賃貸住宅管理業法の全体像|登録と業務管理者
賃貸住宅管理業法の登録制度、業務管理者の選任義務、管理受託契約の重要事項説明、サブリース規制を条文根拠つきで整理。宅建業法の媒介・代理との違いも解説します。
目次
本記事は、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号。以下「賃貸住宅管理業法」)の制度構造を、条文の順に沿って読み解くものです。宅建業法という法律の骨格そのものは宅建業法の全体像をつかむで、免許が必要かどうかの判定は宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で扱っているので、あわせて読むと「宅建業法が届く範囲」と「賃貸住宅管理業法が届く範囲」の境目がはっきりします。
先に結論を述べます。この法律は、性格の異なる二つの規制を一本の法律に束ねたものです。ひとつは賃貸住宅管理業を営む者に対する登録制度で、これは一定規模以上の事業者だけを対象とします。もうひとつは特定賃貸借契約、いわゆるサブリースに対する行為規制で、こちらは登録を受けているかどうかにかかわらず、また事業規模の大小にかかわらず、すべての特定転貸事業者と勧誘者に及びます。この「対象範囲が違う二階建て」という構造を最初に押さえないと、条文を何度読んでも頭に残りません。以下では、目的規定から順に、定義、登録、業務規制、サブリース規制、そして宅建業法との境界という順序で組み立て直します。
賃貸住宅管理業法は何を規律している法律か
目的規定が示す二本柱
法第1条は、この法律の目的を「賃貸住宅管理業を営む者に係る登録制度を設け、その業務の適正な運営を確保するとともに、特定賃貸借契約の適正化のための措置等を講ずる」ことと定めています。目的規定に登録制度と特定賃貸借契約の適正化が並列で書かれている点が重要です。条文の並びもそのとおりで、第2章「賃貸住宅管理業」が登録制度と業務規制、第3章「特定賃貸借契約の適正化のための措置等」がサブリース規制にあてられています。章が分かれているということは、適用の要件も、義務を負う主体も、監督の手段も、章ごとに別建てになっているということです。
この二本柱は、施行日まで別々でした。法附則第1条本文は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日から施行すると定めつつ、同条ただし書第2号で、第1章、第3章、第4章および関連する罰則については、公布の日から起算して6月を超えない範囲内で政令で定める日から施行するとしています。実際に定められた日は、施行令附則第1項が「法附則第1条第2号に掲げる規定の施行の日(令和2年12月15日)」と明記しており、サブリース規制部分は2020年12月15日に先行して動き出しました。残る登録制度部分は、令和3年政令第143号の附則が「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の施行の日(令和3年6月15日)」と定めており、2021年6月15日に施行されています。「2021年6月に全面施行」と一言でまとめられることが多いのですが、正確には半年ずれた二段階施行です。
「賃貸住宅」の定義と、そこから外れるもの
法第2条第1項は、賃貸住宅を「賃貸の用に供する住宅」と定義し、住宅とは「人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分」だとしています。したがって、事務所だけの雑居ビルや倉庫は、賃貸されていても賃貸住宅ではありません。逆に、マンションの一室であっても居住用として賃貸されていれば賃貸住宅です。空室であっても、賃貸の用に供する意思が客観的に認められれば賃貸住宅に含まれると解されており、入居者がいないから対象外という理解は誤りです。
同項ただし書は、人の生活の本拠として使用する目的以外の目的に供されていると認められるものを国土交通省令で除外するとしています。施行規則第1条が挙げるのは三つで、旅館業法第3条第1項の許可に係る施設である住宅、国家戦略特別区域法第13条第1項の認定に係る施設である住宅のうち認定事業の用に供されているもの、そして住宅宿泊事業法第3条第1項の届出に係る住宅のうち住宅宿泊事業の用に供されているものです。要するに、いわゆる民泊やホテル・旅館として運用されている物件は、居住用の家屋であっても賃貸住宅から外れます。人が寝泊まりしているかどうかではなく、生活の本拠かどうかで線を引いている、というのが除外規定の考え方です。
「管理業務」の定義は二階建てになっている
法第2条第2項は、賃貸住宅管理業を「賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、次に掲げる業務を行う事業」と定義し、その業務、すなわち管理業務として二つを挙げています。第1号が維持保全を行う業務で、維持保全とは「住宅の居室及びその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うこと」と括弧書きで定義されています。第1号には、賃貸人のために維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎまたは代理を行う業務も含まれます。第2号が、家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務です。
ここで見落としてはならないのが、第2号の末尾にある「前号に掲げる業務と併せて行うものに限る」という限定です。金銭の管理だけを単独で受託しても、それは賃貸住宅管理業に当たりません。維持保全を行っていて、かつ金銭も預かっている場合に、はじめて第2号が乗ってきます。家賃の集金代行だけを請け負う事業者が登録の対象にならないのは、この限定があるからです。逆に、維持保全だけを受託していれば、金銭を一切扱っていなくても第1号によって賃貸住宅管理業に該当します。定義の非対称に注意してください。
また、維持保全は「点検、清掃その他の維持」と「必要な修繕」の両方を指しています。エレベーターの保守点検だけ、あるいは植栽の剪定だけといった一部分だけを請け負う場合は、住宅の居室およびその他の部分について維持保全を行っているとは言えず、賃貸住宅管理業には該当しないと整理されます。定義の射程は、条文の文言をそのまま追いかけないと外します。
登録制度の骨格
誰が登録を受けなければならないか
法第3条第1項本文は「賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければならない」と定め、同項ただし書で「その事業の規模が、当該事業に係る賃貸住宅の戸数その他の事項を勘案して国土交通省令で定める規模未満であるときは、この限りでない」としています。この国土交通省令が施行規則第3条で、「法第3条第1項の国土交通省令で定める規模は、賃貸住宅管理業に係る賃貸住宅の戸数が二百戸であることとする」と定めています。したがって、管理戸数が200戸未満であれば登録義務はありません。200戸「以上」で義務が生じる、と言い換えても同じことですが、条文の作りは「200戸未満なら適用除外」という書き方になっている点は覚えておく価値があります。
注意すべきは、登録義務がないことと登録できないことは違う、という点です。200戸未満の事業者も任意で登録を受けることはでき、登録を受ければ賃貸住宅管理業者として法の業務規制がすべて適用されます。オーナーから見れば登録の有無は事業者を選ぶ手がかりになるため、義務がなくても登録する事業者は少なくありません。試験で「200戸未満の事業者は登録を受けることができない」という肢が出れば、これは誤りです。
登録権者は国土交通大臣です。宅建業免許のように、事務所の所在地によって都道府県知事免許と国土交通大臣免許に分かれる仕組みではありません。免許権者が二本立てになっている宅建業法との違いは、宅建業免許の制度を理解すると並べて見ると鮮明になります。もっとも、法第38条により大臣の権限の一部は地方整備局長または北海道開発局長に委任することができるとされており、実際の窓口は地方整備局等になります。権限の所在と窓口の所在は別だ、ということです。
有効期間、更新、そして登録簿の公開
法第3条第2項は「前項の登録は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う」と定めています。有効期間5年という数字は、宅建業免許と同じです。数字が同じだからこそ、どちらの話をしているのか混同しやすい論点でもあります。
更新申請をしたのに有効期間の満了日までに処分がされない場合の扱いも条文にあります。第3条第3項は、従前の登録は満了後もその処分がされるまでの間はなお効力を有するとし、第4項は、更新がされたときの新しい有効期間は従前の有効期間の満了の日の翌日から起算するとしています。行政の処理が遅れても事業が止まらないようにしつつ、更新を重ねても期間がずれていかないようにする、という二段構えです。この「満了日の翌日から起算」という書き方は宅建業免許の更新と同じ発想なので、セットで覚えると効率がよくなります。第5項により、更新には政令で定める手数料が必要で、施行令第1条はその額を1万8,700円、電子情報処理組織を使用して申請する場合は1万8,000円と定めています。
登録簿は公開されます。法第8条が「国土交通大臣は、賃貸住宅管理業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならない」と定めており、誰でも閲覧できます。宅建業法の宅地建物取引業者名簿の閲覧と同じ発想で、取引の相手方が事業者の素性を確認できるようにする仕組みです。
登録拒否事由に業務管理者が組み込まれている
法第6条第1項は登録拒否事由を11号にわたって列挙しています。心身の故障により業務を的確に遂行できない者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、登録を取り消されてから5年を経過しない者、拘禁刑以上の刑またはこの法律の規定による罰金の刑に処せられて5年を経過しない者、暴力団員等、法人でその役員に該当者がいるもの、といった顔ぶれは、宅建業法の免許欠格事由とよく似ています。
賃貸住宅管理業法に固有なのは第10号と第11号です。第10号は「賃貸住宅管理業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない者」、第11号は「営業所又は事務所ごとに第十二条の規定による業務管理者を確実に選任すると認められない者」を拒否事由としています。つまり、業務管理者を置けない事業者はそもそも登録の入口で止められます。業務管理者の選任義務が、単なる業務上の義務ではなく登録要件そのものに組み込まれているという構造は、この法律の設計思想を示しています。
そして、これらの拒否事由に該当することとなったときは、法第23条第1項第1号により登録の取消しまたは1年以内の業務停止命令の対象になります。入口で止め、途中でも止められるという二段構えです。監督処分の考え方そのものは宅建業法と共通しており、宅建業法の監督処分を整理すると読み比べると理解が定着します。
無登録営業と名義貸しの重さ
罰則の軽重は、立法者がどの違反を重く見ているかを示す指標です。法第41条は、第3条第1項に違反して賃貸住宅管理業を営んだとき、不正の手段により登録を受けたとき、第11条に違反して他人に賃貸住宅管理業を営ませたときについて、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれを併科すると定めています。無登録営業と名義貸しがこの法律で最も重い罰則を科されている、という事実は押さえておいてください。
なお、法第37条は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」と定めています。国と地方公共団体は登録も不要で、業務規制もサブリース規制も及びません。宅建業法第78条第1項が国および地方公共団体に同法を適用しないと定めているのと同じ構造で、公的主体は法の外に置かれています。
業務管理者の選任義務
どこに、何人、置くのか
法第12条第1項は、賃貸住宅管理業者に対し「その営業所又は事務所ごとに、一人以上」の業務管理者を選任することを義務づけています。ここは正確に読む必要があります。1人「以上」なので2人置いても構いませんが、法が要求しているのは各営業所または事務所に最低1人です。従業者の人数に比例して増える仕組みではありません。
この点は、宅建業法の専任の宅建士と対比すると違いがはっきりします。専任の宅建士は、事務所等の規模、業務内容、取引件数を勘案して国土交通省令で定める数、すなわち業務に従事する者5人に1人以上を置かなければなりません(宅建業法第31条の3第1項)。従業者が増えれば必要な人数も増えます。業務管理者にはこの比例の発想がありません。設置基準の考え方そのものが違うのです。詳しくは専任の宅建士の設置義務と宅建業法上の事務所の要件で扱っています。
さらに法第12条第3項は「業務管理者は、他の営業所又は事務所の業務管理者となることができない」と明記しています。兼任の禁止が条文上はっきり書かれているのが特徴です。営業所が3つあれば、業務管理者も最低3人必要になります。
要件は二段構えになっている
業務管理者の要件は、法第12条第4項が国土交通省令に委ね、施行規則第14条が定めています。条文の構造は二段構えです。まず前提として「管理業務に関し二年以上の実務の経験を有する者又は国土交通大臣がその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者」であること。そのうえで、次のいずれかに該当することが求められます。第1号は「法第12条第4項の知識及び能力を有すると認められることを証明する事業として国土交通大臣の登録を受けたもの、すなわち登録証明事業による証明を受けている者」、第2号は「宅地建物取引士で、国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者」です。
ここで見落とされやすいのは、2年以上の実務経験という前提が両ルートに共通してかかっている、という点です。資格や講習だけで業務管理者になれるわけではありません。「賃貸不動産経営管理士に登録すれば業務管理者になれる」という説明は、この前提を落としています。
もうひとつ、条文の書きぶりに注意してください。施行規則第14条第1号は特定の資格名を挙げていません。国土交通大臣の登録を受けた「登録証明事業」による証明を受けている者、という抽象的な定め方をしており、施行規則第15条以下がその登録証明事業の登録要件や実施義務を細かく規定しています。制度としては、要件を満たす証明事業が複数登録される余地を残した作りになっているわけです。実務上この登録証明事業に該当するのが賃貸不動産経営管理士の資格制度であるため、一般には「賃貸不動産経営管理士か、宅建士プラス指定講習か」と説明されます。試験対策としては後者の言い方で足りますが、条文がなぜそう書かれているのかを知っておくと、細かい肢に振り回されずに済みます。
第2号のルートが宅建士に開かれていることは、宅建試験の学習者にとって実務上の意味を持ちます。宅建士登録を済ませていて、管理業務の実務経験が2年以上あるなら、指定講習の修了によって業務管理者になれます。資格の組み合わせをどう設計するかという観点は宅建と組み合わせる資格一覧で整理しています。
業務管理者が担うのは「管理及び監督に関する事務」
法第12条第1項は、業務管理者に行わせる事務を「管理受託契約の内容の明確性、管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の妥当性その他の……国土交通省令で定める事項についての管理及び監督に関する事務」と表現しています。この「管理及び監督に関する事務」という言い回しが決定的です。業務管理者は、自ら手を動かして説明や書面交付を行う担当者ではなく、それらが適正に行われるよう管理・監督する立場に置かれています。
施行規則第13条は、管理・監督の対象となる事項として8つを挙げています。法第13条の規定による書面の交付および説明に関する事項、法第14条の規定による書面の交付に関する事項、維持保全の実施および家賃・敷金・共益費その他の金銭の管理に関する事項、法第18条の帳簿の備付け等に関する事項、法第20条の定期報告に関する事項、法第21条の秘密の保持に関する事項、賃貸住宅の入居者からの苦情の処理に関する事項、そしてその他国土交通大臣が定める事項です。
つまり、管理受託契約の締結前の説明は、業務管理者自身が行わなければならないものではありません。業務管理者は、その説明が適切に行われる体制を管理・監督します。ここが、宅建業法において重要事項説明を宅建士自身が行わなければならない(宅建業法第35条第1項は、宅建業者に「宅地建物取引士をして……説明をさせなければならない」と義務づけています)のと決定的に違うところです。似たような配置義務に見えて、役割の性質がまったく違います。重要事項説明の全体像と読み比べると、この違いが鮮明になります。
欠けたときの効果と罰則
法第12条第2項は、選任した業務管理者の全てが第6条第1項第1号から第7号までのいずれかに該当し、または全てが欠けるに至ったときは、新たに業務管理者を選任するまでの間、その営業所または事務所において管理受託契約を締結してはならないと定めています。禁止されるのは新規の契約締結であって、既存の管理業務まで止まるわけではありません。宅建業法において専任の宅建士が不足した場合に2週間以内の是正義務が課される(宅建業法第31条の3第3項)のとは、対応の仕方が異なります。賃貸住宅管理業法は、期間を区切って是正を求めるのではなく、選任するまで契約を締結させない、という組み立てです。
罰則面では、法第44条第2号が第12条第1項に違反して業務管理者を選任しなかったときを、同条第3号が第12条第2項に違反して管理受託契約を締結したときを、それぞれ30万円以下の罰金の対象としています。
管理受託契約の締結前説明と締結時書面
締結前の書面交付と説明
法第13条第1項は、賃貸住宅管理業者が管理受託契約を締結しようとするときは、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容およびその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならないと定めています。これがいわゆる管理受託契約の重要事項説明です。
三つの要素を分けて押さえてください。第一に、説明の相手方は賃貸人、すなわちオーナーです。入居者ではありません。宅建業法の重要事項説明が買主や借主という取得者・借り手側に向けられているのと、向きが逆です。第二に、時期は「締結するまでに」です。契約と同時ではなく、契約の前でなければなりません。第三に、書面の交付と説明の両方が必要です。渡すだけでも、口頭で説明するだけでも足りません。
例外があります。法第13条第1項の括弧書きは、相手方が「賃貸住宅管理業者である者その他の管理業務に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるもの」である場合を除外しています。施行規則第30条がその範囲を定めており、宅地建物取引業者などが列挙されています。プロ相手には説明を省ける、という発想です。宅建業法の重要事項説明にこうした一般的な相手方による除外がないことと対比すると、この法律が想定している保護対象がはっきりします。守ろうとしているのは、賃貸経営の素人であるオーナーです。
説明すべき事項は施行規則第31条が9項目を定めています。事業者の商号・名称または氏名と登録年月日および登録番号、管理業務の対象となる賃貸住宅、管理業務の内容および実施方法、報酬の額並びにその支払の時期および方法、その報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって通常必要とするもの、管理業務の一部の再委託に関する事項、法第20条の規定による委託者への報告に関する事項、賃貸住宅の入居者に対する管理業務の内容および実施方法の周知に関する事項、管理受託契約の更新および解除に関する事項です。報酬について「額」だけでなく「支払の時期及び方法」まで、さらに報酬に含まれない実費まで説明させている点に、この規制の狙いが出ています。オーナーが後から想定外の請求を受けないようにする、という発想です。
法第13条第2項により、賃貸人の承諾を得れば、書面の交付に代えて電磁的方法による提供ができます。承諾の取り方は施行令第2条が定めており、あらかじめ用いる電磁的方法の種類と内容を示したうえで、書面等によって承諾を得るものとされています。しかも第2項後段により、いったん承諾を得ても、賃貸人から電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは提供してはならないとされています。承諾は撤回できる、ということです。
締結時の書面交付
法第14条第1項は、管理受託契約を締結したときは、委託者に対し「遅滞なく」、一定事項を記載した書面を交付しなければならないと定めています。記載事項は6号で、管理業務の対象となる賃貸住宅、管理業務の実施方法、契約期間に関する事項、報酬に関する事項、契約の更新または解除に関する定めがあるときはその内容、その他国土交通省令で定める事項です。
締結前の第13条と締結時の第14条は、時期も内容も義務の性質も違います。第13条は「締結するまでに」「書面を交付して説明」、第14条は「締結したとき」「遅滞なく」「書面を交付」です。第14条には説明義務がありません。この対比の構造は、宅建業法の35条書面と37条書面の関係とよく似ています。35条書面は契約前に説明を伴って交付し、37条書面は契約後に遅滞なく交付する。35条書面と37条書面を横断で整理するや37条書面の記載事項で扱った枠組みが、そのまま応用できます。
ただし、決定的に違う点があります。宅建業法の35条書面と37条書面には宅建士の記名が必要ですが(宅建業法第35条第5項、第37条第3項)、賃貸住宅管理業法の第13条書面と第14条書面には、業務管理者の記名を要求する規定がありません。ここは混同しやすいので、条文にないものはないと割り切ってください。
なお、法第14条第2項は第13条第2項を準用しており、締結時書面も委託者の承諾があれば電磁的方法で提供できます。違反した場合、法第44条第4号により30万円以下の罰金の対象です。
管理受託契約に付随するその他の業務規制
全部の再委託は禁止、一部は可能
法第15条は「賃貸住宅管理業者は、委託者から委託を受けた管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならない」と定めています。禁止されているのは全部の再委託です。一部の再委託は禁止されていません。だからこそ、施行規則第31条第6号が締結前の説明事項として「管理業務の一部の再委託に関する事項」を挙げているわけです。一部再委託が可能だから、事前に説明させる。条文どうしのつながりで理解すると忘れません。
「全部」の判断は、契約を分割して形式的に一部ずつ委託すれば回避できる、というものではありません。自らは何ら管理業務を行わず実質的に丸投げしている場合は、全部再委託と評価されます。名義貸しの禁止(法第11条)と並んで、実体のない事業者を排除するための規定です。
分別管理は口座の区分と帳簿による判別
法第16条は、管理受託契約に基づく管理業務のうち金銭の管理において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産および他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する金銭と分別して管理しなければならないと定めています。
その方法を定める施行規則第36条は、金銭を管理するための口座を自己の固有財産を管理するための口座と明確に区分し、かつ、当該金銭がいずれの管理受託契約に基づくものであるかが自己の帳簿により直ちに判別できる状態で管理する方法、としています。ここを正確に読んでください。事業者の財布と預り金の財布は口座レベルで分けなければなりません。しかし、管理受託契約ごとに別々の口座を開設することまでは求められていません。契約ごとの区別は帳簿上で直ちに判別できればよい、という設計です。「オーナーごとに口座を分けなければならない」という肢は誤りになります。
帳簿、標識、証明書、定期報告、秘密保持
法第18条は、営業所または事務所ごとに業務に関する帳簿を備え付け、委託者ごとに管理受託契約について契約年月日その他の事項を記載し、保存することを求めています。法第19条は、営業所または事務所ごとに、公衆の見やすい場所に国土交通省令で定める様式の標識を掲げることを義務づけています。帳簿と標識が「営業所又は事務所ごと」に課されるという点は、宅建業法の帳簿・標識と同じ発想です。法第17条は、業務に従事する使用人その他の従業者に従業者証明書を携帯させなければその者を業務に従事させてはならないとし、第2項で、委託者その他の関係者から請求があったときの提示義務を定めています。
法第20条は「管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について……定期的に、委託者に報告しなければならない」と定めています。施行規則第40条は、管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、および管理受託契約の期間の満了後遅滞なく、管理業務報告書を作成して委託者に交付し、説明しなければならないとしています。「1年を超えない期間ごと」ですから、少なくとも年1回は必要です。報告事項には、入居者からの苦情の発生状況および対応状況が含まれています。オーナーが物件の実情を把握できるようにするための規定です。
法第21条は秘密保持義務を定めます。第1項が賃貸住宅管理業者について、第2項が代理人、使用人その他の従業者についてで、いずれも「正当な理由がある場合でなければ」漏らしてはならないとし、業務を離れた後も同様だとしています。事業者本人だけでなく従業者にも直接義務がかかり、退職後も続く、という二点が特徴です。違反すると法第44条第7号により30万円以下の罰金の対象になります。
サブリースに対する規制
特定賃貸借契約と特定転貸事業者、そして勧誘者
法第2条第4項は、特定賃貸借契約を「賃貸住宅の賃貸借契約であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるもの」と定義しています。オーナーと業者の間で結ばれる、いわゆるマスターリース契約のことです。同条第5項は、特定転貸事業者を「特定賃貸借契約に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営む者」と定義しています。
定義の括弧書きに例外があります。賃借人が「人的関係、資本関係その他の関係において賃貸人と密接な関係を有する者として国土交通省令で定める者」である場合は、特定賃貸借契約から除かれます。施行規則第2条が、賃貸人が個人である場合の親族や、賃貸人またはその親族が役員である法人などを具体的に列挙しています。同族間のサブリースは規制の対象外だ、という趣旨です。オーナーが業者にだまされることを防ぐ規制なので、身内どうしなら外す、という割り切りです。
第3章の規制がかかる主体は、特定転貸事業者だけではありません。法第28条は「特定転貸事業者又は勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう)」をまとめて「特定転貸事業者等」と呼び、規制の名宛人にしています。勧誘者とは、サブリース業者から勧誘を行わせる者のことで、業者と資本関係がなくても該当します。オーナーに営業をかける第三者にも直接規制が及ぶ、という点はこの章の大きな特徴です。
そして最も重要なのが、これらの規制が賃貸住宅管理業の登録を受けているかどうかにかかわらず適用される、という点です。第3章の条文はどこにも「賃貸住宅管理業者は」とは書いていません。名宛人は特定転貸事業者と勧誘者です。管理戸数が200戸に満たず登録義務がない業者でも、サブリース事業を営めば第3章の規制はまるごとかかります。
誇大広告等の禁止
法第28条は、特定転貸事業者等が特定賃貸借契約の条件について広告をするときに、家賃、維持保全の実施方法、契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、「著しく事実に相違する表示」をし、または「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」をしてはならないと定めています。
対象事項は施行規則第42条が四つを挙げています。相手方に支払う家賃の額、支払期日および支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項、賃貸住宅の維持保全の実施方法、維持保全に要する費用の分担に関する事項、そして特定賃貸借契約の解除に関する事項です。家賃の「変更に関する事項」が明示されているのは、いわゆる家賃保証をうたいながら実際には減額される、という被害が繰り返されたからです。修繕費を誰が負担するのか、業者側から解約できるのかという二点も、トラブルが集中してきた領域です。
宅建業法にも誇大広告等の禁止があります(宅建業法第32条)。両者は文言も発想もよく似ていますが、対象となる事項の範囲と保護の名宛人が違います。宅建業法の側は宅建業法の広告規制で扱っています。また、不当景品類及び不当表示防止法による規制も別に働きます(景品表示法と不動産広告)。同じ広告でも、複数の法律が層になってかかっているという構造を意識してください。
不当な勧誘等の禁止
法第29条第1号は、特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し、またはその解除を妨げるため、相手方または相手方となろうとする者に対し、判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項につき「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁じています。故意の不告知と不実告知です。
同条第2号は、相手方等の保護に欠けるものとして国土交通省令で定める行為を禁じ、施行規則第43条が四つの類型を定めています。相手方等を威迫する行為、迷惑を覚えさせるような時間に電話または訪問により勧誘する行為、深夜または長時間の勧誘その他の私生活または業務の平穏を害するような方法により相手方等を困惑させる行為、そして契約の締結または更新をしない旨の意思を表示した相手方等に対して執ように勧誘する行為です。最後の類型の括弧書きには「当該契約の締結又は更新の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む」とあり、契約自体を断っていなくても「勧誘は結構です」と言われた時点で執ような勧誘は禁止されます。
これらは、宅建業法第47条の2および同法施行規則が定める業務に関する禁止事項と、内容がかなり重なります。断定的判断の提供、威迫、迷惑時間の勧誘といった禁止行為の並びは宅建業法47条の禁止行為で扱っており、同じ立法技術が使われていることがわかります。
罰則の重さに注目してください。法第42条第2号は、第29条第1号違反、すなわち故意に事実を告げずまたは不実のことを告げたときについて、6月以下の拘禁刑もしくは50万円以下の罰金、またはこれを併科すると定めています。一方、法第44条第10号は、第28条の誇大広告等の禁止違反を30万円以下の罰金にとどめています。不当な勧誘のほうが誇大広告より重い、という軽重の差は覚えておく価値があります。
締結前の重要事項説明と締結時の書面
法第30条第1項は、特定転貸事業者が特定賃貸借契約を締結しようとするときは、相手方となろうとする者に対し、締結するまでに、国土交通省令で定める事項について書面を交付して説明しなければならないと定めています。管理受託契約の第13条と同じ形ですが、義務者が違います。第30条の主語は「特定転貸事業者」であって、「特定転貸事業者等」ではありません。つまり勧誘者には説明義務がありません。誇大広告と不当な勧誘の禁止は勧誘者にもかかるのに、重要事項説明義務はかからない、という違いです。試験でここを入れ替えた肢が作られやすいので注意してください。
説明事項は施行規則第45条が14項目を定めており、管理受託契約の9項目より厚くなっています。事業者の商号・名称または氏名および住所、対象となる賃貸住宅、相手方に支払う家賃の額・支払期日・支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項、維持保全の実施方法、維持保全に要する費用の分担に関する事項、維持保全の実施状況の報告に関する事項、損害賠償額の予定または違約金に関する事項、責任および免責に関する事項、契約期間に関する事項、転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項、転借人に対する維持保全の実施方法の周知に関する事項、契約の更新および解除に関する事項、契約が終了した場合における特定転貸事業者の権利義務の承継に関する事項、そして借地借家法その他特定賃貸借契約に係る法令に関する事項の概要です。
最後の項目が置かれている理由は明確です。マスターリース契約は建物の賃貸借契約ですから、借地借家法の借家部分が適用されます。借地借家法第32条の借賃増減請求権により、業者側から家賃の減額を請求できます。また同法第28条の正当事由の仕組みにより、オーナー側からの更新拒絶や解約は容易ではありません。「家賃保証」という言葉から受ける印象と、法律上の実際の帰結との落差こそがサブリース問題の核心でした。だからこそ、借地借家法の概要まで説明させることになったのです。
法第31条第1項は、契約を締結したときに遅滞なく交付すべき書面の記載事項を7号で定めています。対象となる賃貸住宅、相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項、特定転貸事業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法、契約期間に関する事項、転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項、契約の更新または解除に関する定めがあるときはその内容、その他国土交通省令で定める事項です。第7号を受けた施行規則第47条が、事業者の商号等、維持保全に要する費用の分担、維持保全の実施状況の報告、損害賠償額の予定または違約金の定め、責任および免責の定め、転借人への周知、権利義務の承継について追加しています。
法第43条は、第30条第1項または第31条第1項に違反して書面を交付せず、または記載を欠いた書面や虚偽の記載のある書面を交付したときを、50万円以下の罰金の対象としています。管理受託契約側の第14条違反が30万円以下であることと比べると、サブリース側のほうが重く設定されています。
書類の閲覧と、監督の仕組み
法第32条は、特定転貸事業者に対し、業務および財産の状況を記載した書類を営業所または事務所に備え置き、相手方または相手方となろうとする者の求めに応じて閲覧させることを義務づけています。施行規則第48条により、その書類は業務状況調書、貸借対照表および損益計算書またはこれらに代わる書面です。オーナーが契約前に業者の経営状態を確かめられるようにするための規定で、家賃保証をうたう業者が破綻すれば保証は絵に描いた餅になる、という経験を踏まえたものです。
監督は法第33条以下です。第33条第1項は、特定転貸事業者が第28条から第32条までに違反した場合等に、国土交通大臣が是正のための措置を指示できるとし、第2項は、勧誘者が第28条または第29条に違反した場合に勧誘者に対して指示できるとしています。そして第3項は「国土交通大臣は、前二項の規定による指示をしたときは、その旨を公表しなければならない」と定めています。公表は任意ではなく義務です。第34条は業務停止命令等を定め、1年以内の期間を限って勧誘の停止や特定賃貸借契約に関する業務の全部または一部の停止を命ずることができるとし、こちらも第3項で公表を義務づけています。
さらに法第35条第1項は「何人も、特定賃貸借契約の適正化を図るため必要があると認めるときは、国土交通大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができる」と定めています。申出ができるのは契約の当事者に限られません。誰でも申し出ることができ、第2項により大臣は必要な調査を行い、内容が事実であると認めるときは措置をとらなければなりません。
宅建業法の媒介・代理と、管理業務はどう違うのか
宅建業の定義に管理業務は入っていない
宅建業法第2条第2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。列挙されているのは、自ら売買、自ら交換、そして売買・交換・貸借の代理と媒介です。ここに管理業務はありません。したがって、賃貸住宅の管理を受託しても、それだけでは宅建業には当たらず、宅建業免許は不要です。
同じ理由で、自ら貸借も宅建業には当たりません。定義の中に「自ら貸借」が入っていないからです。この帰結は宅建試験で繰り返し問われるところで、宅建業の「業」に当たるケースと当たらない例で詳しく扱っています。サブリース業者は、オーナーから物件を借り、それを転貸します。転貸も自ら貸借の一場面ですから、サブリース事業それ自体には宅建業免許が要りません。宅建業法が届かないところで大規模な被害が生じたことが、賃貸住宅管理業法の第3章が作られた背景にあります。
重なる場面と、二重にかかる規制
もっとも、実務では両方の規制が同時にかかる場面が多くあります。管理会社が入居者の募集を行い、オーナーと入居者の間の賃貸借契約を仲立ちすれば、それは「貸借の媒介」ですから宅建業に当たり、宅建業免許が必要です。媒介であれば媒介契約の規制や取引態様の明示義務がかかり、入居者に対しては賃貸借契約の重要事項説明を宅建士が行わなければなりません。同じ会社が同じ物件について、オーナーに対しては賃貸住宅管理業法の第13条説明を行い、入居者に対しては宅建業法の35条説明を行う、という状態になります。
宅建業免許を持っているから賃貸住宅管理業の登録は不要だ、という関係にもなりません。二つは別の法律に基づく別の資格制度です。管理戸数が200戸以上あれば、宅建業者であっても賃貸住宅管理業の登録が必要です。逆に、賃貸住宅管理業の登録を受けても、貸借の媒介を業として行うなら宅建業免許が別に要ります。免許と登録は積み上がるものであって、代替関係にはありません。
サブリースの場面ではもう一段複雑になります。サブリース業者がマスターリース契約を結ぶ行為は自ら貸借なので宅建業ではありませんが、そのマスターリース契約の締結を第三者が媒介すれば、その第三者は貸借の媒介を行っていることになり宅建業に該当し得ます。そしてその第三者がサブリース業者から勧誘を行わせる者であれば、賃貸住宅管理業法上の勧誘者として第28条と第29条の規制も受けます。誰がどの立場で何をしているかを分解しないと、適用される法律を取り違えます。
管理業界の実務との接点
管理会社の日常業務は、入居者募集、契約手続、家賃の収納と送金、クレーム対応、退去時の原状回復の精算、建物の点検と修繕の手配、といった幅を持ちます。このうち、契約の仲立ちに当たる部分は宅建業法が、維持保全と金銭管理に当たる部分は賃貸住宅管理業法が規律します。原状回復や敷金の精算は民法と借地借家法の問題で、敷金と礼金の法的な扱いや民法の賃貸借の理解が前提になります。管理会社という職場のイメージそのものは不動産管理会社の仕事内容で扱っています。
試験での出題ポイント
宅建試験における位置づけを正確に把握する
まず率直に述べておきます。宅建試験で試験すべき事項は、宅地建物取引業法施行規則第8条が7分野を挙げており、土地建物の形質・構造、権利および権利の変動に関する法令、法令上の制限、税に関する法令、需給に関する法令および実務、価格の評定、そして宅地建物取引業法および同法の関係法令、というものです。賃貸住宅管理業法は、この7分野に正面から位置づけられている法律ではありません。したがって、この法律の条文知識をそのまま問う出題を宅建試験の主戦場と考えるのは適切ではありません。
では宅建試験の学習者にとって何が問われるのか。問われるのは境界です。ある行為が宅建業に当たるか当たらないか、ある義務が宅建業法上のものか別の法律のものか、という切り分けが宅建業法の分野で繰り返し出題されます。自ら貸借は取引に当たらない、管理の受託は取引に当たらない、という結論は、賃貸住宅管理業法という別の法律が存在することを知っていると、なぜそうなのかまで含めて腹に落ちます。逆に、賃貸住宅管理業法の規制を宅建業法の規制と取り違えると、免許の要否や重要事項説明の要否で失点します。
そのうえで、賃貸不動産経営管理士試験ではこの法律が中心科目になります。宅建の学習を土台に管理分野へ進む場合、本記事の内容はそのまま次の試験の骨格になります。
混同を誘う典型パターン
出題者が仕掛けてくる混同は、いくつかの型に整理できます。
第一に、数字の入れ替えです。登録が必要な規模は200戸未満なら不要、登録の有効期間は5年、業務管理者は営業所または事務所ごとに1人以上、定期報告は1年を超えない期間ごと。これらの数字を互いに入れ替えたり、宅建業法の数字と交換したりする作り方が基本です。宅建業法の数字は宅建業法の数字を横断で覚えるに集めてあるので、隣に並べて確認してください。
第二に、義務者の入れ替えです。特定賃貸借契約の締結前の重要事項説明義務は特定転貸事業者にあり、勧誘者にはありません。しかし誇大広告等の禁止と不当な勧誘等の禁止は勧誘者にも及びます。この非対称を逆にした肢が作られます。
第三に、義務の性質の入れ替えです。管理受託契約の締結前は書面交付と説明の両方、締結時は書面交付のみ。業務管理者は管理・監督を行う立場で、自ら説明する義務者ではない。宅建士は35条説明を自ら行う義務者である。この三点をすり替えるパターンです。
第四に、適用範囲の入れ替えです。第3章のサブリース規制は登録の有無を問わず適用されます。「登録を受けていない事業者にはサブリース規制も適用されない」という肢は誤りです。
第五に、程度の入れ替えです。管理業務の再委託は「全部」が禁止で一部は可能。分別管理は固有財産との口座区分は必要だが契約ごとの口座分けまでは不要。「すべて禁止」「すべて必要」と言い切る肢は疑ってかかってください。
第六に、罰則の軽重です。無登録営業と名義貸しが最も重く、不当な勧誘のうち故意の不告知・不実告知には拘禁刑があり、誇大広告は罰金のみ。この序列を崩した肢が作られます。罰則の体系は宅建業法の罰則一覧と並べると、立法者の価値判断の付け方が見えてきます。
覚え方・整理の仕方
まず「二階建て」の絵を描く
この法律を覚えるときの出発点は、第2章と第3章を物理的に分けて紙に書くことです。左に第2章、右に第3章と書き、それぞれの下に「誰に」「何を」を書き込みます。左は登録した賃貸住宅管理業者に対する登録と業務のルール、右はすべての特定転貸事業者と勧誘者に対する行為のルールです。左は200戸という入口があり、右には入口がありません。この絵さえ描ければ、条文がどちらの部屋に属するかを迷わなくなります。
数字は宅建業法と隣に並べる
有効期間5年は宅建業免許と同じ。設置義務の単位は、宅建業法が業務従事者5人に1人、賃貸住宅管理業法が営業所または事務所ごとに1人。届出期限30日は、賃貸住宅管理業法の第7条(変更の届出)・第9条(廃業等の届出)と、宅建業法の変更の届出・廃業等の届出で共通しています。定期報告は1年を超えない期間ごと。登録が必要な規模は200戸。数字は単独で覚えず、必ず宅建業法の対応する数字と対にして覚えると、片方を思い出せばもう片方も出てきます。
「前は説明、後は交付」で二つの法律をまたぐ
管理受託契約の第13条と第14条、特定賃貸借契約の第30条と第31条、宅建業法の第35条と第37条。三組とも「契約前は書面を交付して説明、契約後は遅滞なく書面を交付」という同じ形をしています。この共通の型を先に頭に入れておき、そのうえで違いだけを覚えるのが効率的です。違いは三つ。相手方が誰か(管理受託はオーナー、サブリースはオーナー、宅建業法は取得者・借主)、専門家の記名が要るか(宅建業法だけ要る)、説明を誰が行うか(宅建業法だけ宅建士が行う)。この三つだけを付箋のように貼り付けます。
禁止行為は被害の形から逆算する
誇大広告の対象4項目、不当な勧誘の禁止4類型は、丸暗記すると抜けます。これらはすべて、実際に起きた被害の形に対応しています。家賃が下げられた、修繕費を押し付けられた、業者から一方的に解約された。この三つが誇大広告の対象事項のうち三つに直結します。しつこく電話が来た、夜遅くに訪ねてきた、断ったのにまた来た、脅すような口調だった。この四つが不当な勧誘の4類型です。被害の情景から引き出すほうが、条文番号から引き出すより速く正確です。
借地借家法とセットで理解する
サブリース規制がなぜ必要だったかは、借地借家法を知らないと理解できません。マスターリース契約は建物賃貸借であり、業者は借地借家法第32条により賃料の減額を請求でき、オーナー側からの解約や更新拒絶には同法第28条の正当事由が要ります。つまり「30年家賃保証」という宣伝文句は、法律上は保証になっていない可能性があります。だから施行規則第45条は説明事項の最後に借地借家法の概要を置いたのです。定期借家契約の仕組みまで含めて借家法制を押さえておくと、この規制の必然性が見えます。
理解度チェッククイズ
各問について、正しければ○、誤っていれば×で答えてください。
Q1. 賃貸住宅管理業の登録を受けていない事業者には、特定賃貸借契約に関する誇大広告等の禁止は適用されない。
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答えは×です。法第28条の名宛人は「特定転貸事業者又は勧誘者」であり、賃貸住宅管理業の登録を受けているかどうかは要件になっていません。第3章の規制は、登録の有無にも管理戸数の多寡にもかかわらず、すべての特定転貸事業者と勧誘者に適用されます。第2章の登録制度が200戸という規模要件(施行規則第3条)で対象を絞っているのと対照的で、この非対称がこの法律の設計の要点です。Q2. 賃貸不動産経営管理士の登録を受けていれば、実務経験の有無にかかわらず業務管理者になることができる。
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答えは×です。施行規則第14条は、業務管理者の要件を「管理業務に関し二年以上の実務の経験を有する者又は国土交通大臣がその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者」であることを前提としたうえで、第1号の登録証明事業による証明を受けている者か、第2号の宅地建物取引士で国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者か、のいずれかに該当することを求めています。2年以上の実務経験という前提は、どちらのルートにも共通してかかります。Q3. 賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結したときは、委託者に対し遅滞なく所定の事項を記載した書面を交付しなければならないが、その書面について説明をする義務はない。
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答えは○です。法第14条第1項が定めるのは「遅滞なく」「書面を交付」することであり、説明義務は規定されていません。説明義務があるのは締結前の法第13条第1項で、こちらは「締結するまでに」「書面を交付して説明しなければならない」と定めています。宅建業法における35条書面と37条書面の関係と同じ構造です。なお、第14条書面についても業務管理者の記名を要求する規定はありません。Q4. 賃貸住宅管理業者は、委託者から委託を受けた管理業務の一部を他の者に再委託することができない。
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答えは×です。法第15条が禁止しているのは管理業務の「全部」の再委託であり、一部の再委託は禁止されていません。一部再委託が可能であることを前提に、施行規則第31条第6号は「管理業務の一部の再委託に関する事項」を締結前の説明事項として挙げています。ただし、自らは実質的に何ら管理業務を行わず丸投げしている場合は、契約書の形式にかかわらず全部再委託と評価されます。Q5. 賃貸住宅管理業者は、管理業務において受領する家賃等について、管理受託契約ごとに別個の口座を開設して管理しなければならない。
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答えは×です。施行規則第36条が求めているのは、金銭を管理するための口座を自己の固有財産を管理するための口座と明確に区分すること、および当該金銭がいずれの管理受託契約に基づくものであるかが自己の帳簿により直ちに判別できる状態で管理することの二点です。固有財産との口座レベルの分離は必要ですが、管理受託契約ごとの口座分けまでは求められておらず、契約ごとの区別は帳簿上で判別できれば足ります。まとめ
賃貸住宅管理業法は、第2章の登録制度と第3章のサブリース規制という、対象範囲の異なる二つの規制を束ねた法律です。登録制度は管理戸数200戸以上の事業者に登録を義務づけ(法第3条第1項、施行規則第3条)、営業所または事務所ごとに1人以上の業務管理者の選任を求め(法第12条第1項)、管理受託契約について締結前の書面交付・説明(法第13条)と締結時の書面交付(法第14条)を課します。サブリース規制は、誇大広告等の禁止(法第28条)、不当な勧誘等の禁止(法第29条)、特定賃貸借契約の締結前の書面交付・説明(法第30条)と締結時の書面交付(法第31条)を、登録の有無を問わずすべての特定転貸事業者と勧誘者に及ぼします。
宅建試験との関係では、この法律そのものが正面から問われるわけではありません。問われるのは、宅建業法が届く範囲との境界です。自ら貸借と管理の受託は宅建業に当たらない。だから宅建業法だけでは賃貸管理とサブリースを規律できず、別の法律が必要になった。この因果を押さえておけば、宅建業法の免許の要否や重要事項説明の要否を判断するときの足場が一段しっかりします。
宅建業法の条文知識を実際の出題形式で確かめるには、アプリの宅建業法の肢別トレーニングで演習してみてください。
税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。