取引事例比較法とりひきじれいひかくほう
多数の取引事例を収集して適切な事例を選択し、取引価格に必要に応じて事情補正と時点修正を行い、地域要因と個別的要因の比較を行って求めた価格を比較考量して、対象不動産の試算価格を求める鑑定評価の手法で、求めた試算価格を比準価格といいます。つまり、似た不動産が実際にいくらで売れたかと比べる方法です。
自宅の土地がいくらで売れるかを知りたいとき、多くの人はまず「近所の似た土地がいくらで売れたか」を調べます。3か月前に隣の町内で同じくらいの広さの土地が3,000万円で売れていれば、うちもそのくらいだろうと見当が付きます。この考え方を手順として整えたのが取引事例比較法です。多数の取引事例を集め、事例ごとの事情や時期の違い、場所や土地そのものの違いを直したうえで比べます。こうして求めた試算価格を比準価格といいます。

特殊な事情のある事例も、補正できれば使えます
取引事例は、取引の事情が正常なものと認められるもの、又は正常なものに補正することができるものから選択します。相続税の支払のために売り急いだ、どうしても欲しくて買い進んだといった特殊な事情があっても、補正ができれば使えます。特殊な事情が価格に影響しているときに、その影響を取り除く補正を事情補正といいます。投機的取引であると認められる事例のように適正さを欠くものは、選択できません。
事情補正と時点修正は、直すものが違います
事情補正は、取引が特殊な事情を含み、それが価格に影響を及ぼしているときに行う補正です。時点修正は、取引の時点が価格時点と異なり、その間に価格水準に変動があると認められる場合に、事例の価格を価格時点の価格に修正することです。2年前の取引なら、その後の値上がりや値下がりの分を直します。事情補正が直すのは当事者の事情で、時点修正が直すのは時の経過による相場の動きです。

事例は、近隣地域や同一需給圏内の類似地域から選びます
基準は、取引事例比較法は、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等において対象不動産と類似の不動産の取引が行われている場合、又は同一需給圏内の代替競争不動産の取引が行われている場合に有効であるとしています。同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域です。買う人が「こちらにしようか、あちらにしようか」と比べる範囲と言い換えられます。その範囲は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によって異なります。
不動産鑑定評価基準 総論第7章第1節Ⅲ1取引事例比較法は、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である(この手法による試算価格を比準価格という。)。
試験ではこう問われる
- 取引事例は、取引事情が正常なもの、又は正常なものに補正することができるものから選択する。「売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する事例を用いてはならない」「事情補正できるものであっても採用できない」は誤り
- 取引が特殊な事情を含み、価格に影響を及ぼしている場合に適切に補正することは事情補正。これを「時点修正という」は誤り
- 時点修正は、取引の時点が価格時点と異なり、その間に価格水準に変動があると認められる場合に、価格時点の価格に修正すること
- 取引事例比較法は、近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等において類似の不動産の取引が行われている場合、又は同一需給圏内の代替競争不動産の取引が行われている場合に有効
- 同一需給圏は、対象不動産と代替関係が成立して、価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域。需要者の選好性によって、地域的範囲は狭められる場合も広域的に形成される場合もある
- 価格形成要因は一般的要因、地域要因、個別的要因に分けられる。一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因は一般的要因で、自然的・社会的・経済的・行政的要因に大別される。これを「個別的要因」とするのは誤り
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