登記申請の代理権の不消滅とうきしんせいのだいりけんのふしょうめつ
登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡などの事由によっては消滅しないという決まりです(不動産登記法17条)。民法では本人の死亡で代理権が消滅するのが原則ですが、登記の申請の代理についてはその例外になります。
土地の売買の決済で、売主と買主は司法書士に委任状を渡し、所有権の移転の登記の申請を任せます。ところが、司法書士が申請をする前に、売主が急に亡くなってしまいました。民法の原則では、本人が死亡すると代理権は消滅するので、司法書士は売主の代理人として申請できなくなるはずです。しかし不動産登記法17条は、登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては消滅しないと定めています。司法書士は、もらっていた委任状でそのまま登記を申請できます。

民法の原則では、本人が死亡すると代理権は消滅します
民法111条1項1号は、代理権の消滅事由として「本人の死亡」を挙げています。代理は本人のために行うものなので、本人がいなくなれば代理権も終わるのが原則です。委任による代理権は、委任の終了によっても消滅し、委任は委任者又は受任者の死亡によって終了します(民法111条2項・653条1号)。不動産登記法17条は、この原則に対する特別の定めです。
登記申請の代理権は、本人の死亡などでは消滅しません
17条が挙げる事由は四つです。本人の死亡、本人である法人の合併による消滅、本人である受託者の信託に関する任務の終了、法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更です。条文に理由は書いていませんが、売買などの原因はすでに生じていて、登記の申請はそれを登記記録に反映させる手続にすぎず、代理権を消滅させても相続人が改めて同じ委任をするだけになるためと考えられます。決済を終えた相手方にとっても、登記が止まらずに済みます。

消滅しないのは、委任による代理人の権限です
17条の対象は「登記の申請をする者の委任による代理人の権限」です。本人から登記の申請を頼まれた代理人の権限が、本人の側に生じた事情で途切れないようにする規定です。17条が挙げているのは本人や法定代理人の側の事由だけで、委任を受けた代理人自身の死亡は挙げられていません。代理人が死亡したときは、民法の原則どおり代理権は消滅します(民法111条1項2号)。
不動産登記法 17条登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。一 本人の死亡 二 本人である法人の合併による消滅 三 本人である受託者の信託に関する任務の終了 四 法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更
試験ではこう問われる
- 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、本人の死亡によっては消滅しない(17条1号)
- 「本人の死亡によって消滅する」は民法111条1項1号の原則。登記の申請の代理には不動産登記法17条が適用される
- 本人である法人の合併による消滅、本人である受託者の信託に関する任務の終了、法定代理人の死亡又はその代理権の消滅・変更によっても消滅しない(17条2号から4号)
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