公務員と宅建|固定資産税課・用地課で重なる条文
公務員の業務と宅建の学習範囲が条文レベルでどこまで重なるかを検証。固定資産税課・用地課・建築指導課の実務は試験範囲と重なり、配点最大の宅建業法20問は重なりません。資格手当や学習時間の数字は扱いません。
目次
この記事は、公務員が宅建(宅地建物取引士)を受けるかどうかを判断するために、行政の実務と宅建の学習範囲が条文レベルでどこまで重なるのかを検証するものです。資格そのものの位置づけは「宅建士とは」を、受験者層の実像は「宅建の受験者データ」を先に読むと、この記事の話が置かれている位置がつかみやすくなります。
結論を先に述べます。公務員の実務と宅建の出題範囲は、部署によって重なり方が極端に違います。固定資産税課の業務は、地方税法343条・350条・351条・359条・349条の3の2・382条の2・416条・432条という条文の運用そのものであり、これらはいずれも宅建の「税・その他」で出題される条文です。用地課であれば土地収用法・国土利用計画法・都市計画法の事業制限が、建築指導課であれば建築基準法が、都市計画課であれば都市計画法の体系が、それぞれ実務と試験範囲の同じ場所を指しています。実務が試験範囲になっているという状況は、他の職業ではあまり起きません。
一方で、配点が最大の宅建業法20問は、公務員の業務とほとんど重なりません。それどころか、宅建業法78条1項は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」と定めています。自治体が公有地を売り払っても、公共用地を買収しても、宅建業法の規律は及びません。公務員は、この20問の科目を制度の外側から、ゼロに近い状態で覚えることになります。権利関係14問で問われる判例知識も同様です。
したがって、この記事がたどりつく実用的な結論はひとつです。有利な8問に安心せず、宅建業法20問に最も時間を割く。以下、どこが重なりどこが重ならないかを条文で分けていきます。
判断材料に何を使うか
令和7年度データに「公務員」という区分はない
使える公表値から始めます。令和7年度の宅建試験は、申込306,099人に対して受験245,462人(受験率80.2%)、合格45,821人で合格率18.7%、合格点は33点でした。合格者の平均年齢は36.2歳です。
職業別の内訳は、不動産業33.2%、建設業8.7%、金融8.1%、他業種27.9%、学生10.9%、その他11.3%となっています。ここで正直に書いておかなければならないのは、この分類に「公務員」という独立した区分が存在しないことです。公表されているのは上の6区分だけであり、公務員がどこに集計されているかは公表資料からは確定できません。位置づけとしては「他業種」に含まれていると推測するのが自然ですが、その27.9%が何で構成されているかの内訳は示されていないため、推測の域を出ません。
つまり、「公務員の受験者が何人いる」「公務員の合格率は何パーセント」という数字を、この記事は示せません。示している記事があるとすれば、それは公表値ではない何かを根拠にしています。年度ごとの推移や属性データの読み方は「宅建の受験者データ」で扱っています。
資格手当は「条例次第」であって、相場ではない
民間向けの資格記事では資格手当の月額が語られます。公務員の場合、この問題はもう一段深いところにあります。
地方公務員法24条5項は「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」と定めています。地方自治法204条2項は、普通地方公共団体が条例で支給できる手当を列挙しており、扶養手当、地域手当、住居手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、時間外勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、退職手当などが並びます。この列挙のなかに「資格手当」という名目の手当はありません。そして同法204条の2は、「いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基づく条例に基づかずには、これを支給することができない」と定めています。
ここから言えるのは、地方公務員に対する金銭の支給は、法律またはそれに基づく条例に根拠がなければ行えないということだけです。民間企業のように、人事部の判断で資格手当の項目を作れる構造にはなっていません。宅建の取得に対して何らかの金銭的措置がある自治体があるとしても、それは各団体の条例・規則によるものであり、業界の相場という形で存在するものではありません。国家公務員についても、手当は一般職の職員の給与に関する法律が定める枠内で運用されます。
したがって、確認すべきは相場ではなく、自分の団体の給与条例と規則に該当する定めがあるかです。これは検索して分かることではなく、庁内の例規集を引けば数分で分かることです。資格手当という制度そのものの考え方は「宅建の資格手当」で整理しています。
年収の数字も扱わない
厚生労働省の賃金構造基本統計調査には「宅地建物取引士」という職業区分がありません。資格保有者だけを取り出した賃金データが存在しないということです。公務員に限定すればなおのこと、「宅建を取得した職員」という母集団の給与を追跡した公的調査はありません。
さらに公務員の場合、給料は職務の級と号給で決まります。地方公務員法24条1項は「職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない」と定めており、保有資格が直接に給料月額を動かす構造ではありません。「宅建を取れば年収が上がる」という命題は、公務員については一般論として成立しないと考えたほうが正確です。年収の考え方は「宅建士の年収」を参照してください。
学習時間の短縮率という数字は存在しない
宅建の合格に必要な学習時間を、国も試験実施機関も公表していません。まして「公務員なら何割短縮できる」「税務職なら何時間で足りる」という職種別の調査は存在しません。
公務員が条文を読む作業に慣れていること自体は、後述するとおり具体的に説明できます。しかしそれは特定の科目についての話であって、試験全体の学習量が何割減るという話ではありません。むしろこの記事の分析が示すのは逆の結論です。有利な範囲は8問側にあり、不利な範囲は20問側にあります。短縮を前提に計画を削ると、配点20点の科目に手が回らなくなります。進捗は時間の累計ではなく、過去問で何点取れるようになったかで測ってください。科目別の得点計画は「宅建の科目別攻略法」で扱っています。
この記事が使う物差し
代わりに使う物差しは、行政の実務で扱う条文と、宅建の出題範囲が条文レベルでどこまで一致するかの一点です。条文と公表統計だけで検証できます。
なお、宅建試験は当該年度の4月1日現在施行されている法令から出題されます。令和8年度(2026年10月18日)の正解は2026年4月1日時点の条文で決まります。この記事で引用する条文は、すべて2026年4月1日時点で施行されているものを確認したうえで書いています。現場で最新の法令を参照している人ほどこのずれに足をすくわれるので、自分で条文を引くときは施行日を見る習慣をつけてください。
公務員は条文の「行政庁の側」に立っている
部署ごとの話に入る前に、公務員が宅建を学ぶときに効いてくる構造をひとつ確認しておきます。同じ法律でも、公務員が日常的に読んでいるのは行政庁を名宛人とする条文であり、宅建で問われるのは私人・事業者を名宛人とする条文だということです。これは有利さの源でもあり、失点の源でもあります。
建築基準法18条 — 官公庁の建築物に6条は適用されない
建築基準法6条1項は、建築主に対し、一定の建築物について工事着手前に建築主事等の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならないと定めています。対象は3号構成で、1号が別表第一(い)欄の用途に供する特殊建築物でその用途部分の床面積合計が200平方メートルを超えるもの、2号が1号以外で2以上の階数を有し、または延べ面積が200平方メートルを超える建築物、3号が1号2号以外で都市計画区域・準都市計画区域・準景観地区内などにおける建築物です。
ところが同法18条1項は、国、都道府県または建築主事を置く市町村の建築物および建築物の敷地については、6条から7条の6まで、9条から9条の3まで、10条および90条の2の規定を適用しないと定めています。適用しないうえで、18条2項以下が別の手続を用意します。建築主が国等である場合、当該国の機関の長等は工事着手前にその計画を建築主事等に通知しなければならず、建築主事等は6条4項の期間内に建築基準関係規定への適合を審査します。実務でいう「計画通知」です。
庁舎や学校を建てる側にいた職員は、この18条のルートを知っています。しかし宅建で出題されるのは6条のルートです。確認申請と確認済証、そして完了検査と検査済証。18条の記憶が邪魔をすると、6条の号構成や期間を正確に覚え直す動機が生まれません。建築基準法の全体像は「建築基準法の要点」で扱っています。
都市計画法34条の2 — 国・都道府県等の開発行為は協議で足りる
同じ構造が開発許可にもあります。都市計画法29条1項は、都市計画区域または準都市計画区域内において開発行為をしようとする者に、あらかじめ都道府県知事(指定都市等の区域内では当該指定都市等の長)の許可を受けることを義務づけます。
これに対し34条の2第1項は、国または都道府県、指定都市等、事務処理市町村等が行う開発行為については、当該国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、開発許可があったものとみなすと定めています。許可申請ではなく協議です。公共事業の開発行為を担当している職員は、この協議のほうを実務として経験しています。
宅建で問われるのは29条の側、すなわち許可の要否、規模要件、許可不要となる場合の列挙です。34条の2は出題されないわけではありませんが、中心ではありません。開発許可の全体は「開発許可制度」を参照してください。
農地法4条1項2号にも同じ構造がある
農地法4条1項は、農地を農地以外のものにする者に都道府県知事等の許可を義務づけたうえで、ただし書で例外を並べます。その2号が、国または都道府県等が、道路、農業用用排水施設その他の地域振興上または農業振興上の必要性が高いと認められる施設であって農林水産省令で定めるものの用に供するため、農地を農地以外のものにする場合です。この場合は許可を要しません。
公共事業で農地を潰す側にいると、この例外が出発点になります。宅建で問われるのは原則の側、つまり4条・5条の許可権者と、市街化区域内の農地についての届出の特例です。農地法の整理は「農地法の要点」で扱っています。
宅建業法78条1項 — 国及び地方公共団体には適用しない
そして最も大きい断絶が宅建業法にあります。同法78条1項は一文です。「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。」
宅建業法2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義します。自治体が公有財産を反復継続して売り払っても、公共用地を買収しても、この定義に形式的にあてはまる余地はあります。しかし78条1項がそれを丸ごと外します。免許も不要、営業保証金も不要、重要事項説明も37条書面も不要です。
公務員が宅建業法をゼロから学ばなければならない理由が、この一文に凝縮されています。業務で不動産を扱っていても、その業務に宅建業法は一度も適用されていません。宅建業法の全体像は「宅建業法の全体像」で確認してください。
有利さも失点も同じ場所から来る
以上の4つは別々の法律の話ですが、構造は同じです。公務員は行政庁の側、あるいは適用除外の側から法律を見てきている。これは法律の建て付けを理解している状態であり、初学者より有利です。同時に、試験が問うのは反対側の条文なので、既知感が正確さに直結しません。「知っている」と「条文で答えられる」の間に距離があるという点は、他の実務者と同じか、それ以上です。
固定資産税課 — 実務がそのまま出題範囲になる
ここからが、重なりが最も濃い領域です。固定資産税は宅建の「税・その他」で出題される地方税の中心であり、その運用条文が固定資産税課の業務そのものです。
誰に課すか — 343条
地方税法343条1項は、固定資産税を固定資産の所有者に課すると定めます。括弧書きで例外があり、質権または100年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その質権者または地上権者が納税義務者になります。
同条2項は、その「所有者」を定義します。土地または家屋については、登記簿または土地補充課税台帳・家屋補充課税台帳に所有者として登記または登録がされている者です。真の所有者ではなく、台帳に載っている者です。ただし、所有者として登記・登録されている個人が賦課期日前に死亡しているとき、法人が同日前に消滅しているときなどは、同日において当該土地または家屋を現に所有している者を指します。3項は償却資産について、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者と定めます。
さらに4項は、所有者の所在が震災、風水害、火災その他の事由により不明である場合に、使用者を所有者とみなして課税台帳に登録し課税できるとし、5項は、政令で定める方法で相当な努力を払って探索してもなお所有者の存在が不明である場合について、同様に使用者を所有者とみなせるとしています。いずれも、あらかじめその旨を使用者に通知しなければなりません。
窓口で「売ったのに納税通知が来た」という苦情を受けている職員は、343条2項の台帳課税主義を体で知っています。試験は同じことを、条文の言葉で問います。
いつで切るか — 359条
地方税法359条は一文です。「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。」
1月1日現在で台帳に所有者として登記・登録されている者が、その年度分の全額を負担します。年の途中で売買しても、その年度の納税義務者は動きません。実務で交わされる固定資産税の日割精算は、当事者間の合意にすぎず、地方税法上の納税義務を分けるものではありません。この区別は、固定資産税課にとっては説明の定型であり、宅建にとっては最頻出の引っかけです。
税率は標準税率 — 350条
地方税法350条1項は「固定資産税の標準税率は、百分の一・四とする」と定めます。標準税率であって制限税率ではないので、これを超える税率を条例で定めることは可能です。
ただし2項に手続があります。当該市町村の固定資産税の一の納税義務者について、その所有する固定資産に対して課すべき課税標準の総額が、市町村区域内に所在する固定資産に対して課すべき課税標準の総額の3分の2を超える場合において、1.7%を超える税率で課する旨の条例を制定しようとするときは、市町村の議会において当該納税義務者の意見を聴くものとする、という規定です。大規模事業所が1つある町で、その事業所を狙い撃ちする増税ができないようにする趣旨です。
「1.7%」という数字が2項に出てくるため、これを制限税率だと覚えている受験者が出ます。制限税率ではありません。1.7%を超えても課せますが、上の要件を満たす場合には議会で意見聴取が要る、というだけです。
免税点 — 351条
地方税法351条は、同一の者について当該市町村の区域内におけるその者の所有に係る課税標準となるべき額が、土地は30万円、家屋は20万円、償却資産は150万円に満たない場合には固定資産税を課することができないと定めます。ただし書があり、財政上その他特別の必要がある場合には、条例の定めるところによって課することができます。
免税点の判定は、同一市町村内の同一種別ごとに合算して行います。この「合算する」という運用は課税の実務そのものですが、試験では3つの金額を入れ替える形で問われます。
住宅用地の特例 — 349条の3の2
地方税法349条の3の2は二段構えです。1項が住宅用地一般について、課税標準を価格の3分の1とします。2項が小規模住宅用地について、課税標準を価格の6分の1とします。
小規模住宅用地の範囲は2項各号にあります。1号が、住宅用地でその面積が200平方メートル以下であるもの。2号が、面積が200平方メートルを超えるもので、その面積を住居の数で除して得た面積が200平方メートル以下であればその住宅用地全体、除して得た面積が200平方メートルを超えるものであれば200平方メートルに住居の数を乗じて得た面積に相当する部分です。1戸あたり200平方メートルまでが6分の1で、それを超える部分が3分の1という理解になります。
1項の括弧書きも重要です。空家等対策の推進に関する特別措置法13条2項の規定により所有者等に対し勧告がされた管理不全空家等、および同法22条2項の規定により勧告がされた特定空家等の敷地の用に供されている土地は、住宅用地から除かれます。空き家対策の担当課が出す勧告が、税務側の課税標準を跳ね上げるという接続です。この接続を実務で見ている職員は、「勧告」がトリガーであることを落としません。逆に、勧告がないのに特例が外れると書いた肢は誤りです。
固定資産税の条文と数字の全体は「固定資産税を安くする方法」で網羅的に扱っています。新築住宅の減額措置の床面積要件が令和8年度から変わっている点もそちらで整理しているので、税務職の人ほど一度読み直しておく価値があります。
閲覧と縦覧は別の制度 — 382条の2と416条
窓口で最も混同されるのがこの2つです。条文が別で、対象者も期間も違います。
閲覧は382条の2です。市町村長は、納税義務者その他の政令で定める者の求めに応じ、固定資産課税台帳のうちこれらの者に係る固定資産に関する事項が記載されている部分またはその写しを、閲覧に供しなければなりません。政令で定める者は地方税法施行令52条の14が定めており、①固定資産税の納税義務者(当該納税義務に係る固定資産)、②土地について賃借権その他の使用または収益を目的とする権利(対価が支払われるものに限る)を有する者(当該権利の目的である土地)、③家屋について同様の権利を有する者(当該権利の目的である家屋およびその敷地である土地)、④固定資産の処分をする権利を有する者として総務省令で定める者、の4区分です。借地人・借家人にも閲覧権があるのはこの②③によります。ただし有償の権利に限られており、使用貸借は入りません。閲覧は通年です。
縦覧は416条です。市町村長は、固定資産税の納税者が、自分の土地・家屋の登録価格と市町村内の他の土地・家屋の価格とを比較できるよう、毎年4月1日から、4月20日または当該年度の最初の納期限の日のいずれか遅い日以後の日までの間、指定する場所において土地価格等縦覧帳簿・家屋価格等縦覧帳簿を納税者の縦覧に供しなければなりません。災害その他特別の事情がある場合には、4月2日以後の日から、当該日から20日を経過した日または最初の納期限の日のいずれか遅い日までを縦覧期間にできます。3項は、縦覧の場所および期間をあらかじめ公示しなければならないと定めています。
整理すると、閲覧は自分に関係する固定資産の中身を見る制度で、対象者に借地人・借家人が含まれ、期間の限定がありません。縦覧は他人の土地・家屋の価格と比べるための制度で、対象者は納税者に限られ、期間が4月1日からと限定されています。縦覧に借地人が来ても対象外という窓口の判断は、そのまま試験の正誤になります。
審査の申出 — 432条
地方税法432条1項は、固定資産税の納税者が、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合に、固定資産評価審査委員会に文書で審査の申出をすることができると定めます。市町村長でも、市長でもありません。
期間は、411条2項の規定による公示の日から納税通知書の交付を受けた日後3か月を経過する日まで、などとされています。そして3項が重要です。固定資産税の賦課についての審査請求においては、1項により審査を申し出ることができる事項についての不服を、賦課についての不服の理由とすることができない。つまり、価格そのものへの不服は審査の申出、それ以外の賦課の違法は審査請求、と入口が分けられており、両者は交錯しません。
この二本立ては、不服申立ての実務を担当していないと感覚がつかみにくい部分です。逆に担当していれば、相手方と対象を入れ替えた肢は瞬時に切れます。
税務職が落とす場所
固定資産税課の経験は、この分野で確実に得点を押し上げます。ただし落とし穴もあります。
第一に、自分の団体の条例で運用している数字を、法律の数字だと思い込むことです。税率を1.4%以外で運用している団体、免税点のただし書を使っている団体では、日常の数字が法律の原則と違います。試験は法律を問います。
第二に、評価の実務と課税標準の条文を混ぜることです。評価基準の運用は総務省告示の世界であり、宅建は地方税法の条文の世界です。
第三に、都市計画税との対比が曖昧になることです。都市計画税は市街化区域内が原則で、0.3%は制限税率、住宅用地の特例の割合は固定資産税と違います。この対比も「固定資産税を安くする方法」で扱っています。税・その他の得点計画は「税・その他の攻略」を参照してください。
用地課 — 土地収用法と国土利用計画法の接続
用地課の業務は、公共用地の取得です。任意交渉で買えなければ収用に進みます。この過程で扱う条文のうち、宅建の出題範囲と重なるものを取り出します。
事業認定の要件と告示 — 土地収用法20条・26条
土地収用法20条は、国土交通大臣または都道府県知事が事業の認定をすることができる要件を4つ列挙します。事業が3条各号の一に掲げるものに関するものであること、起業者が当該事業を遂行する充分な意思と能力を有する者であること、事業計画が土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであること、土地を収用しまたは使用する公益上の必要があるものであること。「左の各号のすべてに該当するとき」なので、4つとも満たす必要があります。
26条1項は、事業の認定をしたときは遅滞なくその旨を起業者に文書で通知するとともに、起業者の名称、事業の種類、起業地、認定をした理由、図面の縦覧場所を、国土交通大臣にあっては官報で、都道府県知事にあっては知事が定める方法で告示しなければならないと定めます。そして4項が「事業の認定は、第一項の規定による告示があつた日から、その効力を生ずる」と定めています。認定した日ではなく告示の日です。
裁決の申請と2つの裁決 — 39条・47条の2
39条1項は、起業者が、26条1項の告示があった日から1年以内に限り、収用または使用しようとする土地が所在する都道府県の収用委員会に、収用または使用の裁決を申請することができると定めます。1年という期間の起算点が告示の日であることは、26条4項と組み合わせて出題される形です。2項は、土地所有者または関係人(先取特権者、質権者、抵当権者、差押債権者、仮差押債権者を除く)が、起業者に対して裁決申請をすべきことを請求できると定めます。地権者側から手続を促せる仕組みです。
47条の2は裁決の構造です。2項が「収用又は使用の裁決は、権利取得裁決及び明渡裁決とする」、3項が「明渡裁決は、起業者、土地所有者又は関係人の申立てをまつてするものとする」、4項が「明渡裁決は、権利取得裁決とあわせて、又は権利取得裁決のあつた後に行なう」と定めます。権利取得裁決は職権で、明渡裁決は申立てを待ってという非対称と、明渡裁決が権利取得裁決に先行しないという順序が、この条文の要点です。
補償金の額 — 71条
土地収用法71条も一文で完結します。収用する土地またはその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とします。
価格の基準時が「事業認定の告示の時」であり、そこから権利取得裁決までは物価変動の修正率で調整する、という二段構えです。事業による地価上昇を補償額に取り込ませない趣旨で、用地交渉でそのまま説明する内容です。土地の価格に関する4つの公的指標との関係は「土地の価格4種」で整理しています。
都市計画事業地内の先買い — 都市計画法67条
収用に至る前の段階でも、事業地内の土地取引には制限がかかります。都市計画法65条1項は、事業の認可等の告示があった後は、事業地内において、都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設、政令で定める移動の容易でない物件の設置・堆積を行おうとする者に、都道府県知事等の許可を受けることを義務づけます。
67条1項はさらに踏み込みます。66条の公告の日の翌日から起算して10日を経過した後に事業地内の土地建物等を有償で譲り渡そうとする者は、当該土地建物等、その予定対価の額、譲り渡そうとする相手方などを、書面で施行者に届け出なければなりません。2項は、届出があった後30日以内に施行者が買い取るべき旨の通知をしたときは、届出書に記載された予定対価の額に相当する代金で売買が成立したものとみなすと定めます。3項は、届出をした者はその期間内は譲り渡してはならないと定めます。
施行者の側にいる職員は、この30日の期限を業務のカレンダーとして持っています。試験では、届出先(施行者であって知事ではない)、10日と30日という2つの期間、そして「みなす」という効果が論点になります。都市計画法の全体は「都市計画法の要点」で扱っています。
事後届出は契約締結後2週間以内 — 国土利用計画法23条
用地取得が任意契約で成立する場合、国土利用計画法の届出が問題になります。同法23条1項は、土地売買等の契約を締結した場合に、権利取得者が、その契約を締結した日から起算して2週間以内に、一定事項を、当該土地が所在する市町村の長を経由して都道府県知事に届け出なければならないと定めます。届け出るのは権利取得者であって、譲渡人ではありません。経由先は市町村長、届出先は都道府県知事です。
2項1号が面積要件です。市街化区域は2,000平方メートル、市街化区域以外の都市計画区域は5,000平方メートル、都市計画区域外は10,000平方メートル。これらの面積未満であれば届出不要です。ただし括弧書きで、一団の土地として基準面積以上を取得することとなる場合は除かれます。2項3号は、当事者の一方または双方が国等である場合を適用除外としています。自治体が買主になる用地買収では、この3号により届出が不要です。ここにも「国等は外れる」という構造が現れます。
24条1項は、届出があった場合に、利用目的が土地利用基本計画その他の計画に適合せず、周辺地域の適正かつ合理的な土地利用を図るために著しい支障があると認めるときに、都道府県知事が土地利用審査会の意見を聴いて利用目的の変更を勧告できると定めます。2項は、勧告は届出があった日から起算して3週間以内にしなければならないと定め、3項は実地の調査等の合理的理由があるときに3週間の範囲内で延長できるとしています。2週間と3週間という2つの数字は、届出側と勧告側で別々のものです。国土利用計画法の届出制度は「国土利用計画法の届出」で整理しています。
収用交換等の5,000万円特別控除 — 租税特別措置法33条の4
用地交渉の現場で必ず説明することになるのが、譲渡所得の課税です。租税特別措置法33条の4は、収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除を定めており、要件を満たす場合に長期譲渡所得の金額または短期譲渡所得の金額から5,000万円(該当部分の金額が5,000万円に満たない場合はその金額)を控除する形に読み替えると定めています。
宅建の税では、居住用財産の3,000万円特別控除のほうが中心的に出題されます。ただし、用地課の職員はこの5,000万円のほうを日常的に扱っているため、控除額を取り違える危険があります。どの特例がどの場面のものかを、額ではなく条文で紐づけて覚え直す必要があります。
建築指導課・都市計画課 — 法令上の制限8問の主戦場
建築指導課と都市計画課の実務は、法令上の制限8問の中身とほぼ一致します。ここは「建設業と宅建」でも扱った領域と重なりますが、行政庁の側から見た場合の注意点を書きます。
6条の号構成を「審査する側」で覚えていないか
建築基準法6条1項の3号構成は前述のとおりです。1号が200平方メートル超の特殊建築物、2号が2以上の階数を有しまたは延べ面積200平方メートル超、3号が都市計画区域等の区域内。2号の「2以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える」は「又は」なので、どちらか一方を満たせば該当します。平屋で延べ面積150平方メートルなら2号に該当せず、3号の区域内かどうかで決まります。
6条2項は、防火地域および準防火地域外において建築物を増築・改築・移転しようとする場合で、その部分の床面積の合計が10平方メートル以内であるときに1項を適用しないと定めます。この「防火地域・準防火地域外」「10平方メートル以内」という二重の限定は、審査側が日常的に使っている判断ですが、条文の言葉としては逆に書かれた肢を作りやすい場所です。
集団規定は「敷地単位」で動く
接道義務(43条1項)、建蔽率、容積率、高さ制限といった集団規定は、いずれも敷地を単位として適用されます。指導の現場では建物と敷地を一体で見ているため、この当たり前が意識されません。試験は、一の敷地に二以上の建築物がある場合、敷地が用途地域をまたぐ場合、敷地が防火地域と準防火地域にまたがる場合といった、境界をまたぐ設定で問います。接道義務は「接道義務」、建蔽率・容積率は「建蔽率と容積率の基礎」で扱っています。
都市計画施設等の区域内の建築許可 — 都市計画法53条
都市計画課の側では53条が日常です。都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません。ただし書に例外があり、1号が政令で定める軽易な行為、2号が非常災害のため必要な応急措置として行う行為、3号が都市計画事業の施行として行う行為またはこれに準ずる行為として政令で定める行為です。
そして3項が接続を示します。「第一項の規定は、第六十五条第一項に規定する告示があつた後は、当該告示に係る土地の区域内においては、適用しない。」事業の段階に入れば53条から65条に切り替わるという関係です。計画段階の制限(53条)、事業段階の制限(65条)、そして事業地内の取引制限(66条・67条)という三段構えは、都市計画の担当者にとっては業務の時系列そのものですが、受験者にとっては条文がばらばらに見える場所です。時系列で並べられるのは、行政の側にいる人の強みです。
開発許可は「規模と区域」で決まる
29条1項1号の政令で定める規模は、都市計画法施行令19条にあります。市街化区域は1,000平方メートル、区域区分が定められていない都市計画区域と準都市計画区域は3,000平方メートル、都市計画区域および準都市計画区域外は22条の2により1ヘクタールです。条例で300平方メートルまで引き下げることができ、三大都市圏の一定区域は500平方メートルとされています。1項2号以下の許可不要類型、なかでも3号の公益上必要な建築物の範囲は、審査側が政令の別表で確認している部分です。面積要件は「開発許可の面積要件」で扱っています。
条文を読む技術は、そのまま宅建に効く
ここまでは科目ごとの話でしたが、公務員に固有の優位性はもうひとつあります。法令の書き方に慣れていることです。これは根拠を示せる優位性なので、具体的に書きます。
「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」
法令用語では接続詞に階層があります。同列の並列は「及び」、そこに上位の並列がかぶさるときに「並びに」を使います。選択も同じで、単一段階なら「又は」、二段階以上になるとき小さいほうに「若しくは」を使い、大きいほうに「又は」を使います。
宅建業法2条2号がその実例です。「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」。大きな「又は」で二つに割れており、前半が自ら当事者となる売買・交換、後半が代理・媒介です。この読み方ができると、「自ら貸借」が定義に入らないことが構文から出てきます。貸借が出てくるのは後半の代理・媒介の側だけだからです。この結論は暗記事項として流通していますが、条文の構造から導けるほうが確実です。
「その他」と「その他の」
「その他」は前後が並列、「その他の」は前が後ろの例示です。地方税法343条1項括弧書きの「震災、風水害、火災その他の事由」は、震災・風水害・火災が「事由」の例示であり、限定列挙ではありません。土地収用法20条3号の「土地の適正且つ合理的な利用に寄与する」のような要件と並べて読むと、条文がどこまで広がるかの見当がつきます。
ただし書と各号列記の位置
条文は「本文+ただし書」「柱書+各号」という構造を取ります。原則がどこに書かれ、例外がどこに置かれているかで、立証責任や適用の順序が変わります。都市計画法29条1項は柱書で許可を義務づけ、ただし書で「次に掲げる開発行為については、この限りでない」として11号まで例外を並べます。農地法4条1項も同じ形です。原則を柱書で、例外を号で、というパターンを知っていれば、初めて見る条文でも構造から入れます。
政令委任の構造
「政令で定める」「国土交通省令で定める」という文言が出てきたら、そこで法律の記述は止まり、続きは下位法令にあります。開発許可の面積が施行令19条にあるのも、固定資産課税台帳の閲覧権者が施行令52条の14にあるのも、この構造です。数字は下位法令に落ちていることが多いという感覚は、条文を引いている人ほど自然に持っています。宅建の学習で「法律には書いていない数字」に出会ったとき、それがどこにあるかを探せるかどうかが分かれ目になります。
準用と読替え
地方税法432条2項は、行政不服審査法の一連の規定を審査の申出の手続について準用し、読替えを指示しています。準用と読替えは条文を追う作業のなかで最も骨が折れる部分ですが、行政実務では避けて通れません。宅建でこの読み方が直接問われることは多くありませんが、条文集を読み通す速度に効きます。
以上が、公務員に認められる優位性の実質です。「法律に詳しい」という漠然としたものではなく、条文という文章形式に慣れているという、具体的で移転可能な技能です。法令科目の横断整理は「法令上の制限の横断整理」で扱っています。
重ならない範囲 — 宅建業法20問という壁
ここからが、この記事で最も実用的な部分です。
78条1項が示す距離
すでに述べたとおり、宅建業法78条1項は国および地方公共団体への適用を全面的に排除しています。したがって、公務員が業務で宅建業法の規律を受けた経験を持つことは、構造上ありえません。
具体的に何が未知かを並べます。3条の免許(国土交通大臣免許と都道府県知事免許の区分、5年の有効期間)、5条の免許の基準、25条以下の営業保証金と64条の9以下の弁済業務保証金分担金、31条の3の専任の宅地建物取引士の設置と2週間以内の是正、34条の2の媒介契約(一般・専任・専属専任の区分、報告義務、有効期間3か月)、35条の重要事項説明、37条の書面交付、37条の2以下のクーリング・オフを含む8種制限、46条の報酬額の制限、65条以下の監督処分、そして罰則。これらはすべて、宅地建物取引業者という私人を名宛人とする規制です。
20問という配点は50問中の40%にあたり、合格点33点に対して決定的です。「宅建士の独占業務」で扱っている35条・37条・31条の3の構造は、この科目の骨格でもあります。
権利関係の判例知識も持ち込めない
権利関係14問についても、楽観は禁物です。契約事務や訴訟対応で民法に触れる機会があるとしても、宅建の権利関係で問われるのは、意思表示の瑕疵、代理、時効、物権変動の対抗要件、抵当権、債権譲渡、賃貸借、相続といった論点であり、しかもその多くが判例の結論を前提にしています。
自治体の契約事務で扱うのは、契約書の条項と会計法規・地方自治法上の手続が中心です。民法の条文に触れていることと、民法の判例知識があることは別物です。権利関係の学習方法は「権利関係の全体像」で扱っています。
学習配分への含意
以上を配点で整理すると、次のようになります。
法令上の制限8問と税・その他8問の一部は、担当部署によっては既知の条文が並びます。ここは有利です。ただし合計しても16問です。しかも税・その他8問はまるごと税ではありません。この8問のうち5問は宅建業法16条3項・施行規則10条の14による免除の対象範囲(施行規則8条1号の土地の形質等と5号の需給・実務)にあたり、税が占めるのはごく一部です。固定資産税課の経験が直接効く問題は、そのうちさらに一部にとどまります。実務で有利になる問題数は、多く見積もっても10問に届くかどうかと見ておくのが安全です。
宅建業法20問は、ゼロからの積み上げです。権利関係14問も、判例部分はゼロからです。つまり、公務員にとっての学習量の重心は宅建業法にあり、そこは実務経験がまったく効かない場所です。
この配分を踏まえると、学習の順序は「得意な法令上の制限から入って勢いをつける」よりも、「宅建業法を最初に置き、法令上の制限は後半で確認的に回す」ほうが合理的です。得意分野から始めると、既知感で進捗が出ている錯覚が生まれ、20問側の着手が遅れます。宅建業法の頻出論点は「宅建業法の頻出論点」で整理しています。
兼業規制と退職後の規制を条文で確認する
公務員が宅建を考えるとき、必ず確認しておくべき条文があります。曖昧なまま進めてよい部分ではないので、条文で押さえます。
資格を持つことと、業を営むことは別
まず前提として、宅建試験に合格すること、宅地建物取引士として登録すること、宅地建物取引士証の交付を受けること、これら自体は兼業規制の対象になりません。規制がかかるのは、報酬を得て事業や事務に従事すること、または自ら営利企業を営むことです。登録の手続は「宅建士の登録」で扱っています。
地方公務員法38条1項
地方公務員法38条1項は次のように定めます。職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業または金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし書があり、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員および22条の2第1項2号に掲げる職員を除く)については適用されません。2項は、人事委員会が規則により1項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができるとしています。
構造を読み取ると、禁止は絶対ではなく、任命権者の許可にかかっていることが分かります。「若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」の部分は、いずれも柱書の「任命権者の許可を受けなければ」にかかります。したがって、宅建業を営むことも、宅建士として報酬を得て働くことも、許可の有無が判断の分かれ目です。許可の基準は人事委員会規則および各団体の定めによるので、一般論では答えが出ません。
国家公務員法103条
国家公務員法103条1項は、職員は営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問もしくは評議員の職を兼ね、または自ら営利企業を営んではならないと定めます。2項が、この規定は人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には適用しないとしています。
なお、国家公務員については、報酬を得て事業・事務に従事することの規制は103条ではなく104条にあり、内閣総理大臣および所轄庁の長の許可を要するとされています。地方公務員法38条が1つの条文にまとめている内容が、国家公務員法では103条と104条に分かれているという違いです。
いずれにせよ、資格を取ることと、その資格で報酬を得ることの間に、許可・承認という関門があるという点は共通です。宅建業を営むこと自体の法的な線引きは「宅建士の副業」で扱っています。この記事が扱う宅建業法2条2号の「業として行う」の判断は、公務員かどうかにかかわらず適用されます。
退職後は「就職制限」ではなく「働きかけ規制」
ここは誤った説明が広く流通している部分です。「退職後2年間は関連企業に就職できない」という説明は、現行法の内容ではありません。
国家公務員法の営利企業への再就職制限(旧103条2項)は、平成19年の改正で廃止され、再就職等規制に置き換えられました。現行法の枠組みは次のとおりです。
106条の2は、在職中の職員が、他の役職員の再就職をあっせんすることを規制します。106条の3は、在職中の職員が、利害関係企業等に対し、離職後にその地位に就くことを目的として自己に関する情報を提供し、地位に関する情報の提供を依頼し、または地位に就くことを要求・約束することを規制します。在職中の求職活動の規制です。
そして106条の4第1項が、退職後の規制です。再就職者は、離職前5年間に在職していた局等組織に属する役職員等に対し、契約等事務であって離職前5年間の職務に属するものに関し、離職後2年間、職務上の行為をするように、またはしないように要求し、または依頼してはならない。2項3項は、部長・課長級、局長級であった者について、期間や範囲をさらに広げた規制を置いています。
つまり2年間というのは、就職の禁止期間ではなく、古巣への働きかけの禁止期間です。地方公務員法38条の2も同じ構造で、離職前5年間に在職していた地方公共団体の執行機関の組織等の職員等に対する、契約等事務に関する働きかけを規制しています。
この違いは実務上大きな意味を持ちます。退職後に不動産業に就くこと自体を法が禁じているわけではありません。禁じられているのは、古巣に対して自分が扱っていた契約や処分に関して働きかけることです。再就職を検討するなら、就職の可否ではなく、就職後に何ができないかを条文で確認すべきということになります。定年後の働き方の選択肢は「定年後の宅建」で扱っています。
5問免除は原則として使えない
宅建業法16条3項は、登録講習機関が行う登録講習の課程を修了した者について、国土交通省令で定めるところにより試験の一部を免除すると定めます。具体的な範囲と期間は宅地建物取引業法施行規則10条の14にあります。
問題は受講資格です。登録講習を受講できるのは宅地建物取引業に従事している者に限られ、宅地建物取引業者が発行する従業者証明書が必要になります。従業者証明書は、宅建業法48条1項が宅地建物取引業者に従業者への携帯を義務づけているものです。国および地方公共団体には78条1項により宅建業法が適用されず、宅建業者にもなりません。したがって公務員は従業者証明書を持ちようがなく、登録講習の対象になりません。
公務員は50問すべてを解く前提で計画を立ててください。5問免除の制度そのものは「宅建の5問免除」で詳しく扱っています。なお、免除を使わない受験者のほうが合格者としても多数派であり、不利な条件ではありません。
試験での出題ポイント
公務員の実務経験が、そのまま誤答につながる場面を集めます。実務で正しいことが試験で誤りになるのではなく、実務で見ている条文と試験が問う条文が違うために起きるずれです。
賦課期日を取得日にすり替える肢
「年の途中で土地を取得した者は、取得した日以後の期間に応じて按分された固定資産税を納付する」という形の肢です。地方税法359条により賦課期日は1月1日であり、按分は当事者間の精算にすぎません。窓口で日割精算の話を毎日していると、かえって迷う場所です。
1.7%を制限税率として出す肢
「固定資産税の税率は1.7%を超えてはならない」という形です。350条1項の標準税率は1.4%、2項の1.7%は議会での意見聴取の手続が必要になる分岐点であって、税率の上限ではありません。
課税標準の特例と税額の減額を入れ替える肢
住宅用地の特例(349条の3の2)は課税標準を6分の1・3分の1にする制度、新築住宅の減額措置は税額を2分の1にする制度です。効く場所が違います。実務では両方が同じ計算シートに載っているため、区別が薄れます。
200平方メートルの数え方をずらす肢
小規模住宅用地の判定は、349条の3の2第2項2号により、面積を住居の数で除して行います。「200平方メートルを超える住宅用地には特例が適用されない」という肢は誤りで、200平方メートルまでの部分が6分の1、超える部分が3分の1です。
閲覧と縦覧を入れ替える肢
「借地人は土地価格等縦覧帳簿を縦覧することができる」は誤りです。縦覧(416条)の対象者は納税者に限られます。借地人に認められているのは閲覧(382条の2、施行令52条の14第2号)のほうです。逆に「閲覧は毎年4月1日から」とする肢も誤りで、期間の限定があるのは縦覧です。
審査の申出の相手方をずらす肢
「登録価格に不服がある納税者は市町村長に審査請求をする」という形です。432条1項により、価格についての不服は固定資産評価審査委員会への審査の申出です。3項が、賦課についての審査請求で価格の不服を理由にできないと定めている点まで押さえます。
収用の期間と基準時をずらす肢
「事業の認定の効力は認定をした日から生じる」は誤りで、26条4項により告示の日からです。「裁決の申請は事業認定の日から1年以内」も誤りで、39条1項により告示があった日から1年以内です。補償金の額の基準時を「権利取得裁決の時」とする肢も誤りで、71条は「事業の認定の告示の時における相当な価格」に修正率を乗じるとしています。
国土法の2週間と3週間を入れ替える肢
事後届出は契約締結日から起算して2週間以内(23条1項)、勧告は届出があった日から起算して3週間以内(24条2項)です。届出義務者を譲渡人とする肢、届出先を市町村長とする肢も定番です。経由が市町村長、届出先が都道府県知事という二段構えを、そのまま覚えます。
「国等の特例」を私人にも適用してしまう肢
これは公務員に固有の失点パターンです。建築基準法18条の計画通知、都市計画法34条の2の協議、農地法4条1項2号の適用除外、国土利用計画法23条2項3号の適用除外。これらはいずれも国・地方公共団体等が主体である場合の話であり、私人が主体の設問に持ち込めません。「開発行為は知事との協議で足りる」「農地転用に許可は要らない」といった判断が反射的に出てしまうなら、それは実務の記憶です。
宅建業法を自治体の取引に適用してしまう肢
78条1項の適用除外は、逆向きにも問われます。「地方公共団体が宅地の売買を業として行う場合、免許を受けなければならない」は誤りです。ただし、宅建業者が国や地方公共団体を相手方として取引する場合、その宅建業者には宅建業法が適用されます。78条1項が外すのは国・地方公共団体自身に対する適用であって、相手方が国等であることを理由に業者側の義務が消えるわけではありません。ここは実務感覚が逆に働きやすい場所です。
覚え方・整理の仕方
業務のフローに条文を貼りつける
最も効率がよいのは、自分が担当している業務の流れに条番号を貼っていく方法です。
固定資産税課であれば、1月1日で所有者を確定(343条・359条)、価格を台帳に登録、住宅用地なら課税標準を圧縮(349条の3の2)、免税点未満なら課税しない(351条)、税率を乗じる(350条)、4月に縦覧(416条)、通年で閲覧(382条の2)、価格に不服なら評価審査委員会(432条)。この順序は業務のカレンダーそのものなので、条番号を足すだけで整理が完成します。
用地課であれば、事業認定の申請、認定の要件(20条)、告示で効力発生(26条4項)、告示から1年以内に裁決申請(39条1項)、権利取得裁決と明渡裁決(47条の2)、補償金は告示時の価格に修正率(71条)。都市計画事業なら、告示後の建築等制限(65条)、事業地内の有償譲渡の届出と30日の先買い(67条)。任意契約なら国土法の事後届出2週間(23条)、勧告3週間(24条)。
「国等の特例」を1枚に集める
実務の記憶が誤答に変わるのを防ぐには、国等の特例を先にリスト化してしまうのが確実です。建築基準法18条(6条等を適用しない、計画通知)、都市計画法34条の2(協議の成立で許可があったものとみなす)、農地法4条1項2号(許可不要)、国土利用計画法23条2項3号(届出不要)、宅建業法78条1項(法全体を適用しない)。
この5つを「自分が知っているほうの条文」として隔離しておく。そのうえで、試験で問われるのは原則の側だと決めておくと、実務の記憶が混入しません。
数字は「誰の期間か」で仕分ける
期間の数字は、誰に課された期間かで仕分けると混ざりません。国土法の2週間は届出をする側(権利取得者)の期間、3週間は勧告をする側(知事)の期間。都市計画法67条の30日は買い取る側(施行者)の期間で、その間は譲渡できないという形で届出者を縛ります。土地収用法39条の1年は裁決を申請する側(起業者)の期間。地方税法432条の3か月は不服を申し立てる側(納税者)の期間。「誰が動かなければならない期間か」を先に決めると、数字が独立して覚えられます。
割合は分子と分母の意味で覚える
固定資産税の割合は3つあります。標準税率1.4%、住宅用地の特例3分の1と6分の1。税率は税額を出すために価格に乗じるもの、特例の割合は価格そのものを圧縮するものという役割の違いを先に置くと、「税率が6分の1になる」といった肢が形として誤りに見えます。
有利な範囲を先に線引きする
学習計画を立てる前に、自分の担当業務と重なる条文を書き出してください。固定資産税課なら地方税法の固定資産税の節、用地課なら土地収用法と都市計画法の事業制限と国土法、建築指導課なら建築基準法、都市計画課なら都市計画法。書き出してみると、多くの人にとってそれは10問に届かないことが分かります。
そこで安心せず、残る40問側に時間を配分する。この線引きを最初にやることが、この記事で最も実用的な作業です。
理解度チェッククイズ
Q1. 地方公共団体が、業として宅地の売買を反復継続して行う場合、宅地建物取引業の免許を受けなければならない。
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×:宅地建物取引業法78条1項は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」と定めています。免許も、営業保証金も、重要事項説明も、地方公共団体自身には及びません。ただし注意すべき点があり、**宅建業者が国または地方公共団体を相手方として取引する場合、その宅建業者には宅建業法が適用されます。**78条1項が排除するのは国・地方公共団体自身への適用であって、取引の相手方が国等であることを理由に業者側の義務が消えるわけではありません。Q2. 年の途中で土地を売却した場合、売主はその年度の固定資産税のうち、所有していた期間に対応する額のみを納付すれば足りる。
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×:地方税法359条は「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする」と定めています。343条2項により、1月1日現在で登記簿または補充課税台帳に所有者として登記・登録されている者が納税義務者となり、年度分の全額について納税義務を負います。売買の際に行われる日割精算は当事者間の合意にすぎず、市町村に対する納税義務を分割するものではありません。市町村は買主に対して残額を請求することはできません。Q3. 借地人は、その借地について、固定資産課税台帳の閲覧と土地価格等縦覧帳簿の縦覧のいずれも行うことができる。
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×:閲覧はできますが、縦覧はできません。閲覧について定める地方税法382条の2第1項の「政令で定める者」は地方税法施行令52条の14が定めており、その2号が「土地について賃借権その他の使用又は収益を目的とする権利(対価が支払われるものに限る。)を有する者」を挙げています。したがって有償の借地人には閲覧権があります。一方、縦覧について定める416条1項は「固定資産税の納税者」を対象としており、借地人は含まれません。縦覧は自分の土地・家屋の価格を他と比較するための制度で、毎年4月1日から4月20日または当該年度の最初の納期限の日のいずれか遅い日以後の日までの間に限られます。Q4. 起業者は、土地収用法26条1項の事業の認定の告示があった日から1年以内に限り、収用委員会に裁決を申請することができ、収用する土地に対する補償金の額は権利取得裁決の時における相当な価格による。
答えを見る
×:前半は正しく、後半が誤りです。土地収用法39条1項は、26条1項の告示があった日から1年以内に限り、土地が所在する都道府県の収用委員会に裁決を申請できると定めています(26条4項により、事業の認定は告示があった日から効力を生じます)。しかし補償金の額について、71条は「近傍類地の取引価格等を考慮して算定した**事業の認定の告示の時**における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額」と定めています。基準時は事業認定の告示時であり、権利取得裁決時ではありません。事業の実施による地価上昇を補償額に取り込ませない趣旨です。Q5. 国が行う都市計画区域内の開発行為については、国と都道府県知事との協議が成立することをもって開発許可があったものとみなされる。
答えを見る
○:都市計画法34条の2第1項が、国または都道府県、指定都市等、事務処理市町村等が行う都市計画区域もしくは準都市計画区域内における開発行為(29条1項各号に掲げるものを除く)について、当該国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって開発許可があったものとみなすと定めています。**ただしこれは主体が国等である場合の特例です。**私人が行う開発行為には29条1項の許可が必要であり、協議で代えることはできません。同様の「国等の特例」は建築基準法18条(計画通知)、農地法4条1項2号(許可不要)、国土利用計画法23条2項3号(届出不要)にもあり、実務で特例の側を扱っている人ほど、原則の側の設問で混同しやすい部分です。まとめ
公務員の業務は、部署によっては試験範囲そのものである。固定資産税課の実務は地方税法343条・350条・351条・359条・349条の3の2・382条の2・416条・432条の運用であり、用地課は土地収用法・国土利用計画法・都市計画法の事業制限、建築指導課は建築基準法、都市計画課は都市計画法の体系と重なる。ここは条文で説明できる優位性である。
ただし公務員は、条文の「行政庁の側」「適用除外の側」に立っている。建築基準法18条、都市計画法34条の2、農地法4条1項2号、国土利用計画法23条2項3号、宅建業法78条1項。実務で見ているのはこれらの特例であり、試験が問うのは原則の側である。既知感が正確さに直結しない。
法令の文章形式に慣れていることが、最も移転可能な強みである。「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」、「その他」と「その他の」、ただし書の位置、政令委任の構造。宅建業法2条2号の定義から「自ら貸借」が外れることも、構文から導ける。
配点の重心と、予備知識の重心が逆を向いている。実務で有利になる問題数は多く見積もっても10問に届かない。一方、宅建業法20問は78条1項により制度の外側にあり、ゼロからの積み上げになる。権利関係14問の判例知識も同じである。宅建業法を学習計画の先頭に置くことが、この記事の結論である。
資格手当も学習時間の短縮率も、数字では答えられない。地方公務員の給与は地方公務員法24条5項により条例で定まり、地方自治法204条の2は法律またはこれに基づく条例に基づかない給付を禁じている。相場を調べるのではなく、自分の団体の例規集を引くこと。兼業についても、地方公務員法38条1項・国家公務員法103条を読み、退職後の規制が「就職制限」ではなく国家公務員法106条の4・地方公務員法38条の2の「働きかけ規制」であることを確認すること。
同じ切り口で他業種を扱った記事として「銀行員が宅建を取る意味」「建設業と宅建」があります。行政書士との関係は「行政書士と宅建」、資格の組み合わせ方は「資格取得の順番」で扱っています。
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