債務引受さいむひきうけ
債務者が債権者に負っている債務と同一の内容の債務を、引受人となる者が契約によって負担することです(民法470条・472条)。元の債務者も債務を負い続ける併存的債務引受と、元の債務者が自己の債務を免れる免責的債務引受の二つがあります。
父親が借りている事業資金を、跡を継ぐ息子が引き受ける。会社が取引先に払う代金を、親会社が肩代わりする。こうした場面で、債務者の債務と同一の内容の債務を、第三者が契約によって負うのが債務引受です。債権譲渡が債権者の側の交代なのに対し、債務引受は債務者の側に人が加わったり入れ替わったりします。令和2年4月施行の民法改正で、それまで判例や解釈で認められていた債務引受が、470条から472条の4に条文として定められました。

併存的債務引受は、引受人が債務者と連帯して負います
併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に負う債務と同一の内容の債務を負担します(470条1項)。元の債務者は抜けないので、債権者にとっては請求できる相手が増えるだけで、不利益はありません。そのため、債権者と引受人となる者との契約だけですることができ、債務者の承諾は要りません(470条2項)。債務者と引受人となる者との契約でもすることができ、この場合は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生じます(470条3項)。この形は第三者のためにする契約の規定に従うとされ(470条4項)、引受人に請求できる権利を受けるかどうかを債権者が承諾で示します。

免責的債務引受は、債権者の関与がなければ成立しません
免責的債務引受では、引受人が同一の内容の債務を負担し、元の債務者は自己の債務を免れます(472条1項)。債権者と引受人となる者との契約ですることができ、この場合は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生じます(472条2項)。債務者と引受人となる者が契約をしたときは、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることで成立します(472条3項)。条文に理由は書いていませんが、払う人が入れ替わると、資力のない引受人に替えられた債権者が回収できなくなるおそれがあるため、どちらの形でも債権者が契約するか承諾するかを求めていると考えられます。

民法 472条免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
試験ではこう問われる
- 債務者と引受人の契約による免責的債務引受は、債権者が引受人に承諾をすることで成立する。「債権者の承諾は不要」は誤り(472条3項)
- 債務者と引受人の契約による併存的債務引受は、債権者が引受人に承諾をした時に効力を生ずる(470条3項)
- 債権者と引受人の契約による併存的債務引受は、その契約だけで効力を生じ、債務者の承諾は要らない(470条2項)
- 債権者と引受人の契約による免責的債務引受は、債権者が債務者にその契約をした旨を通知した時に効力を生ずる(472条2項)。現行民法は債務引受を条文で定めている
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