識がない)、混(似た制度と混同)、読(問題文の読み違い)、時(時間切れ)。同じ不正解でも、原因が違えば打ち手が違います。
本試験の誤答をこの四分類にかけると、翌年の設計が決まります。「知」が大半なら、範囲を広げる作業が足りていません。「混」が多いなら、対比の作業に移る段階です。「読」が一定割合あるなら、知識の補強では改善しないので、問われている方向・主語・前提条件の三点に印をつける手続を固定します。「時」が多いなら、処理手順か解答順序の問題です。
この作業ができるのは年末年始だけです。分類は本来、演習した当日に行うものですが、本試験当日には答え合わせができません。問題と正解番号が公表され、記憶がまだ残っているうちにまとめて処理できるのが、この時期です。
再受験全体の設計は宅建の再受験戦略にまとめています。
正答率だけでは半分しか見えない
分類のときに、正解した問題も確認してください。四肢択一である以上、選択肢を二つに絞ってから選んだ問題はおよそ半分が正解になります。その正解は記録上「できている」に分類され、復習の対象から外れます。
「正答率だけでは弱点の半分しか見えない」という指摘は、本試験の振り返りでも同じです。本試験の問題冊子に印を残していれば、自信のなかった問題で正解したものを拾い出せます。ここが翌年まで残る失点の温床です。
年末年始が壊れる典型パターン
予定を確定させる前に設計する
年末年始は他人の予定が最も入る連休です。先に予定を確定させてから、使えるブロックの数を数えてください。
そのうえで、三つ全部が入らない場合の優先順位を決めておきます。通し、教材の判断、順序の設計の順です。通しは2時間の連続ブロックが必要で代替手段がありません。教材の判断は、書店が営業している日でなければできません。順序の設計は、極端に言えば年明けの平日夜でもできます。
家族の理解を得る話は宅建の勉強を家族に応援してもらう方法にまとめています。
「年始から」と決めて、始まらない
年末は休んで年始から始める、という判断そのものは合理的です。試験まで9〜10か月あるので、数日の差は結果を変えません。
問題は、開始日を曖昧にすることです。「年始から」は日付ではありません。仕事始めの日、1月の第1月曜日など、具体的な日付を決めてカレンダーに書いてください。そして、その日にやることも決めておきます。「テキストを開く」ではなく「宅建業法の第1章を読んで、対応する肢別を20問解く」という粒度です。
初日が計画作りで終わる
連休に入ってから何をやるかを考え始めると、初日が消えます。通しに使う年度、教材を見に行く日、順序を書き出す時間は、連休が始まる前に決めておいてください。
年明けの落差で失速する
年末年始に一日何時間もやっていた人が、平日の1時間に戻ると、落差から「やっていない」感覚が生まれます。これが失速の正体です。
対策は設計です。年末年始の最終日に、翌週以降の分量を決めてしまう。そして決める分量は、年末年始のペースではなく、平日に継続できるペースにします。年末年始は起点であって基準ではない、と最初から理解しておけば落差になりません。
平日の型の作り方は1日の学習スケジュール、仕事と両立させる設計は社会人の宅建学習、続かなくなったときの立て直しは宅建試験の挫折を防ぐ方法にまとめています。
教材を大量に買う
年末年始は、書店に行く時間がある時期でもあります。ここで教材を揃えすぎると、使わない教材が積み上がった状態で1月を迎えます。
必要なのは、テキスト1冊、分野別の過去問集、年度別の過去問集です。テキストを1冊に絞る理由は、混乱するからではありません。2冊目を読んで書き方が違っていたときに、どちらが正しいかを判定する材料が増えないからです。テキストはどちらも解説であって、根拠そのものではありません。腑に落ちない箇所の確認先は、別のテキストではなく条文です。
試験での出題ポイント
学習法の記事ですが、この記事で触れた制度は、そのまま出題対象です。
試験の実施と公告(施行規則10条)
施行規則10条1項は「試験は、毎年少なくとも一回行なう」と定めています。「毎年一回」ではなく「毎年少なくとも一回」である点が条文の書きぶりです。
2項が公告の義務を定めており、公告すべき事項は「試験を施行する期日、場所その他試験の施行に関し必要な事項」です。3項により、指定試験機関が公告を行うときは、委任都道府県知事を明示し、試験事務規程に定める方法により行うこととされています。
試験を行うのは都道府県知事である
宅地建物取引業法16条1項は「都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引士資格試験(中略)を行わなければならない」と定めています。試験の実施主体は都道府県知事です。
そのうえで16条の2第1項が「都道府県知事は、国土交通大臣の指定する者に、試験の実施に関する事務(中略)を行わせることができる」とし、3項が「都道府県知事は、第一項の規定により国土交通大臣の指定する者に試験事務を行わせるときは、試験事務を行わないものとする」と定めています。指定試験機関に行わせるときは、知事は試験事務を行わないという関係です。
不正受験に対する処分は17条
17条1項が、不正の手段によって試験を受け、または受けようとした者に対して、合格の決定を取り消し、またはその試験を受けることを禁止できると定めています。2項は、指定試験機関が委任都道府県知事の職権を行うことができるという主体についての規定です。そして3項が「情状により、三年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる」と定めています。3年以内の受験禁止は3項であり、2項ではありません。
出題範囲は施行規則8条の七項目
施行規則8条が「試験すべき事項」として七項目を挙げています。土地と建物の形質・構造など、権利と権利の変動に関する法令、法令上の制限、税に関する法令、需給に関する法令および実務、価格の評定、そして宅地建物取引業法および関係法令です。どの教材を使っても、どの学習法をとっても、範囲は同じです。
法令の基準日は4月1日
出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです。年末年始に教材の年度を判断するときの基準がこれです。令和8年度なら2026年4月1日で、区分所有法の改正と施行規則16条の2第9号の新設は同日施行なので範囲内、民法・不動産登記法(2026年6月24日施行)、都市計画法・建築基準法(同年5月27日施行)、借地借家法(同年5月21日施行)の各改正は範囲外です。
覚え方・整理の仕方
年末年始の位置を二語で持つ
締切が最も遠く、情報が最も新しい。この二語で年末年始の位置が決まります。
締切が遠いから設計を変えられる。情報が新しいから設計の材料が揃っている。設計をする時期だという結論が、この二つから出ます。
やることは三つだけと決めておく
通し、順序、教材。この三つ以外は平日でもできる、と決めておけば、連休前の準備が具体的になります。三つ全部が入らないときの優先順位は、通し、教材、順序の順です。
GWとの違いを一行で
ゴールデンウィークは順序を組み直す最後の機会、年末年始は組む最初の機会。そして、捨てる範囲を決めるのはゴールデンウィークです。年末年始には材料がありません。
直近年度は「一度しか使えない資源」
初見であることは一度しか使えません。年末年始に使うのは直近年度の1年分だけにして、残りは知識が入ってから解きます。この時期に10年分を消費すると、あとで判定に使える年度がなくなります。
教材は「差し替える前提」で買う
年末年始の時点では受験年度版が出そろっていない可能性があります。前年度版で始めて、改正論点に付箋を貼り、受験年度版が出たら差し替える。待って時間を失うより、始めて差し替えるほうが合理的です。
覚えておく数字は四つ
10月の第3日曜日が試験日の位置。ただし条文が定めているのは「毎年少なくとも一回」で、期日は6月上旬の公告で確定します。
6月上旬が官報公告。年末年始から数えて5か月以上先で、その間に外部の締切はありません。
4月1日が法令の基準日。教材の年度を判断する基準です。
20問が宅建業法の出題数で、配点の40%。順序を組むときに最初に置く科目です。
理解度チェッククイズ
学習法の記事ですが、クイズは試験知識から出します。
第1問
宅地建物取引業法施行規則によれば、宅地建物取引士資格試験は毎年1回に限り行うものとされている。○か×か。
答えは×です。施行規則10条1項は「試験は、毎年少なくとも一回行なう」と定めています。「毎年一回に限り」ではありません。実際の運用は年1回ですが、条文が置いている枠は「少なくとも一回」です。また、同条2項により、試験を施行する期日、場所その他試験の施行に関し必要な事項はあらかじめ公告しなければならないとされており、具体的な期日は条文ではなく公告によって決まります。宅建試験の日程が毎年6月上旬の官報公告で確定するのは、この規定によるものです。
第2問
宅地建物取引士資格試験は、国土交通大臣が行わなければならない。○か×か。
答えは×です。宅地建物取引業法16条1項は「都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引士資格試験を行わなければならない」と定めています。実施主体は都道府県知事です。そのうえで16条の2第1項により、都道府県知事は国土交通大臣の指定する者に試験事務を行わせることができ、同条3項により、行わせるときは知事自身は試験事務を行わないものとされています。国土交通大臣の役割は指定であって、試験の実施ではありません。
第3問
不正の手段によって試験を受けようとした者に対しては、情状により3年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる旨が、宅地建物取引業法17条2項に定められている。○か×か。
答えは×です。項が違います。3年以内の受験禁止を定めているのは17条3項で、「都道府県知事は、前二項の規定による処分を受けた者に対し、情状により、三年以内の期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる」と規定しています。1項が合格の決定の取消しと受験の禁止、2項は「指定試験機関は、前項に規定する委任都道府県知事の職権を行うことができる」という主体についての規定です。条番号も期間も効果も合っていて項番号だけが違う記述は、読み返しても違和感がないため検出しにくい型です。
第4問
令和8年度の宅建試験では、2026年4月1日に施行された建物の区分所有等に関する法律の改正が出題範囲に含まれる。○か×か。
答えは○です。出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです。令和8年度の基準日は2026年4月1日なので、同日施行の改正は範囲に入ります。区分所有法の改正(令和7年法律第47号)は決議要件について定足数を新設し、多数決の分母を総数から出席者に変えるもので、実体的な改正です。同じく2026年4月1日施行の宅地建物取引業法施行規則16条の2第9号の新設も範囲内です。一方、民法・不動産登記法(2026年6月24日施行)、都市計画法・建築基準法(同年5月27日施行)の各改正は基準日より後の施行なので範囲外になります。年末年始に前年度版の教材で学習を始めるなら、この二つが未反映である可能性を前提にしてください。
第5問
宅地建物取引士資格試験で試験すべき事項は、宅地建物取引業法施行規則8条が七項目を挙げており、どの都道府県で受験しても範囲は同じである。○か×か。
答えは○です。施行規則8条は「試験すべき事項」として、土地および建物の形質・構造等、土地および建物についての権利および権利の変動に関する法令、法令上の制限、税に関する法令、需給に関する法令および実務、価格の評定、宅地建物取引業法および関係法令の七項目を挙げています。試験の実施主体は都道府県知事ですが、試験の基準(施行規則7条)と試験すべき事項(同8条)は省令で統一されており、範囲は共通です。したがって、教材や学習法によって出題範囲が変わることもありません。変わるのは範囲ではなく、その範囲をどの順で、どの深さで扱うかという設計のほうです。
まとめ
第一に、年末年始は外部の締切が最も遠い連休です。施行規則10条1項が定めているのは「試験は、毎年少なくとも一回行なう」ということだけで、期日は同条2項の公告によって決まります。公告は毎年6月上旬です。年末年始から数えて5か月以上、申込開始まで6か月以上、外部から与えられるイベントは一つもありません。締切が遠いということは、設計を変えても何も失わないということです。
第二に、年末年始は直近年度の情報が出そろった直後の連休です。問題と正解番号は試験実施後に公表され、合格基準点と受験者データは11月下旬に公表されます。いちばん新しい年度を、いちばん新しいうちに解けるのは年末年始だけで、これは構造から言えることです。
第三に、この二点からやることは三つに絞られます。直近年度を通しで解くこと、学習の順序を最初に組むこと、教材の年度をどうするかを決めることです。通しの目的は点数ではなく、問題の形式、科目の配置、2時間という感覚、そして分からない問題に出会ったときの自分の反応を知ることです。順序については四項目のうち三つを決め、捨てる範囲だけはゴールデンウィークに送ります。判定に使う材料が、この時期にはまだないからです。
そして教材は、前年度版で始めて改正論点に付箋を貼り、受験年度版が出たら差し替えるのが多くの人にとって合理的です。令和8年度でいえば、区分所有法の決議要件と施行規則16条の2第9号の新設が未反映になりうる箇所です。判定は宅建の問題集の選び方の検査語で行えます。
最後に、年末年始は他人の予定が最も入る連休です。先に予定を確定させてから、使えるブロックの数で組んでください。三つ全部が入らないなら、通し、教材、順序の順に優先します。そして年末年始のペースを平日の基準にしないこと。年末年始は起点であって、基準ではありません。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、年度別過去問演習で直近年度を通しで解き、肢別トレーニングで誤答を科目別に振り返れます。年末年始に測った位置は、次に通しをやったときの比較対象になります。
肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。