選択債権せんたくさいけん
債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まる債権です(民法406条)。つまり「甲の絵か乙の絵のどちらかを引き渡す」という約束で、どちらにするかを決める権利(選択権)は、特に決めていなければ債務者が持ちます。
画廊と客が「この2枚の絵のうち、どちらか1枚を100万円で売る」と約束したとします。契約の時点では引き渡す絵はまだ決まっておらず、誰かが選んで初めて給付の目的が一つに定まります。このように、数個の給付の中から選択によって目的が定まる債権を選択債権といい、どれにするかを決める権利を選択権といいます。選択権は、特約がなければ債務者、つまり絵を引き渡す側の売主に属します(406条)。選択は相手方に対する意思表示で行い、いったん選ぶと、相手方の承諾がなければ撤回できません(407条)。

選択権は、特約がなければ債務者が持ちます
406条は、債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、選択権は債務者に属すると定めています。売主が2枚の絵のどちらかを引き渡す契約なら、債務者は売主なので、選ぶのも売主で、代金を払う買主ではありません。条文に理由は書いていませんが、手元の物のうちどれを手放すかは、引き渡す側が決めるのが自然だからと考えられます。当事者は特約で、債権者や第三者を選択権者にすることもでき、その場合は特約が優先します。
第三者が選べないときは、選択権は債務者に移ります
当事者が専門家などの第三者を選択権者と定めた場合、その第三者は、債権者又は債務者のどちらか一方に対する意思表示によって選択します(409条1項)。両方に伝える必要はありません。第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は債務者に移転します(409条2項)。移る先は債権者ではなく、原則どおりの選択権者である債務者です。

選択権者の過失で一つが不能になると、残りに定まります
債権の目的である給付の中に不能のものがあり、その不能が選択権を有する者の過失によるときは、債権はその残存するものについて存在します(410条)。選択権を持つ売主が自分の失火で甲の絵を焼いてしまったら、引き渡すのは乙の絵に定まります。条文に理由は書いていませんが、自分の過失で選択肢を減らした者に、なくなった方を選ぶ余地を残す必要がないためと考えられます。選択権を有しない者の過失や、誰の過失でもない事情で一つが不能になったときは、債権は当然には残りに定まらず、選択権者はなお選択できます。

民法 406条・409条債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。(409条)第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。2 前項に規定する場合において、第三者が選択をすることができず、又は選択をする意思を有しないときは、選択権は、債務者に移転する。
試験ではこう問われる
- 選択権に関する特段の合意がなければ、選択権は債務者(引き渡す側の売主)にある(406条)。買主が選択権者になるのではない
- 第三者が選択権者のときは、債権者又は債務者のどちらか一方への意思表示で選択できる。両者に意思表示をする必要はない(409条1項)
- 第三者が選択できないとき・選択する意思がないときは、選択権は債務者に移る。債権者に移るのではない(409条2項)
- 選択権者である売主の失火で甲が全焼したときは、給付の目的物は乙に定まる(410条)
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